ディズニー/ピクサー長編アニメーション20周年記念作品『インサイド・ヘッド』(公開中)と同時上映されている短編『南の島のラブソング』の特別映像が31日、公開された。

ひとりぼっちでラブソングを歌うウク

本作は、ハワイの美しい海を舞台に、”ひとりぼっちの火山”が何百万年にわたって奏でる、壮大でロマンチックなミュージカル・ラブストーリー。何百万年にもわたり噴火と侵食を繰り返して形成された巨大な火山キャラクター・ウクが主人公となっている。公開された映像では、ウクが愛する人と一緒になれる日を願いながら、切なくも力強いラブソングを歌う姿と、独りで長い時間を過ごしている様子が見られる。

メガホンをとったのは、これまで『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』に携わってきたディズニー/ピクサー作品を支えるベテランのアニメーターで、これが初監督作となるジェームズ・フォード・マーフィー。リサーチの過程で、ハワイ島沖にある海底火山の存在を知ったというマーフィー監督は、「これらの島は今後1万年から10万年後には海面に姿を現しはじめ、最終的にはハワイ島とつながるというのです。壮大な“時間”のスケールに驚嘆した私は、8500万年もの時をかけて1つの火山がたどる"一生"をまとめました」と制作のきっかけを明かしている。

監督に影響を与えたのは火山の存在だけでなく、人間が幸せになりたいと強く願う姿でもある。火山情報を集めているうち、43歳になる自身の妹が結婚することになり、「結婚式で妹の幸せそうな顔を見ながら、彼女がどれだけ長い間このハレの日を待ち望んでいたかと思いを巡らせるうち、火山の一生がまったく違うものに見えてきた。ふと、『火山も人間も同じように、生涯運命の人に出会うことを夢見ていたら…』とひらめいた」という。

また、本作は歌でストーリーの全てを表現するという異色の仕上がり。この歌はシンガーソングライターたちに習い、監督自身が作詞・作曲を手がけ、ジョン・ラセターへの企画プレゼンテーションの際には生歌を披露したほど。監督の熱い思いと独創力はラセターの心をつかみ、企画は採用された。とりわけ、ラセターをうならせたのはそのスケール感で、マーフィー監督は当時を振り返り、「ラセターは、真に壮大と呼べる世界観をCGアニメーションで描くこと、文字通り巨大な火山が主人公という点で、見たことのないスケール感を達成できるのではないかという点に期待を示してくれました」と語った。

ピクサーの描く短編は、アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート常連で、受賞作も多く、そのクオリティーは折り紙つき。短い上映時間の中に織り込まれ、ピクサーならではといった新しみのある内容と笑いは鑑賞者から高い評価を得ており、短編のみを集めたDVDも発売されている。2016年3月の公開決定が早くも話題を集めているピクサー長編アニメーション最新作『アーロと少年』のピーター・ソーン監督もまた、短編『晴れ ときどき くもり』の監督であり、ユニークな世界観に挑戦できる短編の監督を務めることは、ピクサーのクリエイターたちの登竜門ともなっている。


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