カシオの本格アウトドアウオッチ 「PRO TREK(プロトレック)」と、日本自然保護協会がコラボレーションしたモデルの新作が、2021年3月に登場する。第1弾の「イヌワシ」(2018年)、第2弾の「オオルリシジミ」(2019年)、第3弾の「アカウミガメ」(2020年)に続き、今回はその第4弾。テーマは「尾瀬の自然」だ。
今だからこそ選んだという「尾瀬」というモチーフが持つ意味、そしてデザインを始めとする本モデルの魅力について、カシオと日本自然保護協会、双方のプロジェクトのご担当者にオンラインでお話を伺った。
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本題に入る前に、まず公益財団法人 日本自然保護協会について簡単に説明しておこう。その名の通り、自然保護に関する啓蒙・活動を行うNGO(Non Governmental Organization:非政府組織)。特定のスポンサーを持たず、自然保護のポリシーに賛同する個人や法人から広く会員を募集し、その会費や一般からの寄付を基に、絶滅危惧種の保護や山林の保全、国際交流やサミット、ワークショップなど、科学的な根拠に基づいた、独立、透明、公平な自然保護活動を行っている。
今回は、その日本自然保護協会から岩橋大悟氏、カシオからはPRO TREKやG-SHOCKの商品企画を担当する開発本部 開発推進統轄部の小島一泰氏にご参加いただいた。
● 時計から広がる自然保護の意識
―――PRO TREKの日本自然保護協会コラボモデルは今回で4作目となりますが、そもそも、コラボモデルが誕生した背景について教えてください。
岩橋氏:当会の役員とカシオさんの時計事業部の方がたまたま知り合いで、両者の強みをいかして何か新しいことができないかという話になったのが、もともとのきっかけです。当会には個人、企業など合わせて2万5千を超える会員や寄付サポーターがいらっしゃいますが、皆さん自然が好きでアウトドア志向の方が多い。必然的にPRO TREKとの親和性も高いといえます。
ただ、実はもっと深い考えがあります。私は協会で自然保護の考えや活動をどのように広げていくか、という啓蒙活動の実務的な仕事をしているのですが、そこで日々感じるのは「会費や寄付ベースの自然保護活動には限界がある」ということです。
―――それは活動資金の面で、ということでしょうか?
岩橋氏:それもありますが、何より日本の人口が1億2千万人以上ということを考えると協会の会員や寄付サポーターとして自然保護活動に協力してくださっている方はわずか3万人です。3万人と聞くと多いようにも思えますが、私はたった3万人しかいないと思っていて、今までと同じやり方では自然保護活動の広がりはないと考えています。より多くの皆さまが自然に対する意識を持ってくれるようになったらいいなと。
それには寄付や会費という方法だけでなく、時計(PRO TREK)という実生活に必要な商品を使って頂くことがお客様にとってもいいことがあるんじゃないかと。「カッコいいから欲しい」と思って買った時計が、実は日本自然保護協会とのコラボモデルだった。それを会社の同僚や友人に「その時計、カッコイイね。どんな時計なの?」と聞かれ、「この時計はね……」と説明することで、自然保護の考えや意識が広まっていく。
そういう日常がお客様にとっても、私たちにとってもいいんじゃないかと。時計のような日常的なアイテムは常に身に着けているものなので、より向いているんじゃないかと考えたのです。ですから、カシオさんには頑張って売っていただいて(笑)、一人でも多くの方に自然保護を広める機会を作っていただきたいですね。
小島氏:実はカシオとしても「いいものを作っていても売れるとは限らない」という長年の悩みがありました。そこで、PRO TREKの性能だけでなく、その開発背景には自然への深い哲学や思いがあることをわかりやすく伝えたいと思っていました。
―――カシオにとっても、PRO TREKがただのアウトドアスタイルの時計ではないことを証明できる好機になった、と。まさに、この企画はお互いのニーズ、そして時代の流れにもかなっていたんですね。
● PRO TREKロゴの山が……!?
―――第1弾から第3弾までは絶滅危惧種、いわゆるレッドデータアニマルズをテーマに掲げていましたが、今回は「尾瀬の自然」ということで、より視点が広がったように思います。
小島氏:今回のテーマである「尾瀬の自然」には、2つの意味があります。ひとつは日本自然保護協会さんが今年、設立70周年を迎え、その活動の原点が尾瀬ヶ原であったこと。さらにもうひとつは、日常使いを意識したこと。
テーマが動物の場合、どうしてもその特徴を盛り込んだ色や図柄などを採り入れたデザインになりがちです。しかし今回は、よりデイリーユースを重視し、象徴的なキービジュアルとすることを心がけて検討を重ねました。例えば、デュラソフトバンド。これをよく見ると、尾瀬周辺の等高線がプリントされているんですね。
―――本当だ! なんとなくウッドテクスチャーかと思っていましたが、よく見ると等高線になってますね!
