前編にて、アフリカに対して興味のない人にどうしたら(アフリカに)興味を持ってもらえるかを考えた末に「ドキュメント(記録)としての写真ではなく、ファンタジーとしての、物語や伝説といったものを感じさせるような、構図や色彩に辿り着いた」ことを明かしたヨシダナギさん。中編では、そういった作品を生み出すための"撮影・レタッチにおける手法や制作環境"について伺っていく。

⇒まず、前編を読む

レタッチによって生まれる、「ヨシダナギ」の世界観

――ヨシダさんの作品は、鮮やかな色彩が印象的ですが、レタッチはどのようにされているんですか?

ソフトとしては、PhotoshopとLightroomを使用しています。もともとかなり暗めに撮ったデータなので、少しずつ明るく持ち上げていき、彩度も高めにします。特に明るく鮮やかにしたい部分、例えば衣装のカラフルな色や草原の緑などは、その後パーツごとにブラシツールやマスクをかけて調整します。もちろんリアリティも残すことは必要ですが、現実から離れすぎない範囲で、「私の見てきたアフリカ」を表現したいなと考えています。

――そういった作業では、ペンタブレットもお使いになりますか?

はい。レタッチには欠かせないです! 民族衣装の一部分を明るくしたり、白目の色をクリアにしたり、顔のハイライトを引き立たせたりといった細かな調整は、やはりマウスよりペンタブレットのほうが圧倒的にやりやすいです。また、ペンの筆圧感知も重要ですね。空のグラデーションを自然に引き出すときにも重宝します。

――ペンタブレットを使って、かなり細かな調整をされているんですね。絵を描いている感覚にも近いとおっしゃっていましたね。

イラストレーターだった時期もあって。その頃からペンタブレットは使っていたので、かれこれ10年ぐらいはペンタブユーザーなんです。イラストレーターだったという経験も、今の大胆なレタッチのスタイルに少なからず影響していると思います。

――なるほど。ちなみに、イラストレーターとして当時どのような作品を描かれていたんですか?

主に海外のクライアントさんが多くて、所属していたエージェントを通して海外のキャラクターデザインなどを手がけていました。

イラストレーター時代のヨシダさんの作品

――イラストもカラフルで独特の世界観ですね!

カメラ同様、イラストも独学でしたし、日本受けは全然しなかったのでひっそりと活動していましたね(笑)。海外からは割と好評で、イラスト一本で食べて行けるぐらいの仕事はやっていました。そういえばその時、海外のクライアントから、日本人離れした色彩感覚を持っているねと言われることが多かったです。

――そんな事件が……!(笑)

写真が表現手段となった今も、その色彩に対する感性という部分では変わっていないかな。レタッチの話に戻りますが、私の作品は「写真」というよりは、"写真を元にしたアート"というような位置づけにあって。リアルの風景に、ヨシダの感性を通した、アフリカの色彩を重ねていくというか。

写真のプロの方からは、レタッチをしすぎていることに対して「お前のは写真じゃない」と言われてしまうこともあり、それも理解はしているんですけれど……。写真をツールにしたアートという枠でやっていければと思っています。

――レタッチあってこその、ヨシダさんの世界観ということですね。なんでも、現地で数千枚撮影したなかから、最終的に完成するのは2~3枚だとか……。

特に昔は多めにシャッターを切っておかないと不安で、3,000~4,000枚ぐらい撮っていましたね。でも、ここ最近は、少し経験値が上がってきたので1,200枚ほどの撮影枚数でしょうか。

そこから、帰国後にじっくりとセレクトを行います。その時点で12~13枚ぐらいに絞り込んでいるんですが、まずは軽くレタッチしてみて、その時点で思ったほど色が出なかったり、イメージ通りにいかなかったものは省いてしまうので、最終的に、納得のいく作品は2~3枚しか残らないという感じです。

――レタッチ作業は何時間くらいかかるんですか?

1枚に対して、20時間ぐらいはかけています。でも、私、ロケから帰国した直後にしかレタッチソフトを触らないんですよ。だから、毎回ソフトを開くのが数カ月ぶりという状態に陥り……。「この機能ってどうやるんだっけ」とか「あのボタンどこだっけ」って初心者モードに戻っちゃう(笑)。多分、すごく要領悪いやり方でやっているんだろうなぁという気はしています。ガジェットにめっぽう弱くって。ペンタブのファンクションキーも使いこなせていないかも(笑)。

――いつもはペンタブレットはIntuosをご使用なんですか?

はい。10年前に購入したものが、確かIntuos3で。そこからずっとIntuosシリーズで時々買い替えて今に至るという感じですね。でも、液晶のCintiqシリーズも気になっています!

――今こちらに最新の液晶ペンタブレットを用意してあるので実際に触ってみてください!

初めての液タブに「思わず欲しくなっちゃった」と無邪気にはしゃぐヨシダさん

液タブ、高額だし、場所も取るというイメージがあって今まで購入まではいかなかったんですが、今ってこんなにスリムなデザインなんですね!

(実際にレタッチ作業をしながら)画面に直接描き込めると、やっぱり細部のレタッチはすごくストレスフリーに感じますね。拡大、縮小を左手のタッチジェスチャーで操作できるのも便利だし……。

これ、いいなぁ

……欲しくなって来ちゃった(笑)。

――ちなみに、旅行中現地では一切セレクトやレタッチなどはされないんですか?

しないですね。まずPCを持っていきません。数日間も歩き続けるようなタフな撮影旅行なので、PCを持っていくぐらいなら水を入れていきたいというのが正直なところで。ネット環境や、充電できるコンセントなんかも無いような場所がほとんどですし。

――液タブならPC機能も兼ねているので旅先でも使えるかもしれませんね。

「これで問題解決かも!?」

あっ! そうか、これPCもこのペンタブレットの中に丸ごと入っているということなんですね。それはすごい(笑)。13インチだったら現地へも持っていけるかなぁ。

PCを持っていないと、撮影した写真をモニター確認することすらできないので、日本に帰ってきてから「これピンが甘かった!」とか、「色が思ったほど出なかった」なんて、がっかりすることもあったりするんですよ。旅先へ液晶ペンタブレットを持ち運べば、現地でも作業環境が確保できるので、そういった問題が解消できるかもしれないですね。

―次回は、最も心に残った旅と今後やっていきたいことについてお話を聞かせて頂きます!

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