ソニーの大容量蓄電池「CP-S300」のレビューの後半をお届けしたい。前回は、充電についてチェックを行ったが、今回は出力について測定してみる。

ホームエネルギーサーバー「CP-S300」

CP-S300のバッテリー容量は300Whだ。しかし、300Whの電力をそのまま使用できるというわけではない。内蔵バッテリーから取り出せる電気はもちろん直流だが、CP-S300から出力されるのはAC 100Vだ。バッテリーと出力の間には、直流を交流に変換するDC-ACインバーターが入れられている(もちろん、保護回路なども入れられている)。

測定には、充電時と同様にワットチェッカーを使用している。CP-S300のACコンセントにワットチェッカーを接続して、ワットチェッカーのACコンセントには電気製品(今回使用したのは扇風機)を接続している。この状態で扇風機のスイッチをオン。CP-S300からの電力供給がストップするまで動作させ、そこまでの電力ををワットチェッカーで測定するというものだ。

ワットチェッカーを接続して測定をスタート

一見完璧そうに見えるこの手順。実は、大きな落とし穴があった。CP-S300からの電力供給が止まって接続していた扇風機がストップした時点で、ワットチェッカーを見てみると、ディスプレイには何も表示されていない。当然といえば当然なのだが、このように接続した場合、ワットチェッカーもCP-S300からの電力で動作している。CP-S300からの電気が止まれば、ワットチェッカーもオフになるというわけだ。ガッデム! 十数時間がムダになってしまった。

電池残量がなくなり、電源供給がストップ

ワットチェッカーまでオフになり唖然とする

気を取り直して再チャレンジだ。対策としては、CP-S300の天面にあるインジケーターの表示に注意して、バッテリー容量の残りがわずかになったら、そこからは、ワットチェッカーのディスプレイを頻繁に確認するというものだ。多少の誤差は発生するが、目安ぐらいにはなるだろう。

天面パネルに配置されているインジケーターで、大まかな電池残量がわかる

さて、このようにして測定を行った結果、CP-S300からの電力供給がストップする直前で、ワットチェッカーの値は200Whとなっていた。同じ手順で2度測定したのだが、やはり200Whとなっていた。これはちょっと少ないような気がする。

DC-ACインバーターのスペックには、効率という項目が記されている。入力した直流の電力を何%交流として取り出せるのかを示す値だ。メーカーの発表値では、この値はが80~95%程度になっているケースが多い。もちろん、これはメーカー公表値で、実際の効率がどうなのかをこれだけで判断することができない。それでも、300Whの直流から200Whの交流では、66.7%でしかない。250Wh前後の電力が取り出せてもよさそうな物なのだが。

原因として考えられるのは、筆者がお借りしているCP-S300の内蔵バッテリーが劣化している、あるいはワットチェッカーの故障といったところだろうか。

というわけで、別のCP-S300をソニーからお借りすることにした。届いたCP-S300のバッテリーを空にしてからフル充電し、前回同様に接続して測定をスタートする。すると、その結果は、やはり200Whだ。今回も2度測定を行っており、そのどちらも200Whだったので、この測定結果は尊重しようと思う。

さて、暗礁に乗り上げたような形になってしまったので、何かヒントになるようなものはないかと、同社のWebサイトのCP-S300のページを見ていると、気になる記述が見つかった。CP-S300の前面に書かれている、主な使用機器と電力供給時間の拡大図だ。

Webサイトを見なくても、本体表面に書かれていた……

ここには、消費電力10Wのラジオだと約25時間、消費電力5Wの携帯電話/スマートフォンの充電の場合はは約50時間といったように、使用できる機器と、その電力供給時間が書かれている(消費電力が10Wというのはラジオとしては相当に大きいと思うのだが……)。10W×25時間は250Whで、3W×50時間も250Whだ。

しかしよく見てみると、この中に250Whとは離れた電力供給量を示しているものがある。それが、ノートPCと液晶テレビ、プラズマテレビだ。ノートPCの場合、消費電力50~150Wで電力供給時間が約1.5~5時間となっている。消費電力が50Wの場合は5時間で250Whになるが、150Wの場合は1.5時間では225Wにしかならない。液晶テレビの場合は、消費電力が100~200Wで、電力供給時間が約1~2.5時間となっている。消費電力が100Wの場合は2.5時間で250Whだが、200Wの場合、約1時間では200Whにしかならない。プラズマテレビでは、消費電力が150Wから300Wで、電力供給時間が約0.5~1.5時間だ。この場合、150Wh~225Whということになる。

ここからは完全に仮説なのだが、供給できる電力が250Whになっている機器の多くは、消費電力が一定、あるは変動が少ない機器だ。それに対してノートPCは、行っている処理によって消費電力は変わってくるし、テレビも消費電力の変動が大きい機器だ。このことが結果に影響を与えているのではないだろうか。実は、筆者が測定に使用した扇風機は、シャープの製品で、「1/fリズム」機能というものが搭載されている。これは1/fの周期で風の強さを変動させるものだ。"風力1"で1/fリズムをオンにした場合、消費電力は0W~30Wで、常に変動を続けることになる。つまり、意図したわけではないが、相当にCP-S300にとっては悪い条件で測定を行っていたのではということだ。

さて、上の仮説が正しいのかどうかを調べるのには、同じ扇風機で「1/fリズム」機能をオフにした状態で、再測定を行う必要があるだろう。しかし、ここまでに既に70時間以上も測定に費やしていることになる。とりあえず、今回はここまでの状況で、仮の結論としたい。

さて、このような能力を持ったCP-S300だが、実用性はどうだろうか。動作対象にラジオや携帯電話、スマートフォンの充電なども含まれているが、これらははっきり言って、もっと小型の充電池の担当すべき領分だと思う。Ni-MH(ニッケル水素)バッテリーの普及が進んでおり、それらを利用すればもっと手軽な環境を整えることができる。

CP-S300が威力を発揮するのは、それよりも消費電力の大きな機器を動かす際だろう。ちなみに、CP-S300が搭載しているDC-ACインバーターの最大出力は300W。つまり最大で消費電力300Wまでの電気製品を使用することができる。消費電力が10~300Wの電気製品が、そのカバーするエリアということになるだろう。電源投入時の突入電流の問題があるため、消費電力が300Wギリギリの製品は動作に不安があるが、家庭で日常的に使用している電気製品で、このエリアに入るものはかなりある。停電時でも、照明器具やPCなどを動かすことができるという点は、かなり安心感があるといえるだろう。