【連載】

完全理解Firefox - いま知るべきWebブラウザの過去・現在・未来

1 World Wide Webの夜明け前

 
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いまやコンピュータにとどまらず、携帯電話やデジタル家電の分野においても重要な役割を果たす「Webブラウザ」。本連載では8回にわたり、Mozillaプロジェクトの動向を中心に、Webブラウザというソフトウェアの歴史と現状、そして今後のトレンドを探る。

Webの根幹は「巨大なリンクシステム」

ブラウザを介して見るインターネット、すなわち「World Wide Web」は、1人のソフトウェア技術者の発案により誕生した。Tim Berners-Lee氏が欧州原子核研究機構 (CERN) に勤務していたとき、CERN内部の情報へ網羅的にアクセスできるシステムを考案、それが今あるWorld Wide Web (WWW) の原型だ。

何気なくクリックしている「リンク」。それを現実化する体系立ったアイデアこそが、現在あるWebの原点だ

そのコンセプトの基本は、データを「リンク」することにある。複数の文書を相互に結びつける「ハイパーテキスト」の概念はWWW以前から存在したが、TCP/IP上を流れるプロトコル (HTTP) を通じてさまざまな情報を蜘蛛の巣 (Web) のようにつなぎ、ユーザが自由に行き来できるようにする、という壮大な規模のハイパーテキストシステムはWWWにより実現された。リンクこそが、今も変わらぬWWWの根幹をなすコンセプトといえる。

そもそもWebブラウザとは

Webブラウザ本来の機能は、大きく分けて3つある。1つは、サーバと通信して所定の場所にあるデータを取り寄せること (クライアント機能)。2つは、取り寄せたデータを解析すること (パーシング機能)。そして3つは、解析したデータをもとに実際の描画を行うこと (レンダリング機能)。いずれも前述したハイパーリンクシステム -- もはや文字にとどまらず"ハイパーメディアリンク"と化したシステム -- の実現には不可欠の機能であり、現在あるWebブラウザも、基本的にはその延長線上にあると言っていい。

Berners-Lee氏がNeXT上で開発した「World Wide Web」(画像はW3Cにおいて「Screen shot of Tim Berners-Lee's browser editor」として公開されているもの)

その後Berners-Lee氏らはWorld Wide Webの改良を続け、1991年には世界初のWebサイト「info.cern.ch」を開設するに至るが、Webというシステムがいきなり大ブレイクしたわけではない。どちらかというと、CERNやその周辺で利用されていたに過ぎず、多くのユーザの -- といっても当時のインターネット利用者は研究者などごく少数 -- 大多数はメールやネットニュースの利用が中心で、情報の検索にはテキストベースのサーチシステム「gopher」や、FTPサーバ上のファイルをサーチしてインデックス化する「archie」を利用していた。パソコン通信全盛のその時代、WWWが脚光を浴びるのはしばらく先のことだ。

そしてMosaicが現れ、Netscapeが誕生する

Webの発展を加速させ、その革新性を際だたせる働きを見せたのは、イリノイ大学の国立スーパーコンピュータ応用研究所 (NCSA) でMarc Andreessen氏らにより開発されたブラウザ「Mosaic」だ。World Wide Web、およびそれ以降に登場した「Viola」やArenaといったブラウザにも、グラフィックのサポートや、後に標準化される仕様 (テーブルやスクリプト対応など) は装備されたが、Mosaicは「<IMG>」タグをサポート、文字と画像を同じウインドウ内にレイアウトして見せた。今では当たり前の機能だが、その"コロンブスの卵"をやってのけたというわけだ。

Mosaicが画期的だった理由には、当時多くの大学や研究機関に導入されていた、Sun MicrosystemsのUNIXワークステーションで動作したことも挙げられる。しかも、バイナリの形で配布も行われた。今でこそLinuxやFreeBSDといった選択肢が豊富に用意されているが、当時はSun Microsystemsのマシンが隆盛を誇っており、Mosaicの登場により一気にユーザ層が拡大した。

さらにその勢いを加速したのが、Mac OS版とWindows版のリリースだ。それまではUNIXワークステーションという、研究者などごく一部の層にしかアクセスできないマシンが必要だったが、マルチプラットフォーム化によりユーザの裾野が一気に広がった。

Mosaic 1.0 Windows版でマイコミジャーナルのトップページを表示したところ

インターネットの使途が緩和されたのもその頃。今あるインターネットの原点は、米国防総省のプロジェクトであるARPANETに遡れるが、1980年代に再編され、全米科学財団 (NSF) が運営管理する科学教育分野向けネットワーク「NSFnet」に吸収。NSFnetは公的機関であり、商業目的の利用が制限されていたが、1993年にその商業利用を排除する原則 (利用承諾方針、AUP) が大幅に緩和されたのだ。

そしてMarc Andreessen氏はNCSAを去り、翌1994年にMosaic Communicationsを設立、同年Netscape Communicationsに改名した。言うまでもなくその会社こそ、現在のMozillaプロジェクトの直接の祖先にあたる「Netscape Navigator」生みの親だ。

次回は、インターネット興隆期に立ち会った"生き証人"の話を交えつつ、Webブラウザがどのように進化してきたかをまとめてみたい。

Tim Berners-Lee氏がWWWを生み出したNeXTSTEP上で実行した、古のWebブラウザ「OmniWeb 2」

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インデックス

連載目次
第7回 Firefox 3.0 RC1で知る『次のWebブラウザ』 - Webアプリ編
第6回 Firefox 3.0 RC1で知る「次のWebブラウザ」 - ユーザビリティ編
第5回 Firefox 3.0 RC1で知る「次のWebブラウザ」 - コアコンポーネント編
第4回 広がるFirefoxの波 - 標準と利便性を追いかけて
第3回 Mozillaプロジェクトの設立とFirefoxの誕生
第2回 10年で激変したWebブラウザとその周辺
第1回 World Wide Webの夜明け前

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