唐突に銀座の夜景撮影をすることに

レンジフィンダカメラがスナップ撮影に向いていると言っても、常に町中を徘徊するわけにも行かず、少しばかりストレスが溜まり始めています。そして、せっかく明るいレンズを購入したので、できれば夜景撮影をしてみたいと考えていましたが、友人の個展が行なわれていたこともあり、アップルストア銀座での月例セミナーの際に少し早く出かけて銀座界隈を撮影することにしました。

銀座にはカメラ店が多いので、それが出かける誘惑になっているかもしれません。学生の頃、銀座や新宿のカメラ店を徘徊していたことを思い出しました。で、肝心の夜景撮影ですがこれが意外と難しいのです。夕方から夜にかけての露出はめまぐるしく変わります。そして、意外と都会の表通りは夜といっても恐ろしく明るいんですよね。さらに、通行中の車に注意しつつ、人混みの中で安全な撮影位置を確保する必要があります。それから、撮るだけでなく不審者に間違われないように注意しなくてはいけません…。

(1)R-D1xGとフォクトレンダーのULTRON 28mm F2。そしてSUNPAK auto140。なお、このストロボはホットシューとの接点がないタイプで、本体に巻き込んである専用のシンクロコードをカメラ本体のシンクロ端子に繋げる必要があります。見た目があまり良くないので写真はコードを外して撮影していますが、実際には接続しないと撮影できません。ちなみにR-D1シリーズはホットシューにシンクロ用の接点がありますので、対応のストロボであればコードなしで同期させることができます。

ところで夜間と言えばストロボです。昔買い求めた小型のストロボを部屋の奥から発見しました。原則、R-D1xGでストロボを使うことは想定していませんが、この位のサイズ(写真1参照)なら持ち運びにも困らないですし、手持ちで発光部分を天井や壁などに向けることで簡易バウンス撮影も可能になります。そう考えるとちょっと嬉しくなってしまいます。最近はどんなカメラにもストロボが内蔵されているので、このような小型のストロボは希少ですので大事に使いたいと思っています。

RAW現像は最初に少々苦労したが

私はRAWデータの現像専用ソフトは使っておらず、Adobe Photoshopで処理しています。しかし、R-D1xG購入直後はPhotoshopがまだ対応しておらず、かなり焦りました。付属のEPSON Photolierは単独で動作するアプリケーションなのでPhotoshopを使わなくても現像はできるのですが、操作に慣れていなかったため、カメラのRAW設定は「RAW+JPEG」の同時書き込みにしていたにもかかわらず「海津式レンジファインダ術」の1回目は仕方なくJPEGの画像を使用しました。しかし、現在はアップデータでPhotoshopも対応しており、本来の環境で現像しています。

(2)EPSON Photolierでの現像処理画面。シンプルかつ直感的に使えます。RAW現像ソフトやPhotoshopなどを所有していない方には重宝すると思います。ちなみに私は、Adobe Bridgeで一覧表示させてから、めぼしい写真をPhotoshopにドラッグしていましたが、最近はEPSON Photolierでフォルダごとに指定して処理することもあります

(3)Adobe Photoshopでは、Camera Rawを使ってRAWデータの現像ができる。Photoshopの「開く」を実行して直接R-D1のファイルを読み込んだ状態

(4)Photoshopの「参照」を実行するとAdobe Bridgeが起動してフォルダ単位での読み込みが可能となる。こちらも基本的にはCamera Rawを利用している

ちなみに普段の仕事の流れもあって、たまたまRAW現像専用ソフトを使っていませんが、特に嫌いというわけではありません。そこで、私の周りではJPEGやTIFFデータを16ビットに拡張してRAWデータとして現像できる機能をいち早く搭載した市川ソフトラボラトリーの「SILKYPIX」を愛用している方が多いようなので、Mac版の「SILKYPIX Developer Studio 3.0」試用版をダウンロードして現在遊んでいます。

(5)市川ソフトラボラトリーのSILKYPIX Developer Studio 3.0(左)と水中撮影のデータを補正する機能を備えたSILKYPIX Marine Photography Pro 3.0(右)。Windows版はすでにSILKYPIX Developer Studio 4.0とSILKYPIX Developer Studio Proがリリースされているが、Mac版はまだ開発中

いままでRAW現像用ソフトは使用していませんでしたが、画像処理で「DxO FilmPack」というソフトを愛用しています。フランスのDxO Labs社が開発したPhotoshop用のプラグインで、日本ではソフトウェア・トゥーが販売しています。すでに入手困難なフィルムも含めて、さまざまな特性をシミュレーションするツールで、特別な宣伝をしていないのにヨーロッパーではかなり売れているそうです。

