ソニーから登場した新リニアPCMレコーダ「PCM-D50」。前回の外観チェックに引き続き、今回は実際の録音操作、またPCM-D50で新たに搭載された便利機能などをチェックしてみよう。

実用性の高いレベルメータ&ピークレベルランプ

PCM-D50のレコーディング手順をチェックしていこう。PCM-D50だけでなくすべてのレコーディング機材に共通だが、最初に行うべきことは録音レベルの調整だ。これを的確に行わなければ、すべての音が小さすぎる、また逆に入力レベルオーバーで音が歪みまくる、ということになってしまう。

録音操作は非常にわかりやすく、「RECボタン」を押すと録音待機となり、この状態で「PLAY/ENTERボタン」か「PAUSEボタン」を押すことで実際の録音がスタートする。つまり録音待機の状態で「REC LEVELダイヤル」を回して録音レベルを調整し、その後、実際の録音をスタートすればよいわけだ。

RECボタンを押して録音待機、この状態ではRECボタンが点灯、PAUSEボタンが点滅して状態を表示。録音中はRECボタンのみが点灯する。もちろんディスプレイでも確認は可能だが、ボタンのインジケータは一目で視認しやすい。また再生時などもボタンのインジケータが点灯する

録音レベルの調整は入力レベルメータやピークレベルランプで確認できる。入力レベルメータはディスプレイの上半分に左右チャンネル別でバーグラフ状に表示され、最大レベルを一定時間ホールド表示するピークホールド機能も備わる。また数値でのリアルタイム表示も可能で、小型録音機器としてはかなり充実しているといえるだろう。加えてディスプレイの上部には-12~-1dBで緑、-1dBオーバーで赤く点灯するピークレベルランプが左右チャンネル別に用意されている。なおRECLEVELダイヤルはサイズが大きく、また回すときもある程度の重みがあるため操作感は良好。ただしそのサイズゆえ、録音中にちょっと触れてレベルが代わってしまった、ということがないように注意したい。もっともダイヤルが回るほど勢いよく触れてしまうと、どちらにせよ、そのノイズが録音されてしまうのだが…。

ディスプレイの上半分は入力レベルメータ、下半分は録音/再生時間やファイル名、フォルダ、録音設定などを表示。なおLIGHTボタンでバックライトの点灯/消灯の切り替えも可能、わずかな光も気になるシチュエーションでも安心だ

左右チャンネル別で用意されるピークレベルランプ、画像ではわかりづらいが、ここではL/Rとも-12dB/OVERランプの両方が点灯した状態。実際にはかなり目立つので、見落とすことはないだろう。なおピークレベルランプの点灯さえ気になるシチュエーションでは、設定で非点灯にすることもできる

録音レベル調整、また録音中はヘッドフォンを接続することでヘッドフォンモニターも可能。なお室内でテスト録音を行っていて気づいたが、PCM-D50はかなりマイクの感度がよいようで、エアコンの風がかすかに当たるだけでも「ボワッ」といった音が入ると共に、比較的すぐにレベルオーバーしてしまう。スタジオレコーディングではマイクに直接風が当たらないように空調機器も工夫されているが、自宅内で使う場合もそれなりに気を使う必要がありそうだ。

風切り音など低い周波数の音を減衰させるローカットフィルタスイッチは背面に用意、設定で有効範囲を75/150Hz以下と切り替えることも可能

このようなシチュエーションでは、背面に用意されているローカットフィルタスイッチをオンにすることで、その影響をある程度低減できる。スタジオ内など理想的な環境以外、特に屋外での録音にはローカットフィルタはほぼ必須かもしれない。いずれにせよ直接耳で聴くよりも、ヘッドフォンを通してモニターしたほうがマイクの拾っている音を確実に確認できるため、録音レベル調整時はヘッドフォンでモニターしたほうが無難だ。

とっさの時にも録り逃さないプリレコーディング機能も搭載

録音モードなど日常的に触らないような設定は「フォルダ/MENUボタン」を長押しして開くメニュー画面から設定する。録音モードはWAV(リニアPCM)のみで44.1/48/96kHzは16/24bit、22.05kHzは16bitとなる。なおPCM-D50ではMP3ファイルの再生も可能となっているが、PCM-D50でのMP3録音には対応していない。

録音モードを始めとしてローカットフィルタやリミッタの設定、また外部マイクのプラグインパワー供給設定などはメニュー画面から行う

24bit/96kHzを始めとしてサンプリングビット数、サンプリングレートの組み合わせを設定するREC MODE

このメニュー画面では兄貴分のPCMレコーダ「PCM-D1」では装備されていなかった機能にもアクセスできる。それがプリレコーディング機能だ。これはオンにすると、録音待機中は常に5秒分の音をメモリに記録し続け、実際に録音をスタートしたときにはその5秒前の音から録音できているという機能。スタジオ録音ならば頭が欠けるということを防ぎ、また生録ではとっさの時に録音できなかった、ということにもならない便利機能だ。

ボタンを押して録音をスタートするよりも常に5秒前から音を録り続けるプリレコーディング機能も、メニュー画面からオン/オフを切り替える

プリレコーディングが有効の場合、録音待機時には5秒分のメモリが視覚的に表示され、録音をスタートするとカウンターも5秒の地点から始まる

次はSBM機能だ。これはPCM-D1にも搭載されていたものだが、SBMとはSuper Bit Mappingの略で、ソニーのディザー機能の名称。ディザー機能とは24bitでレコーディングしたデータから16bitのCDを作成するときなど、つまりサンプリングビット数を変換する際に高音質化する技術だ。PCM-D50ではこのSBMを有効にするとリアルタイムにSBMを働かせ、高音質に16bitでのレコーディングが可能になる。そのため24bitでの録音時には機能しないが、聴感的には16bitで20bit相当の音質になるという。

なお「フォルダ/MENUボタン」を普通に押した場合はフォルダ画面が開き、フォルダの選択が可能となる。フォルダは10個で固定、またフォルダ名の変更はできないが、ある程度の整理はできるので、録音したらこまめにパソコンに転送という使い方ならば困らないはずだ。次回は屋外にPCM-D50を持ち出し、実際に録音してみることにしよう。