色気をふりまくオネェさんで購買意欲をそそるパッケージ

男性にとって嬉しくてたまらないゾンビ映画——それはエロ要素を加味して更なる娯楽性を追求した作風であることに間違いない。そういった観点から言えば、ストリッパーがゾンビになれば完璧だなわけだが、劇場公開された『ゾンビ・ストリッパーズ』(08)と未公開作品『SVZ ストリッパーVS.ゾンビ』(07)などが既に存在する。そして、新たに『ストリッパー・ゾンビランド』という作品が世に送り出された。こちらは、ストリッパーがゾンビになるという既に出し尽くされたネタに加え、日本でも劇場公開されて話題になった『ゾンビランド』(09)のパロディ&オマージュが取り入れられているのが見どころである。

謎のウィルスが蔓延し、アメリカの大半以上の女性がストリッパーゾンビと化してしまった。生き残ったオタク青年アイダホ(ベン・シェパード)は、20のルールから成るオリジナルのストリッパー対策マニュアルを駆使して危機をかいくぐっている。そんな彼がゾンビハンターのフリスコ(ジャミソン・シャリーン)、ヴァージニア(マーレン・マクガイア)&ウェスト(イレアナ・へリン)姉妹に出会い、4人でストリッパーゾンビの脅威から逃れながらアイダホの祖母が住むオレゴンのポートランドを目指して大陸横断の旅に出る……というお話。

上段左から、ヴァージニア(マーレン・マクガイア)、アイダホ(ベン・シェパード)、下段左からウェスト(イレアナ・へリン)、フリスコ(ジャミソン・シャリーン)

ストーリー設定は、『ゾンビランド』を下敷きにアレンジが加えられている。『ゾンビランド』を観た方は類似性をはじめ、パロディーを存分に楽しんでいただきたい。くれぐれも、面白さや出来栄えを比較して「『ゾンビランド』の方が面白い!」とか言わないように……。

ストリッパーを扱っているため、ついついセクシー描写やエロス要素を期待したくなるが、女性の裸体やストリッパーが披露するセクシーなポールダンスなどはあまり味わえない。裸体をさらけ出したストリッパーゾンビは当然出てくるが、なんといってもゾンビであるため、まず美女ではない。さらに動作が気持ち悪い。ゆえにセクシーやエロスを味わえる余裕はない。本作を鑑賞するにあたって、そちら方面が目的だと間違いなく肩透かしを喰らわされるだろう。

しかしゾンビ映画ならではの残酷描写やグロテスクなシーンは結構気合が入っており、観る者をとことん圧倒させるような印象深いシーンが用意されている。この点に関しては高く評価したい。噛み付かれた首筋が痛々しくえぐれるというオーソドックスなシーンに始まり、ゾンビストリッパーがストリップ劇場の男性客のイチモツに噛み付いて血まみれにし、さらに数名のゾンビが1人の男性に寄ってタカって腹部に噛み付いて腸を引っ張り出すという具合にグロテスク描写は次第にエスカレートしていく。

お客の腸をすすり喰らうストリッパーゾンビ

メインキャラクターであるアイダホ、フリスコ、ヴァージニア、ウェストの中でも、フリスコとウェストがゾンビ撃退の実践隊員的存在。フリスコがチェーンソーでゾンビの頭部や手首、腕をすっ飛ばし、その返り血をこれでもかと浴びながら敵を殲滅。ウェストは少女時代に習得した格闘センスを発揮させ、両手に鉈を持って二刀流でゾンビの群れをメッタ斬りにする。2人が繰り広げるバイオレンス&スラッシャー描写は大変テンポがよく、吹き荒れる血飛沫とポンポンと吹っ飛ぶ手首や頭部がまるで花火のごとく、大いに盛り上がる最高の見せ場である。

ゾンビによる襲撃シーン、撃退シーン以外にも、ゾンビを調教しているマッドサイエンティストや、中途半端な女装姿がインパクトを与える落ちぶれたアクションスターといったゾンビ以外の印象的なキャラクターを用意したことによって面白味が増しているので、注目してほしい。

内容や設定からしてB級映画であることは丸分りだが、脇を固めるキャストが更なるB級度合を高めている。まずは、ボールドウィン兄弟の次男坊であるダニエル・ボールドウィンがラッパーのダブルDに扮し、彼が歌うラップで、ストリッパーゾンビがダンスを踊る。続いて、『悪魔の毒々~』シリーズや『カブキマン』(90)でお馴染みのB級映画専門会社トロマ・エンターテインメントの社長ロイド・カウフマンが主人公アイダホの父親に扮し、ストリッパーゾンビに噛まれて瀕死の重傷を負いながらも息子に対する愛情を語って死んでいくという名演技を披露。終盤では、80年代にB級ホラー映画を中心に活躍したリネア・クイグリー扮するヴァージニア&ウェスト姉妹の祖母がマシンガンをブッ放してゾンビを退治する。メインキャラクターが知名度の低い若手役者ということで弱い顔ぶれという印象を与えるが、4人よりも比較的名が知られているマニアック系ベテラン役者の起用がB級映画ファンをくすぐらせ、興味を抱かせるのである。

ゾンビが色気を振りまきながら襲い来る。写真で観ると意外とキレイな美女軍団っぽい

ちなみに、本作はアメリカでも劇場未公開のVシネマであるが、我が国ではイベント上映という形式でたったの1日だけではあるが、劇場でお目にかかれるのだ。9月18日、ヒューマントラスト渋谷にて夜9時、本作をスクリーンで鑑賞できるたった1度だけのチャンスだ!TV画面で観るよりも、映画館の大画面で観る方が面白さを存分に満喫できるぞ!

『ストリッパー・ゾンビランド』作品概要

2011年アメリカ映画

  • 出演:ベン・シェパード、ジャミソン・シャリーン、マーレン・マクガイア、イレアナ・へリン、ダニエル・ボールドウィン、ロイド・カウフマン、リネア・クイグリー、ボイド・バンクス
  • 監督:ショーン・スケルディング
  • 上映時間:103分
  • DVD発売日:2012/09/07
  • 発売:オデッサ・エンタテインメント
  • 価格:3,990円