上映会の舞台あいさつに登壇した星野源

アニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』(4月7日公開)の完成披露上映会が9日に都内で行われ、舞台あいさつにシンガーソングライターで俳優の星野源らが登場。オファーの背景や見どころを語った。

本作は、第20回山本周五郎賞受賞および2007年本屋大賞2位に選ばれ、累計売り上げ120万部を超えた森見登美彦氏の同名の青春小説が原作。舞台は京都で、さえない大学生の"先輩"と彼が思いを寄せる"黒髪の乙女"、そして2人を取り巻く人々の淡い恋模様がファンタジックに描かれる。メガホンを取るのは、同じ森見氏の作品をもとにした『四畳半神話大系』(2010年)を手がけてきた湯浅政明監督。キャラクター原案も同作に参加したイラストレーター・中村佑介氏が担当している。

舞台あいさつに登場したのは"先輩"役の星野のほか、"黒髪の乙女"役の花澤香菜と学園祭事務局長役の神谷浩史、パンツ総番長役のロバート・秋山竜次、湯浅監督の5人。メガネ姿で登場した星野は、「何となく"先輩"のような気持ちになりたいなと思って(メガネを)かけてきました」とほほ笑んだ。

そんな星野にオファーが来たのは、2016年10月。湯浅監督から、直筆の出演依頼の手紙が台本と共に突然届いたという。『マインド・ゲーム』(2004年)から湯浅作品を追いかけていた星野は、「そんな監督が『"先輩"をやってもらったら必ず面白くなります』とまで書かれていたので、断れないな」と意気込みをもったことを明かした。

一方の湯浅監督も、「(手紙には)正直な気持ちを書いた」と告白。「現場で星野さんの名前が出た時にすごく盛り上がって、星野さんが決まらないと他のキャストも決められない」との思いにまで至ったことから、「こんなに(現場は)高揚してるんですけど、どうするんですか? 星野さんがいれば面白くなるんですけど……」と率直な思いをつづったことを打ち明けた。これに星野が「脅迫文っぽい感じはありましたね。初めてのやり取りなのに脅迫文(笑)」とこぼし、会場の笑いを誘った。

そんな背景からアフレコに臨んだ星野は「すっごく楽しかった」と喜びの表情。『四畳半神話大系』は「すごく好きな作品」で強い思い入れがあることから、「雰囲気も含めて似た感じになるのかな?」と先読みしていた面もあったというが、収録の過程で「結構違うんだな」という印象を覚えたようだ。

それを踏まえて、「『四畳半神話大系』は静かに淡々と、スピーディーに進んでいくっていうイメージがあったんですけど」と前置きしつつ、本作は「大騒ぎしながらじっくり進んでいく作品」と分析。また、湯浅監督に本作には「(『四畳半神話大系』主人公とヒロインの)"私"と明石さんっているんでしょうか?」と尋ねたところ、「2人はいないパラレルワールドなんです」と返ってきたことから、「全然違う作品と考えて良いんだと勇気になって。一から"先輩"という役を作っていけるんじゃないか」との実感が湧いたことを振り返った。

また、お気に入りのシーンを問われた星野は「"乙女"はずっと好きです」とほほ笑みつつも「個人的にグッと来たシーンは、"先輩"が古本市の神様にアイスクリームを股間につけられた後、アイスが落ちてコーンからクリームがこぼれ出る……その次に続く"乙女"がラムネを飲む場面」と主張。「あの絵コンテを描いた人は相当スケベだと思います! あれはすごい変態の人が描いたんだなって」と語気を荒らげるように強調した。

続けて「あれは映画的っていうか、何も言わないのにすごいセクシャリティを感じさせる……普通に見てると気付かないと思うんですけど、何回か見てると絶対意図的に描いてるのが分かります」と映像の観点からも指摘。これに湯浅監督が「実際そこを描いたのは本当にスケベな人で」と明かすと、星野は爆笑しながら「やっぱり! グッときました」と満足げな表情を浮かべた。場内にも大きな笑いが起こる中、耐えかねたように「視点がマニアックすぎませんか!?」と花澤がツッコミを入れる一幕もあった。

最後に星野は「自問自答を繰り返した結果遠回りしてしまう、そんな"先輩"の真っすぐな気持ちが画面に出ていたらと思いながら演じさせていただきました」とコメント。さらに「特に、"乙女"が"先輩"の家に来るところからの怒涛の展開、あれはアニメーションの力って本当にすごいなと痛感しました。見ているだけで脳みそが気持ちいい」とアピールし、「最後にはすがすがしい気持ちで劇場から出られる作品です。公開まで、口コミやSNSで皆さんに広げてください!」と呼びかけ、舞台あいさつは幕を閉じた。