本日は"すごい映画"をご紹介します。その名も『狂い咲きサンダーロード』。

何がすごいかって、まずタイトルの意味のわからなさっぷりがすごいし、もちろん内容もすごいし、あとは誰かと一緒に観賞していて、とある場面に差しかかったときの空気の重さもすごいし……要するに全部すごいのですが、とにかく今回はそんなすごい映画のレビューをお届けしたいと思います。

ファッションセンスもすごい

ここで、いちおう作品の基本情報を抑えておきますと、本作は1980年に製作された邦画で、監督は石井聰亙。そのあまりにパンクなストーリーと演出から、一部では伝説の映画とまで呼ばれているそうです。

舞台となるのは、幻の町サンダーロード。なんかもう、町の名前からしてすでにパンクです。

……で、この町にはたくさんの暴走族がいるのですが、抗争を繰り返してきた彼らも最近ではすっかり丸くなり、「愛される暴走族」を目指して連合する方向で話がまとまっていました。

そんなリーダーたちの情けない姿勢に業を煮やし暴走族全体に反旗を翻したのが、チーム"魔墓呂死(まぼろし)"の特攻隊長であるジン(山田辰夫)。"幻"という漢字がすでにあるのに、あえて当て字を使うその心意気がとても80年代チックでイイですね!

ジン(右)と仲間たち

反抗的なジンの態度を疎ましく思う連合は、数に物を言わせてとその仲間たちを潰しにかかりますが、そんなジンの窮地を救ったのが、魔墓呂死の創設者でもあるタケシ(小林 稔侍)でした。

タケシは、自らが所属するスーパー右翼にジンを勧誘し、幹部候補として一人前の男に育て上げようとします。このへんのタケシに対するジンの態度はものすごく反抗的で、見ているこっちも「そんなやつ放っておけよ、タケシ……」と思わず呟いてしまうほどなのですが、なぜタケシがこうもしつこくジンを勧誘するのかということが、この後重大な意味を持つことになるとは、おそらく誰も予想できなかったことでしょう……。

ということで、一切のネタバレは許さん! という方はここから先は飛ばしていただくことをお勧めします。個人的には、ネタバレを聞いたらますます見たくなる不思議な映画だと思いますけど。

スーパー右翼の面々(80年代ってこんな感じだったの?)

――さて、かくして嫌々ながらスーパー右翼に入ったジンでしたが、組織の規律や思想に馴染めず、結局は一緒に入会した仲間と一緒に飛び出してしまいます。

で、超展開するのはここから。

実はジンがスーパー右翼を抜けたとき、一人だけ組織に残ったシゲルという友だちがいるのですが、なぜか唐突に、タケシ(♂)とシゲル(♂)が上半身裸で寄り添いながら寝ているシーンが始まり、視聴者を混乱の渦に叩き込みます。

先ほどタケシがなぜ執拗にジンを勧誘したのか、ということにチラッと触れましたが、つまりそういうことだったようです。……仮にジンが組織を抜けていなければ、シゲルのポジションにいたのはジンだったのかもしれませんね。

二つの意味で男らしい映画

とまあ、そんなこんなで何も知らずに組織を飛び出した、ある意味ではラッキーボーイなジンは、再びバイクにまたがり幻の町サンダーロードへと繰り出すのですが、またしても何者かに襲撃を受けてしまい、今度は助けも入らずになんと手足を切断されるという悲劇に見舞われます。

ライダーとして致命傷を負った彼は自暴自棄になり、闇のルートから武器を仕入れて、暴走族、警察、スーパー右翼のすべてに対して最後の戦いを挑むのでした……。

バトルスーツで完全武装したジン。彼の目的はただひとつ……

なんかあらすじを普通に追っていっただけでかなりの長文になってしまいましたが、とにかく尻あがりに面白くなる映画です。

最初の方は描かれている時代が30年近く昔ということもあり、"ツッパリスタイル"などの、今となってはなくなってしまったカルチャーを懐かしむことぐらいしか見所がないかもしれませんが、タケシ×シゲルのあたりから俄然面白くなってきますので、ぜひ腰を据えてご覧いただきたいと思います。

特に圧巻なのはラストシーン。ジンとタケシとシゲル、三者の信念がぶつかり合いながら、ひとつの決着へと向かって収束していく場面は、この映画を伝説たらしめるにふさわしい迫力を持っていました。この部分だけは何も書かないので、ぜひ自分の目で確かめてください。

……とはいえ、古い映画だということを抜きにしてもツッコみどころは多いので(たとえばジンが武器を手に入れる場面で仲介役をしているのが謎の小学生だったりする。もちろん一切説明なし)、一人ではなく友だち、あるいは恋人と一緒にワイワイ鑑賞するのが楽しいかもしれません。

ただしその場合は、しつこいようだけどタケシ×シゲルのところだけ要注意な!

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これまでレンタルもされてこなかったレアな作品『狂い咲きサンダーロード』は、初めての単品DVDが現在発売中です。

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今回ぶった斬られていただいた愛すべき作品

『狂い咲きサンダーロード』

キャスト:山田辰夫/中島陽典/南条弘二/小林稔侍ほか

監督:石井聰亙

トランスフォーマーより発売中


山田井ユウキ

レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、連日30.000以上のPVを誇る