エンジニアとは一体どうやって働いているのか、エンジニアの周りの人はどう接したらいいのか、GMOペパボが運営するネットショップ運営サービス「カラーミーショップ」のカートを新しくする「新カゴプロジェクト」の3人に話を伺ってきた。

むかって左からエンジニアのねっしーさん、プロダクトオーナーのりんさん、デザイナーの鹿さん

GMOペパボの「新カゴプロジェクト」メンバーの3名を通して、エンジニアの仕事にせまってきた。最終回の今回は、よりエンジニアのことを理解するべく、「できるエンジニアとは?」「どんなときにテンションがあがるの?」と気になることを伺っていく。

エンジニア「できません」の裏には

――ざっくりしたイメージですが、エンジニアの方は「できない」ということが多い気がして、それはどういう理由なんでしょうか?

ねっしー:できない理由はいくつかあります。本当に技術的にできないことは、そもそもやっては言われないのであまりなくて、基本的には時間がない、簡単にできない、やりたいことがよくわからないから、できないとか。

――逆に日々見ていて、これはできる、やりたいということはありますか

ねっしー:この技術を試したいとか、この問題を解決したいとかは、いくらでもあります。シュッとできるものは合間でやったりもしますが。時間がかかりそうなものは、タスクのひとつとしてチームに話をして、交渉していきます。

――やりたい、テンションがあがる、と思うのはどういった時ですか?

ねっしー:プロジェクト固有の問題を、一般的な問題として抽象化して解決できるときは、結構テンションがあがります。うちで困っていることは他の人も困っているだろうから、解決するための方法をブログに書いたり、オープンソースで公開したりしています。

――「自分だけが解決したから隠しちゃおう」みたいな気持ちは

ねっしー:ないですね。むしろ他の人に共有できるのが、一番のモチベーション、テンションのあがるところです。GMOペパボのエンジニア文化なのかもしれません。評価の基準として、アウトプットすることや影響を広げる力という軸もあるので。

――その軸はいいものだと、エンジニアの皆さんが納得なさっているということでしょうか

ねっしー:そうですね。エンジニアとして考えると、その現場でしか通用しないことをやっていたら、他のところで通用しないですよね。他のところで通用するや目には、問題解決を一般化して考える必要があって、それをアウトプットすることはエンジニアの価値を高める方法だと思いますし、それが評価の基準になっているのはありがたいと思います。評価基準そのものが「エンジニアならこういうことをやった方がいいんだよ」という、あるべき姿を示してくれています。

――公開すると、あの人はできるな! とか……

ねっしー:ありますね(笑)。何を問題として認識して、どう解決を試みて、結局どうしたのか、というのがとても重要で、エンジニアは互いに欲しがってますね。エンジニア文化かもしれないですね。皆困ってるから共有して幸せになろうよ、と。

――自分の飯の種だから共有しないぞみたいなことはないんですね

ねっしー:そういうのは全然ないですね。

大切なのは根本の問題を特定すること

――できるエンジニアとできないエンジニアの差は何なのでしょうか

ねっしー:いろいろな軸があると思います。プロジェクトをうまくやっていく、という軸で考えると、やっぱり「こういうのをやりたい」と言われたときに、根本の問題を特定できるエンジニアでしょうか。言われたことをそのまま実行するのは簡単ですが、本当に求めているものは何なのか、自分も一度は絶対聞くようにしています。

――「実はあなたの抱えてる問題の解決策はこっちですよ」みたいなことも

ねっしー:課題の源を求めないと、本当に解決しているのかがわからないのでその意識合わせは大事です。

――それは経験の中で、「理由をきかないとだめだな」と思ったことがあったのでしょうか

ねっしー:どこかであったのかな。「なんでここにボタンがいるんだ」とか……いろいろ追加するのはいいんですが、機能が増える分だけ、複雑になるんですよ。複雑になるということは、バグとかも生まれやすいですし、仕様の把握にも時間がかかり、継続的に価値を提供することが難しくなります。僕たちは継続的にユーザーさんにいいものを提供したいんです。

