歌舞伎俳優・中村吉右衛門が主演を務めてきたフジテレビ系時代劇『鬼平犯科帳』が、残り2作でフィナーレを迎えることが15日、分かった。12月18日(21:00~)放送分と、2016年末~2017年初頭に放送予定のスペシャルで、30年弱の歴史に幕を下ろす。

長谷川半蔵役の中村吉右衛門=12月18日放送の「浅草・御厩河岸」より

中村吉右衛門が主演を務めるシリーズは1989年7月にスタート。2001年5月までに連続ドラマ137本、スペシャル版11本の計148本を放送してきたが、今月18日の『鬼平犯科帳スペシャル 浅草・御厩河岸』、そして来年夏に撮影し、同年末から2017年初頭に前後編の2本で放送される予定のスペシャルで、全150本を数えてフォナーレを迎えることになった。

もともと、ドラマを制作するにあたり、原作者・池波正太郎は「原作にないものはやってくれるな」という考えを伝えており、池波の死後も、映像化可能と考えられる作品を全てドラマ化した後は、複数の原作を組み合わせたり、過去に1時間ドラマとして放送した内容にアレンジを加えて2時間のスペシャル版として放送したりと、制作サイドが工夫を重ねてきた。しかし、この作業も限界を迎えてきたことから、終了を決定。

今回のフィナーレ発表のタイミングについては、出演者、スタッフなど関係者が、気持ちを一つにしてシリーズ最終作の撮影に臨みたいとの思いから、18日の「浅草・御厩河岸」の放送を前にした、この時期が選ばれた。

27年にわたり、主人公・長谷川半蔵を演じてきた中村吉右衛門は「長谷川平蔵の年齢と同じ45歳で原作者の池波正太郎先生から作品をお預かりして四半世紀、大変魅力的な"鬼の長谷川平蔵"という役に、真摯(しんし)に、そして一所懸命に向き合って参りました」と振り返り、「私が常に意識しておりましたのは、原作で描かれる平蔵自身の行動力、生き生きと切れのある立ち回り、市中を駆け巡る軽やかさ、そして静かな中に見せる人情味でございます」と役柄へのこだわりを明かす。

また、中村は、長谷川半蔵役のオファーがあったときのエピソードも披露。一度40歳のときに話があったものの「まだ年齢的に若かったですし、どうしても実父・八代目松本幸四郎の『鬼平犯科帳』(1969~1972年版)のイメージが強かったもので、今考えると本当に失礼な話なのですが『できません』とお断りをしてしまいました」という。そして5年後に引き受け、放送が終わって池波正太郎に「どうでしたか?」と聞くと、「いいよ、良かったよ」と褒められたといい、「私のことを大変気遣ってくださって本当にありがたかったなぁと、いつも思い出します」と懐かしんだ。

能村庸一プロデューサーは「『鬼平犯科帳』の制作に携わったことは多くの感動をもたらしてくれましたし、誇りでもありました。それを支えてくださったのは他でもない、『鬼平』を愛する全国の視聴者の皆さまであることは、いまさら申し上げるまでもありません」と感謝の言葉を語っている。

中村吉右衛門版『鬼平犯科帳』歴代視聴率

・第1シリーズ(1989年7月12日~1990年2月21日、全26本):平均視聴率16.5%
・第2シリーズ(1990年4月4日~1991年3月27日、全21本):平均視聴率16.5%
・第3シリーズ(1991年11月20日~1992年5月13日、全19本):平均視聴率18.1%
・第4シリーズ(1992年12月2日~1993年5月12日、全19本):平均視聴率17.5%
・第5シリーズ(1994年3月9日~1994年7月13日、全13本):平均視聴率15.1%
・第6シリーズ(1995年7月19日~1995年11月1日、全11本):平均視聴率13.6%
・第7シリーズ(1996年8月21日~1996年9月4日/1997年4月16日~1997年7月16日、全15本):平均視聴率14.4%
・第8シリーズ(1998年4月15日~1998年6月10日、全8本):平均視聴率14.9%
・第9シリーズ(2001年4月17日~2001年5月22日、全5本):平均視聴率13.6%
・スペシャル版(2005年2月8日~2015年1月9日、全11本):平均視聴率14.0%

●全148本:平均視聴率15.8%
●最高視聴率:1992年5月13日「密偵たちの宴」23.6%
※視聴率はビデオリサーチ・関東地区調べ

2005年2月8日放送「山吹屋お勝」

1995年8月16日放送「墨斗の孫八」

1998年5月13日放送「はぐれ鳥」