『デスノート』『デスノート the Last name』(06年)、スピンオフ作『L change the WorLd』(08年)で大成功を収めた映画『デスノート』シリーズ。誕生から10年の時を経て、映画『デスノート Light up the NEW world』(10月29日公開)で、まさかの続編として復活を遂げる。果たして、その"最終ページ"には一体何が書き込まれたのか。
マイナビニュースでは「独占スクープ 映画『デスノート』の最終ページ」と銘打ち、すべての作品を企画・プロデュースしてきた日本テレビ・佐藤貴博プロデューサーの「今だから語れる」証言を中心に、全20回にわたってその歴史を掘り下げていく。インタビューは合計約5時間、4万字近くにも及んだ。第11回は「"ミサミサ"こと弥海砂を演じた戸田恵梨香の起用秘話」「10年後、女優となった弥海砂を再び演じる葛藤」。
10年後のミサミサが必要だったわけ
――弥海砂役・戸田恵梨香さんがいることで、「10年後」の世界観がより鮮明になりました。
前作の生き残りで、デスノートを使ったことがある人物。そして、夜神月を愛していた女性。彼女にはぜひ出てほしかった。『デスノート』でスクリーンデビューを果たし、女優としてデスノート以降も大きく成長していった存在。現在も女優として第一線を走り続けているので、彼女が出ることはすごく大きな意味を持っていました。
――『デスノート』での最初の撮影シーンは?
前編終盤のADに襲われる場面です。前編では、あとは「ハッピースイーツ」という、映画内でのテレビ番組出演シーンぐらいでした。本格的な海砂の活躍となる後編では、改めてADに襲われるシーンから撮影しました。前編では見せなかった死神レムの登場シーンです。そこを最初に撮ってから、すぐに夜神月の部屋での芝居。台本10ページ近いセリフ量でしたが、(藤原)竜也くんはいつも通りスタジオには台本を持ってこない。それを見ていたからなのか分かりませんが、恵梨香ちゃんも台本を持たずに撮影に臨んでいました。
大量のセリフも完璧に入っている竜也くんとの2人だけの芝居なので、相当なプレッシャーだったと思いますが、恵梨香ちゃんもセリフが飛ぶということは一切ありませんでした。しかも、月の部屋のシーンはリュークとレムの死神2体も同時に登場するシーン。CG合成のために同じ芝居を何度も繰り返さなければならないんです。このシーンで海砂は涙を流すのですが、何度も同じく涙を流さなければならない。恵梨香ちゃんは同じ動きをただ繰り返すだけでなく、ちゃんと毎回同じテンションで感情を込めた涙を何度も流していました。映画デビュー戦で、竜也くんを前にして凄いなあと思いましたね。
『野ブタ。をプロデュース』の好演がきっかけ
――オーディションで起用されたんですよね。
フレッシュな才能を見つけたかったので、有名無名関係なく一人でも多くの人に会うためにオーディションにしました。金子修介監督もオーディション好きなので、もちろん賛同してくれました。オーディションメンバーのピックアップはキャスティングチームにお願いしたんですが、そこには「戸田恵梨香」が入っていなかった。僕は『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系・05年)を見て彼女がいいなと思っていたので、僕からの逆指名で来ていただきました。『野ブタ』の役とミサミサのイメージは違うと分かっていたんですが、あの存在感とかわいさは……単純に「会いたい」と思わせる魅力がありました(笑)。
ですが、オーディションに参加してもらってもその輝きは変わらなかった。当時はオーディションをたくさん受けて連戦連勝だったみたいで、そういう勢いも感じました。参加者には「ミサミサっぽい格好」で来てもらうようにお願いをしていて、恵梨香ちゃんもゴスロリではなかったですがミニスカではあったかな。恵梨香ちゃんが参加した日の終わりに、僕が恵梨香ちゃんを逆指名したのを知っていた金子監督が「僕も戸田恵梨香がベストだと思います。佐藤さんも彼女がいいっていうなら決まりじゃないですか」と。その後もオーディションを続けることも可能でしたが、スタッフ一同も同意見だったので、そこで弥海砂役は戸田恵梨香に決定しました。
悩み抜いた結論は「今の私が出るべきではない」
――藤原竜也さんが天才型、松山ケンイチさんが憑依型の俳優とよく言われていますが、戸田さんは?
恵梨香ちゃんは努力型だと思います。いろいろな役を演じていますが、本当に努力の人。考えに考えて、悩んで悩んでやり遂げる。その後何度か作品をご一緒させていただいていますが、毎回かなりのディスカッションを重ねています。自分の役だけでなく、作品全体のことも考えていろんな提案をしてくれますし、製作サイドからの意見もしっかりと受け止めて考えてくれますね。
10年後のミサミサをやる上でもすごく悩んだそうです。「自分にとっても大切な作品で、海砂というキャラクターも大切だからこそ出ないほうがいい」、そう思っていたみたいなんです。10年後の作品に出るのは怖い、と。「今の私が出るべきではない」は、『デスノート』ファンの気持ちになって出した答えだったのでしょう。そこを根気強く説得して。いつも以上にディスカッションを重ねました。
海砂のセリフには恵梨香ちゃんの意見がかなり入っています。当初よりセリフは減っていますね、恵梨香ちゃんからセリフではなく表情で見せたいというところが多くなったからです。佐藤信介組はとても良いチームだと思っているので、恵梨香ちゃんにも短い撮影期間でしたが参加してもらいたかった。撮影後に、「やってよかった」と言ってくれました。
――その一言で救われますね。
10年の付き合いになり、仲が良い中でも緊張感もあり。恵梨香ちゃんの現場は必ず足を運びました。まるでマネージャーのように(笑)。10年、そして夜神月の重み。それを彼女はきちんと表現してくれた。口説き落としたかいがありました(笑)。
■プロフィール
佐藤貴博(さとう・たかひろ)
1970年4月26日生まれ。山梨県出身。1994年、日本テレビに入社。営業職を経て、2003年に念願の映画事業部に異動する。映画プロデューサーとして、『デスノート』シリーズ、『GANTZ』シリーズ、『桐島、部活やめるってよ』などヒット作話題作を数多く手がける。今年公開作品は、『デスノート Light up the NEW world』(10月29日公開)、『海賊とよばれた男』(12月10日公開)。
(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS