欧州情勢にも目を向けるべき時

金融市場はトランプ米大統領の一挙手一投足に固唾を飲んでいる。そうした状況は今後も続きそうだ。ただ、欧州情勢にも動きがあり、目を向けるべき時が来ているかもしれない。本稿では、欧州の政治情勢について概観しておきたい。

最大の注目はフランス大統領選挙だ。経済規模でみて、フランスは、EUではドイツ、イギリスに次ぐ第3位(イギリスが離脱すれば第2位)、ユーロ圏でドイツに次ぐ第2位の位置にいる。さらに、欧州の外交や安全保障に関しては、経済規模が示唆する以上の発言力を有しているとの指摘もある。

そのフランスで4~5月に大統領選挙が予定されている。現在、反EU、反グローバリズムを掲げる極右の国民戦線(FN)の党首マリーヌ・ルペン(ル・ペン)氏が選挙戦をリードしている。

フランスの大統領選挙は第1回投票が4月23日に実施される。ここで過半数の票を得て大統領に選出される候補が出る可能性は低く、5月7日に上位2名による第2回投票(決選投票)が実施されることになりそうだ。

現時点での有力候補は、ルペン氏のほか、中道右派のフランソワ・フィヨン元首相、無所属のエマニュエル・マクロン元経済相だ。オランド大統領の不出馬を受けて左派連合の候補となったブノワ・アモン前国民教育相は今のところ影が薄い。

当初、フィヨン氏が有力視されていたが、身内への公金給与の不正支給が発覚して失速。若い改革派のマクロン氏も不倫疑惑が浮上するなど、今一つ人気は盛り上がっていない。

最新の世論調査(Ifop2月15日発表)では、ルペン氏の支持率が26.0%、マクロン氏19.5%、フィヨン氏18.5%、アモン氏14%となっており、ルペン氏が第2回投票へ進む公算が大きい。ただし、決選投票では、極右を避けるために中道右派や左派の支持が集まって、マクロン氏が62%対38%でルペン氏を破る見込みだ。相手がフィヨン氏の場合でも、ルペン氏は敗北するとの調査結果になっている。ただし、世論調査の結果がアテにならないことは、昨年の英国や米国での投票結果が雄弁に物語っている。

仮に、EU離脱や統一通貨ユーロの廃止を主張するルペン氏が大統領に選出されるならば、その衝撃はブレグジット(英国のEU離脱)に勝るとも劣らない。ルペン氏が決選投票で負けるとしても、第1回投票で想定以上の得票となれば、金融市場は一段と神経質にならざるをえないだろう。

ところで、3月15日にはオランダ総選挙が実施される。オランダの選挙の仕組みからすれば、移民排斥を掲げる極右の自由党(党首ヘルト・ウィルダース氏)が政権に手をかけることはないらしい。ただ、フランス大統領選挙の前哨戦とも位置付けられるオランダ総選挙で極右政党が躍進すれば、フランス大統領選挙にも大きな影響を与える可能性はある。

他方、英国ではメイ首相にEU離脱を宣言する権限を付与する法案が下院を通過した。上院の通過(=法案成立)に大きな支障はないとみられ、メイ首相が自ら期限を設定した3月末までに離脱宣言がなされそうだ。英ポンドは昨年10月以降、比較的しっかりとして推移してきたが、英国の欧州単一市場からの離脱を意味する「ハードブレグジット」が現実味を帯びるなかで、その実力が試されることになりそうだ。

フランス大統領選挙が今年前半の最大のヤマ場だとすれば、後半のヤマ場は8~10月のドイツ総選挙だろう。欧州大陸のリーダーであるドイツで政権交代が起これば、天地がひっくり返るほどの大騒ぎになるかもしれない。ただ、欧州情勢が流動的であることを考えれば、現時点でドイツ総選挙の行方を占うことは無意味かもしれない。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。

※写真は本文と関係ありません

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