――複雑なものの方がかっこいいと言う人もいるけど、そうではないんですね。デザイナーの方々もそうでしょうか

鹿:シンプルな方がかっこいいですよね。

りん:複雑だとなんでもないものになりそうですよね。たくさんの人に使ってもらいたいからと言って、いろんな機能を入れると、結局誰にも刺さらないものができあがる。

鹿:話をきいていたら、ねっしーさんはデザイナーなんじゃないかなと思いました(笑)。問題に対して、本質的に何を解決したいか考えて提案するのはデザイナーに近いです。

――ちなみに、できるデザイナーとは

鹿:情報を整理して、みんながもやっと想像していることを形にする人がデザイナーなのかなと思っています。さまざまなデザイナーの方がいらっしゃると思いますが、GMOペパボのようなウェブサービスの会社としては、そのような役割の人が求められているのではないでしょうか。

――それはみなさんが共有している基本認識なんですか?

りん:私たちがデザインしているのはユーザーさんがいるサービスなので、その人たちにより良く使ってもらうにはどう工夫したら良いかを常に考えてデザインしています。

――お客さん像の想定はどのようにされているのですか?

鹿:GMOペパボは、イベントなどで実際にお客さんに会う機会もあるので、この人だったら……みたいな想像がしやすいかもしれません。

りん:実際の利用データからユーザー像を導き出したりもしています。

――お客さんがユーザーの場合と、クライアントの場合で違いはありますか

ねっしー:一緒ですね。やっぱり、ものをつくるなら、使ってくれる相手がいるので。その人を考えるのは基本ですね。

りん:基本です! いいこと言うなと思いました(笑)

なりたいエンジニア像

――それでは、最後にねっしーさんにお聞きします。エンジニアとしてなりたい像はありますか?

ねっしー:僕はいまのところフロントエンドまわりの専門家にいきたいなと思います。エンジニアって、本当にやらなければいけないことがたくさんあるんですよ。全部やっていたらもう何もできないんです。全部やるって、本当は何もやってないのと同じことです。「他の人にできないことができる」のがエンジニアの価値として大きいと思っていて、目指すところでもあります。

――技術が新しくなっていく、それについていくのは

ねっしー:大変です(笑)。大変ですけど、個人的には面白いと思っています。やらなきゃいけないという義務感だけでは続けられないですよエンジニアって。こういうのをやったら楽しいなとか、自分がやりたい、わくわくする、楽しい……といったものを見つけて、そこに行くのが一番いいですね。わくわくしないとやってけないと思います。

――やってけなくなるひとも……

ねっしー:います……。やっぱりわくわくを見つけられる人が強いです。僕のまわりにはたくさんわくわくを見つけられる人がいます。アウトプットしているとか、活躍しているとか、お手本となる人がたくさんいます。

――ありがとうございました

まとめ

エンジニアとつきあうためには、スケジュールの管理や課題の設定、ゴールの共有が必要不可欠だった。専門用語でやりとりすることを求められているわけではないが、ものづくりの基本をおさえておかなければ……。ちなみにマイナビニュースが過去に行った、「デキるエンジニアとは?」というアンケートでも「問題の本質を見つけられるエンジニア」「新しいアイディアをいろいろ言ってくれる」など、伺った話と重なる部分も多く見られた。

今回は同じチームとして周囲で一緒に働く方もデザイナー、デザイナー出身のプロダクトオーナーと、「何かをつくる」ことを仕事とする人たちだった。これが営業職や事務職になると、エンジニアに対して感じる価値観の違いに、驚きが大きくなるかもしれない。しかし、「どうして?」と思ったときも、ちゃんとコミュニケーションをとれば解決できるはず。問題解決の重要さをいちばん知っているのはエンジニアなのだから、ぜひ素敵につきあっていってほしい。