グローバル規模の世界一大きな金融市場で有る為替市場で24時間トレードできるのは為替の醍醐味のひとつだが、それぞれの市場のクセ(なんせグローバルだから)を知っていると取引に断然役立つ。特にデイトレードなど短期トレードを行う場合は1日の流れを知っておくことは必要不可欠だ。今回は、いわゆる三大市場と言われている、東京、ロンドン、ニューヨーク市場の特徴を説明しよう。

東京市場はドル円取引中心、そして静か

まず、東京市場。全体の取引の6%を占めている。実は2007年4月のBIS調査では取引高はチューリッヒ(シェアは6.1%)に僅差で抜かれてしまい実質4位なのだが、我らがお膝元だし、6%も6.1%もそれほど変わらないので、準3位くらいといった位置付け。日本の個人投資家は東京市場でガンガントレードしてないの~、と思うでしょ。

実は、していない。それは、ニューヨーク時間でトレードするから。東京市場の特徴を一言でいえば静か、そしてドル円の取引が中心。大きく動くことは余りないので皆やらないのだ。それでも結構動きがでるのが、東京ならではの仲値前後の動き。仲値というのは銀行が個人などの顧客や10万ドル未満の外国為替取引をする際に基準レートとして用いるレートで、その日1日の顧客向け為替レートの元となるレートである。顧客向けレートというのは、TTS:仲値+1円(外貨を買う場合)、TTB:仲値-1円(外貨を売る場合)として私たちのような個人に使用されるレートのこと。

輸出企業は円高のヘッジをするために事前の為替予約を取りに行き、輸入企業は予約取引の割合が少なくて、その日その日の仲値に向けてドルを買って行くので、仲値に向けてドル高になりがちと以前聞いたこともあるけれど、実際は一概に言えないようで日によってマチマチ。つまり、ドル買いが多い日はドル高に。ドル売りが多ければ、ドル安になる、当然だ。

ドル需要が多いか少ないか、これはその日の状況によって違うので、仮に為替ディーラーの方には把握できても、私たち個人には予想できにくいけれど、ただし5・10日(ごとび)はドル買いの傾向が結構高い。道路が混んだりすることで、よく認識される5・10日。慣行的に日本の手形決済は5の倍数の日に決済が集中すると言われているし、輸出入の決済も5・10日に集中し、ドルが不足することが多いので、ドル買いの需要が出やすいのが特徴。これは現場の為替ディーラーさんに確認してもそういう傾向が強いとか。

下記のチャートを見ていただくと、ごとびである1月15日は仲値に掛けてドル買い傾向が強いことがはっきりと分かる。そして仲値イベントが終わってしまえば、元のトレンドのレベルに戻っている。自分で注意して見ていて、傾向を把握できたら、例えば、20銭抜きを狙ってみるのも方法かもしれない。わずか20銭、などと言わずに。取れる確率が高いなら、少しずつでも利益を積み重ねて、1年たったらそこそこのお金になっていたなんてことも十分有り得る。

世界一活発なマーケット、ロンドン市場

次はロンドン市場。ロンドンの特徴は、世界で一番活発(取引量が多い)なマーケットということ。ニューヨーク市場が一番取引量が多いのかな~、などと思い勝ちだが、実はロンドン市場が全体の34%の取引量を占めていて、No.1。なぜかというと、ヘッジファンドやオイルマネーも含め世界の金融機関の拠点がロンドンに集結していることや、地理的にアジアと米国の中間に位置しているからだ。ロンドンではポンドや欧州通貨の取引が多い。特徴は日本の仲値と同様な動きをするロンドンフィキシング。ただし時間は現地時間の午後4時。この時間帯に債券や株式の実需取引が集中し、大口の顧客取引が出やすいため大きく動きやすい。

ある為替ディーラーさんから訊いた話では、世界的に年金がベンチマークとして使用するレートがロンドンのロンドン時間午後4時、WMカンパニー(英国民間系のファンドフローの調査会社)が発表するフィックスレートで評価されるそうなので、その評価レートから乖離したくないので、ロンドン4時に取引するということもあるらしい。だからロンドンフィキシングが意識される。他に、ここ10年間に為替取引で重要な位置を占めるようになってきた、オプションに絡んだオプションカットも仲値的な動きをする。オプションカットとは、オプションの行使時間(期限)を指し、東京市場での仲値公示時間のように相場の動意が見られやすい。

投機的取引の多いニューヨーク市場

ニューヨーク市場の特徴としては、日本のように貿易がらみは少なくて(ドルは基軸通貨&決済通貨なので)、投機的な取引が多い。世界のシェアは16%でNo.2の座。当然ニューヨークではドル円やユーロドルを筆頭にドルがらみの取引が多く、相場が大きく動きやすい。またNY時間での為替は、NYの株式市場との連動性が高いので注意したい。こういった東京・ロンドン・NY市場は基本的に一貫性を持って動いていて、朝からの東京の流れが継続される傾向が強いが、経済指標や要人発言でその流れに変化が出る場合も多くある。特に米国の経済指標(雇用統計、GDP、FOMCなど)は大きく影響し、為替も大きく動く。短期トレーダーだったら為替が大きく動いて取引が活発な時がチャンスになるのだ。なお、1日の内で為替の取引が最も活発なのはロンドン市場とニューヨーク市場が重なっている時間帯である。

確かに傾向というものは有っても、「24hr」(下表参照)の為替市場、何が突然起こるか分からない。そのためにはリスク管理ということが必要になってくる。今度はリスク管理の話をしましょう。私はリスク管理を株ではなく、FXで学んだので。FXで損切りはできても、株ではできない。だからエルピーダまだ持っているわけなんです。。。

執筆者紹介 : 香澄ケイト氏

主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。