北近畿タンゴ鉄道は2014年5月から、金・土・日・祝日に観光列車「くろまつ号」を運行している。この列車は4月から「京都丹後鉄道」になっても引き続き運行される。「くろまつ号」は「スイーツコース」「ランチコース」「地酒コース」の3種類。このうち「地酒コース」は4月から「ディナーコース」に変わるそうだ。

コース名 発駅 発時刻 着時刻 着駅
スイーツコース 福知山 10:22 11:30 天橋立
ランチコース 天橋立 12:07 14:28 西舞鶴
地酒コース(4月からディナーコース) 西舞鶴 15:36 18:15 豊岡

料金はスイーツコースが大人4,000円・こども3,600円、ランチコースが大人1万円・こども9,400円。地酒コースが大人5,000円(こども設定なし)となっている。

これらの列車は公式サイトに発駅と着駅のみ記載され、時刻表に掲載されていない。所要時間が長いから、食事サービスがあり、途中駅で長時間停車しつつ、ゆっくり走るようだ。どの駅で長時間停車するか、他の列車とはどこですれ違うか、前回作成した列車ダイヤを使って「くろまつ号」の動きを推理してみよう。

まず、宮津線・宮福線の通常ダイヤを眺める。前回と同じだけど、今回は定期列車として運行されている観光列車「あかまつ号」を赤の点線、「あおまつ号」を青の点線で示した。「あかまつ号」は座席定員制で、乗車券の他に乗車整理券300円が必要。ただし、「あかまつ号」にはコミューター車両が併結されており、こちらは乗車券のみで利用できる。「あおまつ号」は乗車券のみで利用可能だ。

宮津線ダイヤ(2015年1月)

宮福線ダイヤ(2015年1月)

ここに「くろまつ号」のダイヤを黒い点線で反映させていく。まずはスイーツコースだ。福知山駅10時22分発・天橋立駅11時30分着。宮福線を走り、宮津駅から宮津線に入るけれど、宮津駅の着発時刻が明示されていないから、路線ごとのダイヤに反映できない。しかし、天橋立駅と宮津駅は隣同士だ。他の列車の所要時間を参考に逆算すると約6分。つまり天橋立駅到着の6分前、11時24分が宮津駅の発車時刻と予想される。

宮津線に「くろまつ号」スイーツコースのダイヤを反映

赤い丸の中にある黒い点線が「くろまつ号」。宮津駅から特急列車を追うように出発する。次に宮福線に反映させる。宮津駅11時24分発まではわかったから、1分間停車として宮津駅11時23分着と仮定し、福知山駅10時22分発、宮津駅11時23分着の線を引くと……。

宮福線に「くろまつ号」スイーツコースのダイヤを反映

拡大表示してみたところ、福知山駅から宮津駅までノンストップで線を引いたら、都合の悪いところがある。大江駅では普通列車とすれ違っているけれど、手前の荒河かしの木台~牧間で特急列車とすれ違い、大江山口内宮~辛皮間では走行中に特急に追い抜かれる。単線ではこんな走り方はできない。そもそも列車の傾きが大きすぎる。

いくらのんびりゆったり走る列車とはいえ、もっと急げば、すれ違い可能駅に先に到着できるはず。そこで、前回紹介した駅設備の一覧を参考に、他の列車の所要時間と同じ速度(=傾き)でダイヤを修正してみよう。左隣の青い点線「あおまつ号」も大江山口内宮~辛皮間ですれ違っているから、あわせて変更してみた。

宮福線「あおまつ号」「くろまつ号」の運転停車を設定してみた

時刻表や資料では通過となっている駅で、客扱いをしない停車駅を設定すれば、すれ違いも追い抜きも可能になる。下り「あおまつ号」は大江山口内宮駅で上り普通列車を待つ。停車時間は約5分。これだけ停まるなら客扱いしてあげても良さそうだと思う。もしかしたら、上り普通列車を待たせて、下り「あおまつ号」はもっとゆっくり走ってきて、大江山口内宮駅を通過するかもしれない。

「くろまつ号」は牧駅で上り特急列車とのすれ違いを待ち、大江駅で普通列車とすれ違い、大江山口内宮駅で特急列車に追い越され、宮村駅で上り普通列車とすれ違う。

一方、宮津線のほうはどうだろうか? こちらも「くろまつ」のランチ列車、地酒列車の時刻を反映させてみよう。

宮津線に「くろまつ号」の運転時刻を反映させた

これも無理な走り方になってしまう。先ほどと同じように、他の列車の所要時間や駅の設備を勘案しながら、駅ですれ違いや追い越しができるように修正してみよう。

宮津線「くろまつ号」の運転時刻を修正した

天橋立発西舞鶴行の「ランチコース」は、宮津駅で約20分間停車。下り普通列車とすれ違った後、上り普通列車を先行させる。次に丹後由良駅で下り普通列車とすれ違って、東雲駅では長時間停車する。この区間は普通列車と同じ速度で設定しているけれど、途中には奈具海岸を望む景勝地があるので、もしかしたら駅間で停車したり、ゆっくり走るかもしれない。

東雲駅の停車時間は長い。公式サイトによると、駅市を開催して地元の人々との交流や買い物を楽しめるそうだ。時間帯的に食後だろうし、停車時間は長いほうがいいだろう。東雲駅でも上り普通列車を先行させ、下り普通列車とすれ違い、西舞鶴駅に14時28分に着く。

西舞鶴発豊岡行の「地酒列車」は、公式サイトの案内によると天橋立駅・網野駅・木津温泉駅・久美浜駅で途中下車可能とのこと。つまり、これらの駅に停車するわけで、すれ違いもこれらの駅で行われるだろう。修正したダイヤによると、丹後由良駅で上り「あかまつ号」とすれ違い、天橋立駅で普通列車と特急列車のすれ違いを待ち、峰山駅では普通列車と特急列車のすれ違いを待つほか、普通列車を先行させる。「くろまつ号」で最も忙しい場面で、峰山駅に線路が3本あるから可能になった。続いて網野駅・木津温泉駅に停車。丹後神野駅で上り普通列車とすれ違い、久美浜駅に停車して、豊岡駅に18時15分に到着する。

こんな推理をしてみたけれど、実際の運転時刻はどうだろう? 乗ってみないとわからない。だんだん乗りたくなってきたぞ……。しかし、乗車したら、スイーツにランチに地酒……4月からはディナーになる。景色と料理とお酒に心を奪われ、運行時刻なんて、どうでもよくなってしまうかもしれない。