今回のイベントは、病気で外見の変化を経験した人たちが、再び“自分らしく動き出す”きっかけをつくりたいという思いから、「Breath Now! (今を生きる)」をテーマに開催。登壇者が、自身の経験や周囲の支えについて語った。

元キックボクシング日本王者の今野顕彰氏は、第一子が生まれて4カ月の時に悪性リンパ腫と診断され、昨年9月から抗がん剤治療を開始。「病名としてめちゃくちゃヘビーだったので、それをどういうふうに受け止めようかと考えました」と振り返る。

妻に病気のことを伝えると、「(今野氏が)いなくなったらどうしようと思ってくれたみたいで、この人を悲しませるのは嫌だなと感じて、それがちゃんと治療に向き合おうと思ったきっかけです」という心境に。治療では、「主治医の先生が“大丈夫だよ”と言ってくれたので、その先生の言うスケジュールさえ乱さなければきっと治るんだと思って取り組みました」と意識したそうだ。

その結果、今年1月に寛解したが、「検査では映らない部分や見つけられてない部分もあるので、経過観察の状態です。完全寛解までにはまだちょっと時間がかかるというところです」とのこと。それでも、この日は来場者のキックボクシング体験イベントも行い、普段はスタジオの運営、企業の組織課題、個人の課題を解決するフィットネスプログラムの提供やイベントの企画運営など、精力的に活動している。

  • 今野顕彰氏

原因不明の全身脱毛症で、「まつ毛やまゆ毛もほぼほぼなくて、頭もツルツルの状態になっているんです」というpippi。今でこそウィッグを楽しむ余裕もあるそうだが、「髪の毛がなくなってしまう時は、どうしても絶望感がありました」と吐露する。

アイドルとしてウィッグを被ってライブパフォーマンスをしていたが、本番のステージ中に「激しい動きをしてしまった時、ウィッグがズレて落ちてしまったんです」というハプニングが。

そのままステージに倒れてしまったpippi。「その頃はまだ(脱毛症を)告白していなかったので、起き上がった時に髪の毛がなかったら、ファンの方が衝撃が受けてしまうと思って、立てなかったんです。頭を抑えながら何とかパフォーマンスを続けたのですが、その時に“もう告白しよう”」と決断し、「家族やアイドルのメンバーの励ましもあって、何とかここまで来ることができました」と助けられたそうだ。

  • pippi

宮城県出身の餅田は、東日本大震災後の高校1年生の時に1回目の発症があり、その後芸人になってコンビ結成後に2回目を発症。それは、相方の小野島徹が最初に気づいたそうで、「若い女性の髪がなくなってることにびっくりして、ライブ前だったのでまず“隠さなきゃ!”という気持ちになりました」(小野島)と駆られたという。

当初は部分隠しの粉を使い、餅田の手が届かない箇所は小野島が「誰にも見られない新宿のビルの非常階段でかけていました」ということも。また、ウィッグを被せやすいように、小野島宅のキッチンにてT字カミソリで餅田の髪の毛を剃ってあげることもあったそうだ。

そんな小野島の受け止め方に、餅田は「特別扱いされなかったので、明るくいられたんです。私がウィッグを取った姿も全部見て、それを楽しく面白おかしくしてくれたので、2回目(の発症で)落ち込むという瞬間がありませんでした」と救われたという。

  • 駆け抜けて軽トラ

技術革新で不可能が可能に「諦めなくてもいいんだよ」

困難な状況に置かれても、そこから前を向いた登壇者たち。今回のイベントでは、雨天中止になったものの皇居ランも予定されており、池野氏は「『スポーツウィッグ』はスポーツ関係の方々のバックアップでできている部分もあるので、病気になっても前を向けるようなスポーツイベントを一緒にやっていきたいと思います。スポーツウェアは機能性が高くて、スポーツをしない時も毎日着たいと思えるので、『スポーツウィッグ』もそんな存在になっていったらいいなと思います」と構想を語る。

そして、餅田は「みんながカジュアルにウィッグを使うようになったらうれしいです。昔よりもファッションで被ってる子が増えたし、私も公表したら周りの子がどんどん使い始めてくれたので、自分も広報活動をしていきたいです」、pippiは「ウィッグだからと諦めてしまう方もいると思うんです。私もアイドルを諦めてしまう選択肢が頭によぎったんですけど、技術が発展しているので、“諦めなくてもいいんだよ”ということを広めていきたいと思っています」と使命感を述べた。

現時点で「スポーツウィッグ」の問い合わせが多いのは、子どもを持つ親だといい、池野氏は「最初のお客さんも娘さんが高校生で、部活や体育や習い事などから逃れられない世代の方に、需要が大きいと感じます」と分析。9歳から12歳は、一生のうちで最も運動神経が発達する“ゴールデンエイジ”と呼ばれる時期に当たることから、その課題解決にも意欲を示した。