突然だが、皆さんはワコムのペンタブレット「Intuos」の名前の由来をご存知だろうか。実はこれ、直感を意味する「Intuition」から考え出された名前なのだという。ここからも、同社のペンタブレットがいかに"直感性"を重視している製品かが分かってもらえるのではないだろうか。

さて、ワコムのペンタブレットの歴史を紐解く本企画。今回も前回に引き続き、ワコムクリエイティブ・ビジネス・ユニット プロダクトマーケティング担当の小幡幸結氏にお話を伺い、最高の描き味を目指した「Wacom Intuos Pro」の誕生までを深掘りしていこうと思う。

場所を選ばないクリエイションを

ワコムクリエイティブ・ビジネス・ユニット プロダクトマーケティング担当の小幡幸結氏

「Intuos」シリーズとして、2009年に「Intuos4」を発売した3年後に「Intuos5」、そしてその翌年には「Intuos Pro」を発売していった。

「これまでのペンタブレットとの大きな違いとしては、ワイヤレス機能が圧倒的に向上したこと。これは作業の効率化を図ると同時に、さらなる自由度と見た目の美しさを良くすることを目的としたものでした。例えばソファに座って作業したり、左利きの人がタブレットを逆にして使うときなど、コードがあることで感じていたストレスをなくすことで、よりクリエイティブに専念することが可能となりました。今回のBluetooth対応への進化で、さらに自由度が増しています」(小幡氏)

さらに、ペンの検知機能はクリエイターが自分のタッチを再現する際のとても重要なファクターだが、Intuos5とIntuos Proでは「ペンの傾き」を細かく検知し、それを描画に反映できるようになっているのも大きな進化といえる。

「ペンや鉛筆、絵筆は、その握り方や角度が人それぞれだと思うのですが、その傾きや描き癖が作品の"作風"に大きな影響を与えるため、その再現を可能にするというのはワコムの夢でもありました」(小幡氏)

左から、Intuos4、Intuos5、Intuos Pro。ワイヤレス機能は机の上はシンプルにしておきたい、というユーザに高評価を得た。「Intuos5」で8時間、Proで12時間の使用が可能。なお、写っている「Intuos Pro」は限定バージョン(天地がシルバー素材になっている)

ユーザの声を開発に生かす

ワコムが大切にしていることのひとつに「ユーザの声」がある。

それは描き味へのこだわりはもちろんだが、ペンを握る手とペンタブレットとの接地部分、そしてペンタブレットとテーブルとの段差部分のデザインにも表れている。やや広めで緩やかな斜面を描くダブレット下部のデザインは、ペンを握ったときに境目の違和感を極力無くしたいと考慮したものだそう。

ちなみに「Intuos5」ではボタンがすべて覆われたスタイリッシュなデザインとなったが、同時に「押しづらい」という意見も多く、Intuos Proでは採用が見送られた、という追加エピソードも聞かせていただいた。

ボタンがすべて覆われたスタイリッシュなデザインの「Intuos5」

「描き味」への異常なまでのこだわり

オーバーレイシート(ペンを走らせる部分に貼ってあるシート)の改良は、耐久性を含め、常に進めているのだという。紙に描く場合も使う紙によって描き味が変わってくるように、オーバーレイシートは摩擦係数の異なるさまざまな素材を実際に何種類も試作し、クリエイターに試してもらって一番よいと思われるものを採用しているとのこと。

「実は「(描き味が)これだけ良くなりました」というのは、いくら数値的なもので表したところでユーザに説明するのはとても難しいんです。公表していない微かな違いというか、実際使ってみて「あれ、ちょっと描きやすくなったような……?」という感覚をいかに高められるかということがワコムにとっては大切にしていきたいことのひとつなんです。例えば単純にまっすぐ線を引くという時に起こりがちなジッター(信号波形の揺らぎや、それよって生じる乱れのこと)に対応する精細さの技術にもこだわっていますね。小さな改良こそが大変ですが、大きな意味を持つと感じています」(小幡氏)

左からIntuos5、Intuos Proのチラシ

タッチセンサーの構造をイチから見直すなど、「Intuos4」から「Intuos5」、そして「Intuos Pro」への移行は実は見た目以上に内部で大きな変化が起こっていた。技術者にとって、同じ基盤の厚みでファンクションや性能が向上するということがどれだけ大変なことか改めて確認させられたわけだが、このタイミングではもうひとつ、ワコムの「外側」に大きな変化があった。

それは、ペンタブレットのリブランド。これまで「Bamboo」として販売していた一般ユーザ向けの製品を「Intuos」に、そしてこれまで「Intuos」として販売していたクリエイター向けの製品を「Intuos Pro」にすると発表したのだ。

これは一般向けと細かい設定を求めるプロユースを明確に分けることで、より優れた書き味や表現力を求めるクリエイターに十分な機能を搭載する商品を提供できる手順が整ったといえる。そして、今までの製品へのこだわりを集約したのが、現行機である「Wacom Intuos Pro」だ。

「Intuos4」(左)と「Intuos5」(右)を描き比べてみると確かにタブレットに触れた感覚が異なる。「Intuos4」の方が硬く感じ、「Intuos5」はごくわずかだが何十枚も重ねた紙の上から描くような弾力がある

3回に分けてワコムのペンタブレットの進化について紹介していったが、いかがだっただろうか。常にユーザ目線で、1ミリでも、1ミクロンでも「紙に描いたような」リアルで直感的なアウトプットをクリエイターに提供すべく進化した「Wacom Intuos Pro」。探求し続けるワコムの姿勢にはやはり日本の職人魂を感じさせられる。パソコンの歴史とともに歩み続け、これからもさらに我々のクリエイティブを手助けしてくれるだろう。

なお、同社では「Wacom Intuos Pro 徹底解剖!」と題した特設ページを公開中。是非、こちらもチェックしてみてほしい。

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