5月に上演される、なんば新歌舞伎座さよなら公演『その男』の制作発表会見が4日、大阪市内で行われ、主演の上川隆也、内山理名、演出を手がけるラサール石井が出席した。

左から、ラサール石井、上川隆也、内山理名

2010年夏の大阪・上本町への移転に伴い、6月で閉館する難波の新歌舞伎座の"さよなら公演"となる同作は、時代小説の大家・池波正太郎の同名小説を初舞台化したもの。上川は、幕末から昭和までの激動の時代を、世の中の流れに翻弄されることなくまっすぐに生きた剣士・杉虎之助を演じる。

上川は「どんな方にも喜んでもらえるような楽しい作品にしたい」と抱負を

この作品が新歌舞伎座の初登場となる上川は「劇場の節目の年にこの舞台に立つことに、大きな意義を感じています」と意気込みを。また、役柄の魅力を「勧善懲悪のヒーローではなく、ヒーローになることを許されなかった男。そのジレンマがおもしろい」と語った。上川扮する虎之助は、多くの剣士が命を散らすことで歴史に名を残す中、剣を捨てて波乱の人生を生き抜いていく。そんな異色のヒーロー像に役者魂を揺さぶられているようだ。また、食通として知られる池波正太郎の作品とあり、「食事のシーンに注目してます。池波さんが本に書かれていたようなおいしいものを実際に出してもらえたらいいなと(笑)。うまいものを食いたいです!」とお茶目な注文も飛び出していた。

虎之助の妻役を演じる内山は、女だてらに剣の達人という役どころ。舞台では、殺陣や男装にも挑戦する。「嫌々ながらも父親に剣を教わって達人になるという女性の役。今で言うと"できる女"だと思いますが、男装をしているときに甘いものが好きなことから女だとバレてしまうかわいいところもあるのが魅力(笑)」と、こちらも役柄にすっかり惚れ込んでいるようだった。

上川との共演を「とてもエネルギッシュな俳優さんなので楽しみ」と内山

「新歌舞伎座は役者のいろんな思いがしみこんだ劇場」と石井

演出のラサール石井は「ただの活劇ではなく、主人公を通して日本という国や時代が感じられるような作品」と今作の見どころを。石井は上川主演の2004年の舞台『燃えよ剣』でも演出を担当し、川上とタッグを組むのは今作で二度目となる。「上川くんは、僕の舞台の打ち上げに自転車で来てくれるような飾らない人。カラオケもうまいので、ぜひミュージカルをやりたいって言ってるんですけど、上川くんが嫌だって言うんですよね(笑)」とプライベートでも親交のある上川の素顔を明かして笑わせ、会見を盛り上げていた。

なお、『その男』は5月2日(土)~27日(水)、大阪・新歌舞伎座で公演。前売りチケットは3月1日(日)から各プレイガイドで発売される。