AKB48グループ総合プロデューサーとして知られる秋元康氏が1月末、"アジアのスピルバーグ"と称されるポン・ジュノ監督と初対面を果たし、映画や監督業、エンターテイメントなどについて熱く語り合った。

初めて対談した秋元康氏(右)とポン・ジュノ監督

『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』『母なる証明』などを手がけてきたポン・ジュノ監督は、最新作『スノーピアサー』(2月7日公開)のプロモーションのために来日し、秋元氏との対談が実現した。

秋元氏いわく、映画は「どれだけ非日常を描けるかが勝負」。「テレビは非日常の世界に入り込もうとしても、例えば電話が鳴ったり、届け物が来たりして、なかなか入り込めません。でも映画は、自分からだまされようと思って映画館の中に入ります」と映画とテレビの違いを述べ、「『スノーピアサー』は、そんな非日常の世界にぐんぐん引き込まれていく面白さがありました」と、ポン・ジュノ監督の最新作を評価。それに対してポン監督は「秋元さんがおっしゃったことはSF映画の魅力でもある」と認め、「観客が作品と、日常と異なる世界に入り込む約束をして、そこへ飛び込んでいく。僕がこの映画を撮った理由も、その面白さにありました」と最新作に込めた思いを語った。

秋元氏はまた、『スノーピアサー』の魅力について「あまり説明しすぎていないところ」を挙げ、「どんなシチュエーションの中を列車が走っているか、たいていは最初にテロップを出して、その設定を説明します。でもこの映画は、それがストーリーの中に織り込まれていて、次第に明らかになっていく。僕はその度に『そういうことなのか!』と驚いて、作品に引き込まれていきました」とコメント。ポン監督も「冒頭、いきなり列車の中から始まるので、『何だ?』と思う人もいるかもしれませんが、観客は主人公たちと一緒に列車を進んでいき、この列車の謎や主人公の過去を知ることになります。映画監督はストーリーテラーでもありますが、そのような物語は僕にとってもチャレンジでした」と語った。

続けて秋元氏は「僕が常に考えているのも、まず自分が面白いかどうか。自分自身が面白くなければ、本当に面白いエンターテインメントはできません」と主張し、「ボン監督の力量というのは、何よりストーリーを組み立てる腕力にありますよね。『次はどうなるんだろう?』『あ、あれが伏線だったのか!』と思わせて、随所にコミカルな要素を交えつつ、観客を最後まで飽きさせない。その力量は、本人が意識しなくとも、世界に通じるものだと思います」と才能を称賛。

秋元氏の見解を受け、ポン監督は「誰にでも『話がしたい』『話を聞きたい』という欲求があって、それは国境や時代を超えるものなのかもしれません。ストーリーテリングを純粋に追求していけば、それがすなわち世界につながるということなのでしょうか。秋元さんとお話して、あらためてその事実に気づきました」と語り、次々飛び出す秋元氏の鋭い発言に「するどい! 秋元さんはさまざまなクリエイティブの領域で活躍されているだけに、実に広い観点を持っていらっしゃる」と感嘆していた。