AUDIO KONTROL 1にバンドルされているソフトウェア、最後に紹介するのはパソコンでさまざまな曲を繋いでいき、DJプレイが楽しめるTRAKTOR 3 LEだ。一般的なオーディオインタフェースにはあまりバンドルされない種類のソフトだが、これがなかなか面白い。

パソコンベースのDJシステム、TRAKTOR 3 LE

さまざまな曲を切れ目なく繋いでいく、つまりミックスしていくDJプレイ。オリジナル曲作りという意味での音楽制作とはちょっと違うが、自分でプレイして楽しむことに変わりはない。クラブに通うようなダンスミュージック好きの人になら、ちょっとやってみたいと感じている人も多いのではないだろうか。

DJ機材をハードウェアとして揃える場合、クロスフェーダーを備えたDJミキサーと、曲を掛けるために2台のターンテーブル、またはDJ用CDプレイヤーが必要だ。もちろん機材のグレードにもよるが金銭的にもそれなりの覚悟が必要で、また設置場所などから手を出しかねている人もいるかもしれない。

AUDIO KONTROL 1にバンドルされている最後のソフトウェア、TRAKTOR 3 LEはパソコンとAUDIO KONTROL 1を組み合わせることで、誰でもすぐにDJプレイが楽しめるソフトウェアだ。Native InstrumentsのTRAKTORシリーズはDJソフトとして定番であり、現在の最新版はTRAKTOR 3となっているが、その機能が一部省略された入門バージョンといえる位置付けである。

多彩な音楽ファイルを読み込める2台のデッキが搭載されるDJソフト、TRAKTOR 3 LE。ミックスで使う曲はプレイリストとして保存しておき、画面下側のブラウザからすぐにデッキに読み込むことができる

TRAKTOR 3 LEには2台のデッキ(プレイヤー)が用意されている。このデッキにはWAV、AIFF、MP3、AAC、WMAなどさまざまな形式の音楽ファイルを読み込むことができ、中央に用意されたDJミキサーを使ってミックスすることができる。ハードディスク上に保存してある音楽ファイルを使えるのはもちろんだが、膨大なライブラリから検索やプレイリストを使い、スムーズに流したい曲を読み込めるのは、パソコンベースならではである。

DJプレイが初心者でも楽しめ、特有の機能も再現

DJプレイはただ単にミキサーで2つの音楽をミックスするだけではない。それぞれの曲は当然テンポが異なっているし、単純に混ぜただけではビートにズレが生じるからだ。このためターンテーブルを使ってのDJプレイでは、まず今流している曲と次に流す曲のバスドラのタイミングを合わせてモニターし、テンポが違うようならテンポも変更する。きれいにバスドラが合ったところで、曲の進行に合わせてクロスフェーダーで曲を繋げるのだが、この一連の作業はある程度の練習が必要だ。

TRAKTOR 3 LEでも作業としてはターンテーブルを使ってのDJプレイと違いはないのだが、2曲のビートとテンポをワンタッチで合わせるSyncボタンが用意されている。このため、とりあえず好きな曲をそれぞれのデッキに読み込んで流していくだけでもきれいなミックスができてしまう。

それぞれのデッキではビートのズレが視覚的に確認できる、本来は手動でテンポを変更してビートを合わせるが、Syncボタンをクリックすればテンポ変更とビート合わせがワンタッチで実行される

もちろんAUDIO KONTROL 1のノブとボタンでTRAKTOR 3 LEをコントロールすることもでき、たとえばクロスフェーダーを動かして曲を繋ぐには、中ボタンを押しながらノブを回せばよい。慣れてきたら左右ボタン+ノブで左右デッキのテンポを手動調整したり、左+中ボタンを押してミキサーに組み込まれたエフェクトをオンにしてサウンドを変えることもできる。エフェクトはフランジャーやリバーブ、ディレイ、フィルタといったDJミキサーで定番的なエフェクトを搭載している。またHigh/Mid/Lowの3バンドEQも搭載、低音をカットするLowKillスイッチもDJミキサー特有の装備だ。

AUDIO KONTROL 1にはTRAKTOR 3 LE用のプリセットが用意され、クロスフェーダーや左右デッキのピッチ調整、マスターボリュームのコントロールなどが割り当てられている

ミキサーにはエフェクトも内蔵。また曲を混ぜるにはEQでの音作りも必要になるが、左右チャンネルに3バンドEQとLowKillスイッチが用意される。Cueスイッチは次に流す曲をモニターするためのもので、このボタンをクリックするとモニタリングアウトへとルーティングされ、ヘッドフォンで確認できる

なおDJに欠かせないのが、現在流している曲(マスター)ではなく、次に流す曲(キュー)をヘッドフォンでモニターすること。2つの曲のテンポとビートを合わせるために絶対に必要になる機能だが、TRAKTOR 3 LEはマスターとモニターの出力系統を変えることができ、ミキサーのCueスイッチでモニターへの出力をワンタッチで選択できる。またAUDIO KONTROL 1はスイッチひとつでヘッドフォンモニターを1/2chおよび3/4chで変更できるようになっているため、DJミキサーがなくてもAUDIO KONTROL 1だけでパソコンベースのDJシステムが完成するようになっている。

TRAKTOR 3 LEの設定画面ではマスター出力とモニター出力を独立して設定可能。マスターをAUDIO KONTROL 1の1/2ch、モニターを3/4chに設定し、Cueスイッチを使うことでスピーカーから流れているマスター出力とは別に、次に流すモニター出力の曲をヘッドフォンでモニターできる。またマスターとモニターを任意の割合でミックスしてヘッドフォンモニターすることも可能だ

なおTRAKTOR 3 LEは初めてDJプレイに挑戦する人にとってはほとんど機能的な不満は出ないレベルだが、そのDJプレイの音をそのまま録音して残すといった機能は用意されていない。これはちょっと残念なところだ。ただし上位版のTRAKTOR 3にはこの機能が用意され、またデッキが4台に増えることを筆頭にさまざまな機能強化が施される。TRAKTOR 3 LEユーザーは特別価格でアップグレードすることができるので、物足りなさを感じるようになったらアップグレードを検討してもよいだろう。

AUDIO KONTROL 1は実売価格約4万円と、単純に2in4outのオーディオインタフェースとして見れば決して最安値の製品ではない。しかしノブとボタンによる直感的なコントロール、そして個性的なバンドルソフトは使ってみるとなかなか面白い。バンドルソフトに注目してオーディオインタフェースを選ぶならば、こういった製品を選んでみるとまた違った音楽の面白さに気づくかもしれない。