小島氏:そういった自然のイメージをモチーフにしつつ、近年はやりのカモフラージュ柄っぽいエッセンスも取り入れ、都会的なファッションとしても違和感のない印象でまとめました。ちなみに、このプリントは意外と難しくて、新開発の技術を使用しています。
―――ラグ部分や付属するカラビナのクロス部分に使われている、水色も印象的です。これは何を象徴しているのですか?
小島氏:尾瀬の写真でよく目にするのが、印象的な青空です。この空の色をイメージしています。ちなみに、日本自然保護協会さんとのコラボモデルでは毎回オリジナルのケースバックを採用しているのですが、今回も尾瀬のイメージを盛り込んでいます。
―――確かに、いつものPRO TREKロゴとは雰囲気が違いますけど……。
小島氏:山のイラストが至仏山(しぶつさん)になっているでしょう?
―――ああっ、本当だ! これはコンセプトでありながら「遊び心」ですね(笑)。
岩橋氏:デザイナーさんは(動物モチーフより)苦労されただろうなと思います。なお、尾瀬について少々補足させていただくと、日本が全力で戦後復興をかけた高度経済成長期、電力需要が活発化したことで多くのダム建造が計画されました。実は、その中に尾瀬も含まれていたんです。当時、この尾瀬の貴重な自然をダムの底に沈めてはいけないと、ダム計画に反対した登山家や科学者、一部の官僚といった方々が集まって設立したのが、日本自然保護協会。尾瀬は日本の自然保護の原点とも言える場所なのです。
尾瀬の豊かな大自然を、現在の私たちは見ることも歩くこともできなかった可能性がある。そんな尾瀬の歴史的な背景や自然を大切にしていかなければいけないという思いを、この時計を身に着けることで感じてほしいという願いを込めています。今まで絶滅危惧種をテーマに取り上げてきましたが、私たちが本当に目指しているのは「私たち人間を含め、動物、生物、植物が、生き続けることのできる自然環境を永続的に維持していくこと」ですから。
● 日本自然保護協会とPRO TREKが目指す未来
―――今回のベースモデルは小型軽量と視認性の高さが好評のデジタルモデル「PRW-30」ですね。
小島氏:PRW-30は、トリプルセンサーや電波時計などの機能と性能はそのままに、従来のPRO TREKシリーズのデジタルモデルより、ケース径で3.5mmの小型化を実現しています。そのおかげでウェアの袖口への収まりも良く、また動作や作業で引っかけたりすることもないなど、かなり使いやすくなったと自負しています
。また、G-SHOCKのニューモデルでも使用されているSTN液晶により、視認性と表現力が飛躍的に向上しました。おかげさまで発売直後から大変好評をいただいています。
また、プロアドベンチャーレーサーでありPRO TREKのアンバサダーでもある田中正人氏の監修をいただいており、計測機能やベアリングメモリーなどのテクノロジーには、田中氏のレースにおける使用体験の数々がいかされています。
―――時計としても、外装の質感が非常にいいですね。これはデジタルウオッチのイメージを変えるモデルだと思います。そして重量もわずか66gと本当に軽い。まさに日常使いにうってつけですし、女性ユーザーにもオススメしたいですね。
―――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
岩橋氏:サスティナビリティ、SDGs(持続的な開発目標)といった言葉を最近よく耳にしますが、日本はこういった面で欧米から5~10年近く後れをとっています。従来の寄付を否定するわけではありませんが、より大切なのは、環境保護を社会のシステムに標準的に組み込んでいくことだと思います。例えば事業化ですよね。冒頭でもお話しましたが、環境保護につながる生産や消費が企業の利益にしっかりとつながっていくことで、社会が持続していくという形です。
これまでの環境保護は、企業にとって社会貢献的要素が強く、私たちがお付き合いさせていただく部署も総務部やCSR部が多かったことが特徴でした。でも、現在はカシオさんを始め、私たちの事業パートナーの方々は、半分以上が事業部で対応してくださる。単なる慈善ではなく、事業として捉えてくださるのはうれしいことですね。
小島氏:PRO TREKは多くのファンの方々に支えられ、おかげさまで25周年を迎えました。これからもブランドのコンセプトである「自然を感じる、自然を愛する」は変えず、その手法をさらに追求していきたいですね。例えば、今までの軸だった「自然をセンシングすること」を一歩進めて「センシングで自然をより深く感じること、考えること」に働きかけるものづくり。技術や性能で良いものを目指すだけでなく、その製品の背景にある環境を取り巻く研究、思想、未来へと続くストーリーを、お客様に提示できるブランドになっていくことが大切と強く感じています。
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物を買うという行為は、その商品に一票を投じるということだ。2人のお話を伺って、私たち消費者も今後「商品を選ぶ効果や責任」について、より深く考えていかなければならないと感じた。そして「このコラボモデルを身に着けることが、その第一歩になるなら、それはとても素敵なことだ」とも。
[PR]提供:カシオ計算機