IHIとIHIエアロスペースは、米Boeingと共同で「再生型燃料電池システム」(画像1)を民間航空機に搭載し、飛行実証に成功したことを発表した。
再生型燃料電池は、充電可能な燃料電池であり、エンジンとは独立して電力を供給することができる。また副産物は水のみであるため、省エネルギー化、二酸化炭素の排出削減を可能とし、航空機の環境負荷を低減することが可能だ。
今回の飛行実証は、Boeingの環境対応技術実証を目的とした「ecoDemonstrator計画」の一環として、米シアトル近郊においてAmerican Airlinesのボーイング737型機(画像2)を用いて行われた。
フライト試験では、航空機の離陸前から高度上昇中において、燃料電池からの発電による電力供給を行い、巡航飛行時に航空機の電源を用いて充電を実施、その後、再度、発電、充電、発電のサイクルを行うことに成功している。
再生型燃料電池の航空機適用技術は、経済産業省が公募した「航空機用先進システム基盤技術開発(航空機システム革新技術開発)」で採択されたプログラムを活用し、平成21年度より研究が進められてきたものだ。ここで得られた研究結果を、Boeingとの共同研究でのフライト実証試験につなげることにより、今回の成功に至った次第である。
IHIによれば、航空機という閉鎖空間に、水素ガスを用いた燃料電池システムを搭載するためには、飛行安全をどのように確保するかという部分が、最も重要な課題だったという。
水素ガスを民間航空機に搭載するための基準が現状は存在しないため、航空機の安全性確保のための安全設計基準を検討し、安全性解析、システム設計をBoeingと共同で繰り返して行った形だ。同システムにおいては、航空機を安全に飛行させるためのバックアップを含め、各種安全機能が備えられていることが特長となっているとした。
IHIは、ジェットエンジンでは国内最大のシェアを有し、航空機装備品メーカーとしての経験が豊富である。また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と地上発電用燃料電池の研究開発も行った経験を有しており、IHIエアロスペースにおいても宇宙航空研究開発機構(JAXA)と成層圏プラットフォーム飛行船プロジェクトの電源系開発の一環として再生型燃料電池の研究を進めてきていた。そうした成果が、今回実証された再生型燃料電池システムの基礎技術になったというわけだ。
IHIは、今回得られた経験をもとに、再生型燃料電池の小型化、大出力化の改良を進め、航空機の低燃費および環境負荷低減に寄与する将来の民間航空機用補助電源の製品化に向けた検討を実施していくとしている。