スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「S&P」)は16日、日本の外貨建て・自国通貨建ての長期ソブリン格付けを「AA-」から「A+」に、短期ソブリン格付けを「A-1+」から「A-1」に、それぞれ1ノッチ(段階)引き下げたと発表した。長期ソブリン格付けのアウトルックは「安定的」。また、外国為替規制リスク評価(T&C評価)を「AAA」から「AA+」に変更した。

S&Pは、日本経済が、ソブリンの信用力がS&Pが従来想定していた水準まで改善するための支えとなるほど十分に回復する可能性が低下したとみている。S&Pによると、2011年度から2014年度の間に、一人当たり平均所得は4万7,000ドル弱から3万6,000ドルに減少。これは対ドルで大幅な円安となったこともあるが、「同期間の平均経済成長率が鈍化したことや、物価が低水準で推移したことも反映している」(S&P)。

S&Pは、政府が打ち出した経済政策「アベノミクス」は当初奏功する兆しがみられたものの、経済が今後2-3年でソブリンの信用力を好転させるまでに改善する可能性は低いと考えるとしている。

S&Pは、「日本の財政状況が極めて脆弱であることは、信用指標における重大な弱み」と指摘。2008年度以降、世界的な金融危機や東日本大震災による日本経済へのマイナス影響が、政府歳入を押し下げてきた。一方で、高齢化に関連する社会保障支出が増大するなど、一般政府支出は増え続けてきた。

2014年の消費税率引き上げによる増税効果や輸出業者からの税収増を勘案しても、2015-2018年度の一般政府債務残高の対GDP比の年間伸び率は5%以上になるとS&Pは予測している。一般政府純債務残高の対GDP比は、2015年度の128%から2018年度には135%に達すると予測している。

「安定的」のアウトルックは、今後2年間の見通しとして、緩やかな経済成長と安定した物価水準により、政府債務残高の増加ペースが減速し、いずれは安定するとのS&Pの見方を反映している。今後、「より力強い経済成長と低位で安定したインフレ率という状況へと経済が回復し、その結果、財政パフォーマンスが大幅に改善した場合には、格上げとなる可能性がある」(S&P)。

一方、経済成長率が引き続き低位で推移することや物価動向の悪化により、政府債務残高がS&Pの想定を大幅に上回って増加する場合には、格下げとなる可能性があるという。