家電製品を日常的な使用シーンで工具が必要になることはめったにないが、機器の設置の際や、消耗品の交換を行う場合などには、ある程度の工具の使用が必要となる。家庭で日常的に使用する工具について、その選び方や使い方のポイントをまとめていきたい。

PCなどではローレットタイプのネジが使われるケースが増えているが、それでもドライバーの必要性がなくなったわけではない

そんなわけで、1回目はドライバーだ。最近では手で回すことも可能なローレットタイプのネジが使用されるケースも増えてきているが、やはり普通に手で回したのではトルクがかからないし、ネジが何本もある場合にはやはりドライバーを使ったほうが楽だ。

ドライバーは、使用するネジの形状に合わせて用意する必要がある。家庭内で使用されているネジの多くはプラスとマイナスの2種類だ。なかでもプラスが圧倒的に多く、マイナスは、最近ではあまり見かけない。使用する機会は、古い電源コンセントを分解するときぐらいではないだろうか。プラスのネジにも多くのサイズがあるのだが、最もポピュラーなのは2番のものだ。よほど小さいものでない限り、家電製品やPC周りの作業は、これ1本で大丈夫だろう。

写真のドライバーは、筆者が使用しているKTCの製品。プラスでサイズは2番だ。現行品の1世代前のモデルなのだが、実用上何の問題もない。グリップはソフトな樹脂でできており、先端には焼きが入れられている

工具のなかでは、最も身近な存在であるドライバーだが、皆さんはどのようなタイプのものを使用しているだろうか。100円均一ショップやホームセンターで安価に販売されているドライバーセットを使っているといった人もいるだろうが、実際のところ、それでも十分に用が足りる。

精度の低いドライバーでネジを締めた場合、ネジの頭をなめてしまう可能性もあるのだが、そこまで精度の低い工具は、100円均一ショップでもさすがに販売されてはいないだろう。低価格なものでも、それが原因で問題が発生するという確率はそれほど高くはない。消耗品交換の場合、例えば電池ボックスの蓋のネジを締めるのに、ネジの頭をなめるほどの大きなトルクは必要とはされていない。

グレードの高いドライバーは精度が高く、堅牢で、グリップ部分も力を入れやすいものが多い。低価格案製品との最も大きな違いは堅牢性、つまり耐久性だろう。低価格なドライバーでは、もとの精度にそれほど違いがなくても、使用しているうちにすり減って行き、ネジの頭をなめやすくなるという傾向がある。

家電製品周りの日常的な使用で、低価格なドライバーを使用することで問題が起こ得るとすれば、機器の設置時に何らかの組み立てが必要なケースだ。例えば、薄型テレビでは、本体と卓上スタンドが別々になっており、ユーザーが自分でそれを組み立てなければならないケースがある。そこにはある程度のトルクが必要なため、精度が低い、あるいは低くなったドライバーで組み立てを行う場合には細心の注意が必要だ。

低価格をウリにする某チェーン店で購入した4本セットのドライバー。1本25円という低価格だが、使用頻度が低いものはこれでも十分

セットのドライバーには、明らかに使用頻度の低いものも含まれている。写真のセットは低価格をウリにする某チェーン店で販売されていたものだが、4本セットのうち、2本はマイナスドライバーだ。また、プラスドライバーは1番のものと2番のものがセットになっているが、最も使用頻度が高いのは先に書いたとおりに2番のものだ。プラスの2番だけは、普通のクラスのドライバーを用意しておき、使用頻度が低いものは耐久性の面での問題が出にくいので、低価格なセットで済ますというのも一つの方法だ。

さて、ドライバーでは、先端のサイズ別以外にも揃えておきたいものがある。先ほどの写真のKTCのドライバーは、約20cm程の長さなのだが、これだと、長すぎて必要な場所に入らないというケースが意外と多い。そのため、狭い場所の作業用に、全長の短いドライバーがあると便利だ。

ショートタイプのドライバーでないと入らない場所もある

上の写真のようなドライバーは、通常の場所で使用した場合、普通のドライバーに比べると使いにくいのだが、狭い場所のネジを締めたり緩めたりするのには、なくてはならないものだ。

というわけで、ドライバーはプラスの2番、その次にプラスの1番、あとはプラスの2番のショートタイプがあれば十分だ。それに加えて、マイナスの6mmもあれば万全だろう。

さて、これら4本のドライバーを、いつも使える場所に置いてみた。けっこう邪魔だ。それらのうち、ショートタイプのものを除いたものをまとめてしまえるのが、差し替えタイプのドライバー。軸全体を差し替えるタイプと先端のみを差し替えるタイプがあるのだが、先端のみを差し替えるタイプが圧倒的に省スペースだ。なかでも、ラチェット機構が入ったものは、作業効率も大幅にアップする。

差し替え式のドライバー。ラチェット機構が搭載されており、作業効率が非常に高い。ビットを本体内に収用できる点も便利だ