ダイソン株式会社は、11日、ジェームズダイソンアワード2011の最優秀賞受賞作品を発表した。受賞した作品名は、エアドロップ(Airdrop)。エアドロップは、空気から水を採取し、乾燥地域の作物育成問題を解決する。低コストで自家動力で駆動し設置も簡単である点が評価された。

エアドロップは砂漠の生物にヒントを得て開発

制作者のスインバン大学(メルボルン)のエドワード・リナカ氏によると、この作品は、砂漠地帯に生息する珍しい甲虫であるナミブビートルにヒントを得て開発。

この甲虫「ナミブビートル」は年間降水量1.5センチという地域で、親水性の背中の皮膚に早朝に集めた露を飲むだけで生き延びている。

エアドロップ(Airdrop)はこの仕組みを応用しており、乾燥した空気の中の水分を結露が起こる温度まで下げ、1立方メートルの空気から11.5ミリリットルの水分を採取できる仕組みになっており、水を植物の根に直接供給することで、乾燥地域の作物育成問題を解決できるという。


エアドロップ(Airdrop)

また、ジェームズダイソン氏はエアドロップ(Airdrop)にこうコメントしている。

「エアドロップ(Airdrop)は、水分の結露といったシンプルな自然原理を適用し、優れた効果を生み出すひとつの方法を示している。リナカ氏のような若いデザイナーやエンジニアたちがシンプルで効果的な未来技術を開発してほしい」

一方、リナカ氏は、「受賞した賞金1万ポンドでエアドロップ(Airdrop)システムの開発と試験を行うことができる。世界中の農家を支援できるよう取り組んでいきたい」と受賞の感想を述べている。

入賞作品は他3作品

ほか、「ジェームズダイソンアワード2011」で入賞した作品は下記の通り。

■クイックスクリーン(KwickScreen) ロイヤルカレッジオブアート(ロンドン)の学生であるマイケル・コーン(MichaelKorn)氏が開発した移動可能な格納式のルームディバイダー。クイックスクリーン(KwickScreen)は医師や看護師が利用可能なスペースを有効に利用でき、患者のプライバシーや尊厳を最大限に確保できる。


クイックスクリーン(KwickScreen)

■ブラインドスポット(Blindspot) シンガポール国立大学のセ・ルイ・チュー(SeLuiChew)氏が開発した、目の不自由な人が不慣れな場所を移動できるように介助する杖。

ブラインドスポット(Blindspot)は、フォースクエア(Foursquare)などのロケーションベースのソーシャルアプリ情報を利用して近くに知人がいることをユーザーに知らせ、杖に接続されたブルートゥース(Bluetooth)を介して通信することができる。また、杖の柄の部分に付いている水平に動くボールで進むべき方向を示し、ユーザーを知人の場所まで導く。


ブラインドスポット(Blindspot)

■アモアーム(AmoArm) ライアソン大学(カナダ)のマイケル・プライワタ(MichalPrywata)氏は、義肢を付けるための筋肉再神経侵襲手術を回避できるようアモアーム(AmoArm)を開発。ひもで簡単に装着し脳からの信号で操作できる。大手術や長期リハビリを避けることが可能。


アモアーム(AmoArm)

「ジェームズダイソンアワード」は、ダイソン株式会社が提携している教育慈善団体ジェームズ・ダイソン財団が主催している国際デザインアワード。想像力や独創性を称えることを目的としており、今年で6回目を迎えた。