このツールの姉妹品としてリリースされている「DxO Optics Pro」もかなり気になっていますが、最新版でもR-D1のRAWデータには対応しておらず、JPEG画像での処理となってしまうのは残念なところです。まあ「DxO Optics Pro」は、カメラとレンズの情報を読み取って適切な処理を自動で行なうのが最大の「売り」ですから、R-D1のようにメタデータにレンズ情報が入らないカメラは対象外となっても仕方のないところです。ちなみにライカM8は6ビットコード付のMレンズなら情報を読み取れますが、やはり「DxO Optics Pro」のラインアップに加わっていません。

(6)ソフトウェア・トゥーが日本で販売しているフィルムのシミュレーションが可能な「DxO FilmPack」(左)とRAW現像ソフトの「DxO Optics Pro」(右)。残念ながら「DxO Optics Pro」はR-D1とM8には未対応

いよいよ夜間での撮影を開始

ということで夜景撮影です。今回は開放値が2.0と明るめのフォクトレンダーULTRON 28mm F2の真価が発揮されるというわけです。しかし、やはり当然というか、まだまだレンジファインダに慣れきっていない私はミスの連続。焦らずじっくりのはずが、ついつい焦って小走りに撮影することを繰り返してしまいました。

ところで、注意していても画面に人が入ってしまうことがあります。特にシャッターを切った瞬間に、前方の横道から人が飛び出してこちらに向かってくるといった場合は、かなり困ってしまいます。このような時は慌てずカメラを構えてそのままの姿勢を貫き、こちらに向かってくる人がある程度近寄ってきたところで、一端ファインダから目を離し、もう一度カメラを構えることで「あなたを撮しているわけではない」という状況を作り出すことができます。焦ってそそくさとその場を立ち去ったほうが絶対に怪しいですからね。

(7)都営浅草線西馬込駅での車内。瞬間的に車内に誰もいない状況となったときに撮影。この静けさはなんとなく不気味でした。ULTRON 28mmはディストーションを気にしなくていいので、このようなシーンでの構図決定は逆に慎重に決める必要があります。(ULTRON 28mm F2)

(8)まだ夕方の微妙な時間帯。AEロックで空の影響を受けないようにして撮影。ただし、デリケートなシーンなので撮影結果を液晶画面で正確に確認するのはちょっと難しいですね。とにかく理屈抜きでいろいろと撮影を繰り返すことが一番大切なことです。そうしないと慣れることができません(撮影ULTRON 28mm F2)

(9)当日開催していた友人の個展会場でのワンショット。F2.0でISO1600にしても手持ち撮影ではギリギリといったところで粒子も荒れていますが、フィルム撮影時代には現像処理で6400増感といった過激なことをやっていましたので、この程度の荒れはメチャメチャ綺麗な世界だと感じています(撮影ULTRON 28mm F2)

(10)22時頃の銀座某所。夜景撮影は十分に下見をしないとうまくいかないことを痛感。しかし、学生の頃に夜景をかなり拘って撮影していたことを思い出し、当時よく撮影していた街に出かけてみたくなりました。当時と同じ位置での撮影が可能なら少し面白いことになりそうですね(撮影ULTRON 28mm F2)

(11)22時頃の銀座某所。(10)の手前にあった閉鎖された駐車場が、あたかもステージのように見えたので思わずシャッターを切りました。できれば人が立っていると最高なのですが、それはまた別の機会にチャレンジしてみたいと思います(どう見ても立ち入り禁止のようですし)。このようなシーンは、多少の演出があると面白い作品になります。もちろん、やり過ぎは逆効果ですけど(撮影ULTRON 28mm F2)

R-D1シリーズはデジタルカメラですが、昔のレンジファインダカメラを使う気持ちで接することが大切だと思います。焦らずじっくりと構図を決めてシャッターを切るといった具合に。そんな私も、まだまだせっかちに撮影してしまっているので注意しなくてはなりません。夜景は大都会よりも中規模の町や農村など方がシンプルで綺麗なシーンを撮影することができます。そのうち事前調査して撮影徘徊をしてみたいと考えていますが、その際は可能な限り2名以上で行動したほうがいいでしょう。不審者と間違えられると大変ですからね。特に見知らぬ町での撮影には注意しましょう。実は学生の頃、町中を無造作に撮影していたら、警察官に職務質問されたことがありました。その時のカメラが最初に紹介したOLYMPUS-AUTOだったのです。

特に断りがない限り作例はすべてノートリミングでノーレタッチです。また、撮影に際し最高画質のRAWとJPEGの同時書き込み設定とし、Photoshop CS4でRAW現像を行っています。

失敗談
夜景撮影は今までコンパクトデジタルカメラに任せっきり。その自動感度調整に慣れてしまっていたので、ついつい感度調整を行うのを忘れてブレ写真を量産してしまいました。もっともブレ写真はピントずれの写真と一緒で、それなりに面白かったりします。これらについては別の機会にまとめて紹介するつもりです。さて、レンジファインダに少しずつ慣れてくるとやりたいことがいろいろと出て来ます。忘れていた写真の楽しさが舞い戻ってきたような感じです。R-D1シリーズはクリエーターを刺激する不思議なカメラです。