2012年3月16日、第3世代のiPad――アップルの言い方にならえば、"新しいiPad"――がいよいよ発売となった。マイナビニュースでは、姉妹サイトであるiPad iPhone Wireの協力のもと、海上忍氏による新型iPadの詳細レビューを、これから数回にわたってお届けする。今回、海上氏が最初にチェックしたのは、「Retina Display」をドライブするGPU/CPUの性能だ。
※本記事は、2012年3月16日にiPad iPhone Wireに掲載された記事の転載です。
新型iPadのハードウェアスペック
新型iPadの見所が「Retina Display」にあることは間違いない。264ppiという高い解像度を誇る画面は、いちど見慣れてしまうと以前の環境に戻れないほど。Webページにせよ写真にせよ、9.7インチの画面に描かれる緻密な世界は圧倒的な説得力を持つ。
一方で、「負荷」という言葉も頭をよぎる。iPad 2の1024×768ピクセル(約79万画素)に対し、新型iPadは2048×1536ピクセル(約314万画素)と、画素数は4倍に増加した。それだけの情報量をパフォーマンスを落とさず描ききるには、パワフルなGPUとCPUが欠かせない。
AppleのWebサイトには、CPUは「A5X」、GPUは「クアッドコアグラフィクス」と掲載されている |
慣例どおり、新型iPadのハードウェアスペックの詳細は明らかにされていないが、iOSアプリ『System Status』を使えばある程度は調査可能だ。そこから抜粋した情報を歴代モデルごとにまとめたものが表1で、これを見れば新型iPadのスペックがおよそ把握できる。
表1:新旧iPadとiPhone 4Sのスペック比較 | |||||
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新型iPad | iPad 2 | 初代iPad | iPhone 4S | ||
CPU | ARM Cotex-A9 Apple A5X | ARM Cotex-A9 Apple A5 | ARM Cortex-A8 Apple A4 | ARM Cotex-A9 Apple A5 | |
CPUクロック | 1.0GHz | 1.0GHz | 1.0GHz | 800MHz | |
CPUコア数 | 2 | 2 | 1 | 2 | |
L1キャッシュ | 32KB | 32KB | 32KB | 32KB | |
L1Dキャッシュ | 32KB | 32KB | 32KB | 32KB | |
L2キャッシュ | 1,024KB | 1,024KB | 512KB | 1,024KB | |
BUS Frequency | 250MHz | 250MHz | 100MHz | 200MHz | |
メモリ | 988MB | 502MB | 247MB | 505MB | |
GPU | PowerVR SGX 543MP4(?) | PowerVR SGX 543MP2 | PowerVR SGX 535 | PowerVR SGX 543MP2 | |
GPUコア数 | 4 | 2 | 1 | 2 |
なお、アプリに新型iPadの情報が反映されていないためか、『System Status』の情報の一部にはAppleの発表内容との食い違いが見られる。具体的には、Appleが「省電力デュアルコアApple A5X SoC」と発表しているCPUは「ARM Cotex-A9 Apple A5」と認識され、「クアッドコアグラフィックス」と表現しているGPUはiPad 2と同じ「PowerVR SGX 543MP2」が検出されている。
『System Status』の結果ではっきりiPad 2との差が現れているのは、約1GBに倍増されたメモリ容量のみだ。「CPU(コア)に関して変更はない」というAppleの発表を裏付けるように、CPUクロック数(1GB)とL2キャッシュ(1024KB)、バスクロック数(250MHz)は同じ値が検出されており、演算など一般的な処理について新iPadとのパフォーマンス差は小さいものと予想される。
新型iPadのベンチマークを測定
新型iPadのベンチマーク測定には、iOSアプリ『Geekbench 2』と『GLBenchmark』を利用した。いずれも最新バージョンを使用したが、発売直後というタイミングもあり、新型iPad対応とは明記されていないことを付け加えておく。
Geekbench 2
演算能力などコンピュータとしての性能を測る『Geekbench 2』は、予想どおり新型iPadとiPad 2が僅差という結果に終わった。Memory項目のパフォーマンスは、新型iPadが若干上回ったものの、他の項目は同水準と言っていい。一般的なアプリに要求される演算や入出力などCPUの性能に左右される機能は、新型iPadとiPad 2とで大きな差は生じないだろう。
表2:Geekbench 2.2.7 | ||||
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新型iPad | iPad 2 | 初代iPad | iPhone 4S | |
Integer | 688 | 690 | 334 | 551 |
Floating Point | 919 | 918 | 428 | 730 |
Memory | 843 | 828 | 714 | 740 |
Stream | 336 | 341 | 340 | 294 |
TOTAL | 764 | 762 | 443 | 625 |
GLBenchmark
3Dグラフィック性能を測る『GLBenchmark』では、iPad 2との違いがはっきりと現れた。画素数が4倍に増えているにもかかわらず、2つ実行したテストのスコアは若干ながら新型iPadが上回った。どちらのテストもフレームレートは60fpsをマークしたことからも、約310万画素を高速にハンドリングできるGPUパワーを備えているようだ。今後は、新型iPadの緻密な描画能力に着目したさまざまなアプリ、具体的には3Dアクションゲームやフォトレタッチといった視覚に訴えるアプリが増えていくのかもしれない。
表3:GLBenchmark 2.1.2 | ||||
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新型iPad | iPad 2 | 初代iPad | iPhone 4S | |
Egypt / standard | 6,768(60fps) | 6,642(58.8fps) | 1,408(12fps) | 6,680(59fps) |
Pro / standard | 2,975(60fps) | 2,944(58.9fps) | 1,017(20fps) | 2,964(59fps) |
(提供:iPad iPhone Wire) |