「高校生向けモデル」を掲げて高校市場へいざ参入

―― その後、2001年8月にXD-S1200が発売されています。

上田氏「初めて古語辞典を収録し、高校生向けという方向性をメーカーから明確に打ち出したモデルです」

大島氏「古語辞典を一番使うのは高校生ですからね。しかし、ただ単に商品を開発しただけでは、生徒さんにその良さが伝わりません。そこでまずは、学校の先生に良さを理解していただこうとなったわけです。多くのスタッフが全国の高校にEX-wordを持参して、利便性や長所を説明して回り、たくさんの先生からご支持を頂戴しました」

XD-S1200

―― 「紙の辞書じゃなきゃ」と仰る先生も多かったのでは?

大島氏「ええ。ただ、辞書をひかない生徒が増えていて、困っておられる先生も多かったようなんです。それだけに、知る機会を身近につくれば生徒も調べるだろうとの部分で共感していただける場合が多かったです。音声で耳を鍛えられるという部分もそうですね。もちろん紙に比べて劣る面はありましたが…」

上田氏「一覧性が弱いなどは、いまだに指摘されますからね」

大島氏「中には反対派の先生もいらっしゃいましたけど、そういう先生ほど、一度気に入っていただけると熱烈な支持者になってくださって。感激しましたね」

上田氏「あとは授業の効率化にも役立ったようです。クラス全員で辞書を使って調べる機会がありますけど、紙の辞書をひく時間の個人差が少なくていいというご意見もありました」

―― Vシリーズでは高校での販売も始まって順調でしたね。

Vシリーズ

大島氏「いやー、販売は伸びましたがここで2回目の大失敗です。本体サイズが大きくなっていた感があったので、XD-V4000は軽薄短小を徹底的に追求し、9.8mmという薄さを実現したんです。

…ただ薄すぎた。高校生が放り投げたカバンの中で割れてしまうという苦情が相次いだんです」

上田氏「普通に使えば問題ないはずなんですけどね。高校生の行動様式というか、自転車のカゴや机、床など、固いところにカバンを投げたりすることまで想定していなくて。まさか電子機器を入れて投げるとも思わないですよね」

大島氏「もう失敗の歴史です(笑)。その大反省から生まれたのが、2004年のHシリーズです。HはハードのH、これは固いですよ!

G-SHOCK(頑丈な時計)を出しているメーカーなのに……というプレッシャーも少なからずありました。『とにかく頑丈』という大号令がかかって、そこで完成したのが、ねじっても落としても大丈夫な『TAFCOT(タフコット)』モデルです」

上田氏「震動、落下、ねじれ、開閉の耐久試験を一日中やっていましたね。最後には車が踏む実験まで」

―― これはどれくらいで開発が行われたんですか?

TAFCOTモデルのXD-H4100

大島氏「とにかく時間がなかったですからね。XD-V4000を発売して苦情が来だしたのが4月ごろで、2004年2月には販売したので、1年もかかってないですね。発表は1月末でした」

上田氏「秋にはTAFCOTって名前をつけようって話をしてましたからね」

―― このモデルでは130時間の長時間動作もポイントでしたね。

大島氏「はい。EX-wordは『高校生が、学校で』使う物ということで、乾電池駆動に大変こだわっているんです。授業中に電池が切れてもすぐ予備を入れて使えますから。

そうそう、このころから高校生向け、大学生向けと、セグメント別のラインアップも始めたんですよ」