米AMDは2月22日(現地時間)、次世代CPU「RYZEN」に関する説明会を開催。具体的なスペックやラインナップ、発売日、価格などの詳細が明かされた(Photo01)。ここでは同社CEO Lisa Su氏のプレゼンテーションの内容をベースに紹介したい。

Photo01:製品版のRYZEN CPUを手にするLisa Su CEO

もともと「RYZEN」というかZenコアは、その存在が発表されたときから、従来のExcavatorコアと比べて40%以上のIPC向上があると繰り返し説明されてきた。Su氏によると「RYZEN」では、最終的に従来比で52%以上IPC向上を実現した(Photo02)という。Photo03が最終製品であるRYZENコアのダイである。

Photo02:ではこの12%の差はどこから? というと、これは「エンジニアリングチームが頑張った」のだそうだ

Photo03:4コアのクラスタが2つあることがわかる。逆に言えば、コア以外の部分も結構大きいのが特徴かも

今回の発表の目玉は、動作周波数と性能、それと価格に関する情報がついに公になったことだ。ラインナップとして次の3製品が投入される。

  • RYZEN 7 1800X
  • RYZEN 7 1700X
  • RYZEN 7 1700

まず、ハイエンドのRYZEN 7 1800Xは、Base 3.6GHz/Boost 4GHzの動作クロックで、競合となるCore i7-6900Kと比較すると、Single Thread性能で同等、Multi-Thread性能で9%の差があるとする(Photo04)。

Photo04:同じ8コア同士ということで比較対象となった形

その下のグレードであるRYZEN 7 1700Xは、Base 3.4GHz/Boost 3.8GHzで、こちらはCore i7 6900Kに加えてCore i7-6800Kと比較しても十分に競争力がある(Photo05)と説明する。ちなみにこのRYZEN 7 1800XとRYZEN 7 1700XはともにTDPは95Wだという。

Photo05:動作周波数が200MHz落ちただけのRYZEN 7 1700X

一番下がRYZEN 7 1700である。こちらはBase 3GHz/Boost 3.7GHzと上位モデルと比べて大分クロックが抑えられているが、その分TDPも65Wまで落ちている。競合モデルとしてはCore i7-7700Kを想定しているようだが、比較して十分にマルチスレッド性能が高いことが示されている(Photo06)。

Photo06:Single Thread性能はどうか? というあたりは示されてないのが気になるところではある

さて、ここまでの話で言えば、単に「IntelのCore i7シリーズと性能的に互角以上」という話でしかないのだが、大きく異なるのが価格である。RYZEN 7 1800Xは499ドル(Photo07)、RYZEN 7 1700Xは399ドル(Photo08)、そしてRYZEN 7 1700は329ドルという値段が設定されている(Photo09)。

【追記】:日本AMDから日本国内において3月3日より「RYZEN 7」の販売を開始することと、希望小売価格が発表された。「RYZEN 7 1800X」が税別59,800円、RYZEN 7 1700Xが税別46,800円、RYZEN 7 1700が税別38,800円とのことだ。

Photo07:RYZEN 7 1800XはCore i7 6900Kのおよそ半額。さらに言えばTDPも95W vs 140Wなので、こちらも半減とは言わないまでもかなり減っている

Photo08:1.5倍ほど性能が上回るが、価格は1割弱低い。こちらもTDPは同じく95W vs 140Wであるが、さすがにCore i7-6800Kは140W枠をフルに使うことはないので、もう少し差は縮まると思う

Photo09:TDP比較では65W vs 91Wということになり、ここでもRYZENの側に多少のアドバンテージがある

価格で言えばRYZEN 7 1700がちょうどCore i7-7700Kの対抗馬とされる形であり、あとは4C/8T+GPUの構成と8C/16TでGPUなしの構成のどちらが好ましいか、という比較となる感じで、なかなか判断が難しいところだろう。

この3つの製品だがいずれも3月2日(太平洋時間)に発売が開始される(Photo10)。またこれに先立ち、2月22日(太平洋時間)より製品のプリオーダーが可能になるとされる(Photo11)。

Photo10:「棚に並ぶ」という言い方からして、リテールパッケージの発売がこの3月2日と考えてよいだろう

Photo11:日本のメーカーの名前は入っていないが、こちらは追々リリースなどが出てくると思われる

ちなみにマザーボードは5社から合計82種類以上の製品が予定されており(Photo12)、会場でもいろいろと展示されていた。また「RYZEN」を搭載したシステムやカスタムPCも多数用意されるとのことだ(Photo13)。実際会場でもLenovoがGaming Tower(Photo14)とideacentre Y720(Photo15)を参考展示していたほか、さまざまなカスタムPCビルダーによるシステムが紹介されていた。

Photo12:AM4マザーボードそのものはすでにCESである程度展示がされており、今回初というわけではないが、CESのときより多少種類が増えたようだ。ちなみにほかのメーカーはAM4マザーボードを出さないわけではなく、あくまで3月2日の時点でのメーカーがこの5社ということである

Photo13:もっともGaming Towerに関しては現在のRX 480ではちょっと役不足の感がある。これらが本格投入されるのは、VegaベースのRadeon投入のタイミングではないかと思われる

Photo14:RYZEN CPUとRadeon RX 480 8GB、最大32GB Memory、HDD(最大2TB)+SSD(M.2 最大256GB)といった構成。型番などはまだ記されていなかった

Photo15:スペックはGamin Towerと同じく。キーボード/マウスはワイヤレス接続で、ポート類をドアで隠せる構造になっているそうだ

最後に、「2017年はまだまだこれから」ということで、これに続く製品が簡単に紹介された。今回はデスクトップ向けのRYZENであるが、次はVEGAベースのハイエンドのRadeon、さらにサーバー向け製品であるNaples、そしてモバイル向けのRYZEN Mobileが続く。Radeon INSTINCTの存在そのものは2016年に発表されているが、これも2017年に投入されることになる。こうした一連の製品の投入をもって2017年は"反攻の年"にしたいという強い意気込みを感じさせるものとなった。

Photo16:もちろんRYZEN自身も、下のグレードが追加されてゆくと思われる