大好きなペットと1日でも長く一緒に暮らしたい、愛犬や愛猫に毎日元気で幸せに過ごしてほしいという想いはすべての飼い主さんに共通なもの。でも、ペットの健康を守るための万全な対策をとれている人は意外と少ないのが実情です。

様子がおかしいと思った時点では手遅れの場合も

そのことが最も如実に表れているのが、動物病院を訪れる頻度とタイミング。大抵の飼い主さんは、「ペットの様子に異変を感じた時点で」初めて来院するのではないでしょうか? しかし、それだと時すでに遅しという場合だってあるのです。

予防医療は大切!

ペットの健康管理と予防医療の大切さを啓発

そこで、手遅れだとの診断をされ、悲しい思いをする飼い主さんやペットを一組でも減らすための活動をスタートさせた団体があります。全国の獣医師が中心となり、2014年9月に発足した「Team HOPE (Healthcare Organization for Pets)」です。

同団体の使命は、「ペットオーナーとのコミュニケーションを大切にしながら、ペットの健康管理と予防医療の大切さを広く社会へ啓発すること」。

全国の獣医師による、予防医療を推進する団体は日本初

全国の獣医師に向けて、Team HOPE発足

活動の一環として、9月28日、東京都内で開催された「第16回日本臨床獣医学フォーラム年次大会」にて、ランチョンセミナー『コミュニケーションが生み出す新しい予防医療のかたちーTeam HOPEが描く「人が、ペットが集まる病院」への変革-』が開催されました。

Team HOPE代表も出席

マイクを握ったのは、Team HOPE代表にして犬山動物総合医療センター代表の太田亟慈(じょうじ)先生、日本獣医生命科学大学準教授の水越美奈先生、そしてアイビー動物クリニック代表の藤岡透先生の3名。ともに、Team HOPEの想いに賛同し、より多くの人に予防医療の大切さを知ってもらうべく積極的に活動されています。

セミナー冒頭、配布されたお弁当を片手に耳を傾ける来場者一同に向かって「みなさん、お弁当おいしいですか? 今日はゆっくり食べながら聞いてくださいね」と挨拶したのは太田先生。

満面の笑みで語りかけるその姿からも、ペットにとっても飼い主さんにとっても「気軽に立ち寄れる病院」であることを目指して、いかなるときも相手を思いやる気持ちを大切にしていることが伝わってきます。

「ウェルネスチェック」をしよう

太田先生によると、Team HOPEではまず、ペットが健康であることを確認する新しい予防医療の形として、飼い主さんと動物病院が一緒にペットの健康を見守るTeam HOPE独自の「ウェルネスチェック」を広く一般に浸透させていきたいとのこと。

ウェルネスチェックをしよう

ウェルネスチェックは、「睡眠に変化がある」「耳の中が汚れている」などいくつかの項目が記載されたシートに、飼い主さん自身がチェックをいれると同時に、当てはまる場合は「いつから」「どのように」の詳細も書き出すことで、改めてペットの変化に気付くこともあるのだそうです。また、このシートを動物病院に持っていき、今度は獣医師や病院スタッフと一緒に確認し合う仕組みとなっている。そうすることで、日頃のチェックポイントなども教えてもらえるそう。

チェックシートは無料で利用可能。なおかつ、PDFに出力して印刷できるとのことだ

実際にやってみた

実際のシート

Team HOPEの公式サイトで、ウェルネスチェックを行うことができます。文字やチェックボックスも大きく、入力しやすい形式だ。生活全般、食事排泄、体や部位に関するチェックを行い、「シートを出力する」のボタンを押すと、結果が表示されます。この結果をPDFに出力することもできるため、そのシートを動物病院に行く際に持参すると便利。

細かいところまで記入できるため、情報伝達がスムーズに!

ウェルネスチェックシートを動物病院に持っていこう

渡したシートを閲覧した病院のスタッフが、チェックが入った項目を中心に飼い主さんからのヒアリングを進めることで、その後の診察もスムースになり、異常があった場合により早く措置できるんだとか。

太田先生は、「もちろん、チェックがひとつもなくて健康だなと思う場合でも、気軽に動物病院にみせに来てほしいんです。ペットの日頃のことをよく知っている飼い主さんと医療の専門家である獣医師が、お互いにコミュニケーションをとることで、よりペットの健康を守ることができるのです」とコメント。

素早い措置が可能だ

また、こうした検診時にペットが怖がることなく来院できるための工夫について、水越先生は「おいしいものやおやつを用意しておいて、動物たちに、『病院には楽しいことがあるよ』と思ってもらうことが大切」とコメント。藤岡先生も、ワクチン注射の針はなるべく細いものを選び、痛みを軽減させるなどの工夫を凝らしているといいます。

ペット本人にとっても、動物病院はストレスの元。少しでも軽減してもらえるのはありがたい

より良い病院にしよう

もちろん3人の先生とも、日頃から「飼い主さんにとってもペットにとっても居心地がよく、利用しやすい病院」であることを大切に考え、さまざまな施策を行っているんだとか。

より良い病院に!

年に1回大規模なアンケートを実施する他、御意見箱に集まった意見には必ず目を通して利用者の要望に応えられるよう努力するという太田先生の隣で頷いていた藤岡先生は、「スタッフが気持ちよく働ける環境であることも大事ですよ」とコメント。

アンケートで意見交換を

その理由は、笑顔で気持ちよく働ける環境だと、来院した飼い主さんやペットに対してもより丁寧な心配りができるから。「それと、僕は定期的にスタッフの個人面談も行うようにしてるんです。仕事に対する想いや今後の目標を明確にしてもらうことで、そのためにどんな病院であることを目指せばいいかが見えてくると思うんです」。

動物たちが長生きできる環境作りを

太田先生もこのコメントには拍手を送り、「そもそもTeam HOPEの活動自体が、獣医師としての使命なんです」と断言。

「私たちが啓発活動を行うことで、飼い主さんと病院の絆が深まるだけでなく、社会全体にいい影響が生まれれば、これほどうれしいことはありません。私たちはみんな動物が大好きで、動物たちが幸せに長生きできる環境作りのお手伝いをすることで、社会に還元するこそ使命だと思っています」。

この想いを胸に、全国8地域を統括している地区委員長の先生たちは、全国津々浦々の動物病院に対しても積極的に啓発活動を行い、賛同してくれた病院にはステッカーや様々なツールを配布。ステッカーは病院入口や院内に貼ってもらうことで、来院した飼い主さんにも「この病院なら、二人三脚でペットの健康を守ることができる」と安心してもらいたいんだとか。

まずは自分のペットを幸せにすることから

また、水越先生は「社会への還元についていうと、動物が大好きな飼い主さんたちにもできることがあります。それはなにかというと、まずは自分が飼っているペットを幸せにしてあげること。そのことが、殺処分される動物を減らすことにもきっとつながるはず」とコメント。

人にとっても動物にとっても暮らしやすい社会を作るために、私たち一人ひとりが、できることから始めることが大切なんですね。

Team HOPEの名前の由来を太田先生に伺ったところ、「Team HOPEという名前は、みんなが賛同できる"理想"と"現実"をつなぐ希望となる団体であってほしいとの想いからつけたんです。

Team HOPEの躍進によって予防医療の大切さの認知度が高まり、日本が『ペットが健康で長生きできる国』になれたらいいですね」とのこと。

これからも、ずっと一緒

(画像提供元:うだま)