京都府立医科大学などは3月14日、血液中の遊離DNAを用いて解析するリキッドバイオプシー(液体生検)技術により、血液検査のみでEBウィルス関連胃がんの検出を可能にする方法を開発したと発表した。

同成果は、京都府立医科大学大学院医学研究科消化器外科学 市川大輔准教授、徳島大学大学院医歯薬学研究部人類遺伝学分野 井本逸勢教授、増田清士准教授らの研究グループによるもので、2月24日付けの米国科学誌「Oncotarget」オンライン版に掲載された。

EBウィルス(EBV)感染は胃がん全体の約1割の症例に認められ、ほかのタイプに比べて特定の遺伝子が高頻度に変異していることや、がん細胞が免疫力を抑え込む仕組みのひとつが活性化していることが報告されている。EBV関連胃がんは現在、手術時に摘出されたがん組織を用いて診断されているが、がんの治療中や再発時には侵襲が大きいために検査を行うことは困難で、治療の効果を定量的に評価したり再発時に治療法を選択したりするための情報を得ることができない。

一方、リキッドバイオプシー技術は、血液などの体液中に存在するDNAやRNAの中にわずかに存在する疾患由来の変化を検出することによって、疾患の診断や治療効果予測を行うもので、がんの場合には、がん細胞に認められるDNAの変異を血液中で検出することで、がん組織を用いることなく、非侵襲的にがんの早期診断や再発の早期検出、大きさの推定や治療効果の判定などが行える技術として期待されている。

そこで同研究グループは今回、これまで開発していたリキッドバイオプシー技術を用いて、循環血漿中に流れるがん細胞内EBV由来の遊離DNAを高精度に検出する方法を開発した。同手法では採血のみで検出することができるほか、手術前に血液でEBV感染が検出されていた症例では、EBVのDNA量が腫瘍の大きさと相関したことから、EBV関連胃がんの治療後にEBVのDNA量の変化を見ることで治療効果が判定できる可能性があるという。また手術でがんを取り除き一旦EBVのDNAが消失した後も経過を追ったところ、ほかの検査で再発が発見される前に血中でEBVの再出現を検出することができた。

血漿中EBウイルスDNA量と腫瘍径は相関する (出所:日本医療研究開発機構Webサイト)

経過中にEBウイルス関連胃癌の再発を検出した例 (出所:日本医療研究開発機構Webサイト)

今回の成果により、血液によるがんの進行状況などの診断が可能となり、治療効果の予測・判定や、再発の監視などをリアルタイムにかつ低侵襲に行えるようになるため、同研究グループは、今後の胃がん診断に有用なツールとして期待できると説明している。