趣味ベースの家電の話をしたいと思う。本コラムでも、ときおりそういったスタンスでの話をしているが、今回はまったくもって実用性のかけらもない話だ。家電の楽しみ方の一つだと思ってもらえれば幸いだ。

家電製品の多くは、「複数の英数字」+「-(ハイフン)」+「複数の英数字」という形式の製品名を持っている。いわゆる「型番」だ。もっと人間に理解しやすいような名前、例えば「レグザ」とか「風神」といったものは、シリーズ名やブランド名、愛称という位置付けとされている。

運転時にコンプレッサーから発生する熱を暖房に使用する「エネチャージシステム」など、毎年進歩を続ける、パナソニックの全部入りエアコン「Xシリーズ」。「CS-X402C2」は、冷房能力が4.0kW、電源が単相200Vのモデルだ

製品名に漢数字が使われているケースには、筆者は遭遇したことがない。現在、「CS-X402C2」という型番の製品はあっても、「CS-X四百二C二」などという製品はないし、もちろん「CS-X肆佰弐C弐」などという製品も存在しない。

後者が存在しないのは、単純にそんな表記はめんどうだからだろうと思われる。では、なぜ前者が存在しないのだろうか。筆者は以前、これをOCR伝票のせいではないかと思っていた。POSが普及する前、家電量販店では手書きの伝票が使用されており、なかでもOCR伝票が用いられるケースがよく見受けられた。現在のOCR伝票がどうなっているのかは知らないが、当時はアルファベットとアラビア数字のみしか使用できなかった。英数字を組み合わせた製品名は、このせいではないかと思っていたのである。しかし、これは明らかな間違いだ。その後、昔の家電製品をいくつか集めるようになってみると、それらもやはり、英数字の組み合わせの製品名となっていた。

調べてみたところ、戦時中の製品を除くと、基本的にこのような形式の製品名になっているようだ。

これは筆者の推測なのだが、家電製品は国内だけではなく、海外にも輸出されており、漢字圏を除く海外では漢数字の型番は通用しない(読める人が少ない)という事情もあったのではないだろうか。

さて、ここからが本題だ。家電製品の製品名をよく見てみると、そこには一定の法則が存在しているように見える。先ほど例としてあげた「CS-X402C2」は、パナソニックのエアコンの製品名だ。製品名を見るだけで、2012年モデルであること、同社の家庭用ルームエアコンのフラッグシップであるXシリーズの製品であること、住宅設備用ではなく普通に家電ルートで販売される製品であること、冷房能力が4.0kWであること、電源が単相200Vであることなどが分かる。

なぜ分かるのかをかいつまんで説明すると、まず製品名の前半が「CS-X」となっていることから、家電ルート向けのXシリーズであることがわかる。同社のエアコンには、家電ルート向けと住宅設備用とがあり、家電ルート向けは「CS-X402C」のようにシリーズ名(この場合「X」)が前に来る製品名になるのに対して、住宅設備向けでは「CS-402CX」のように、シリーズ名が後ろに来る製品名になる。

次の「40」は冷房能力で、「4.0kW」を表している。14畳程度の広さに対応するエアコンだ。その次の「2」はおそらく2012年を表している。2011年モデルではこの部分が「1」となっていたし、2010年度モデルでは「0」となっていたからだ。

その次に現われる「C」だが、これは筆者には確かなことは分からない。年によって違うようでもあり、同じ文字が何年か継続して使用されていることもある。使用している冷媒の違いではないかという気はするのだが、はっきりしたことは何とも言えない。

最後の「2」は、単相200Vを表している。単相100V仕様のモデルでは、ここは「1」ではなく、なにも存在しない。例えば、家庭用Xシリーズで冷房能力が4.0kW、電源が単相100Vならば、「CS-X402C」になる。

ところが、こういった法則に当てはまらない製品も存在している。例えば、Xシリーズの冷房能力が4.0kW、電源が単相200Vの製品には、CS-X402C2以外に、「CS-402CXR2」というモデルが存在している。このCS-402CXR2という製品名は、上記の規則からすると、明らかにイレギュラーだ。

使用している部品が変更された場合、別の製品名で販売するというケースは少なくない。自社でパネルを生産していないメーカーの液晶テレビではよく見られる。そのような場合、それまでの規則からは外れた製品名が付けられるケースがある。しかし、そのようなケースでは、元のモデルは在庫限りとなってしまうのが一般的だ。それに対して、CS-X402C2とCS-402CXR2は、どちらも現行製品だ。

パナソニックサイトでの「長持ち室外機」の説明図

パナソニックのWebサイトで製品の詳細スペックを見てみると、2モデルの違いは、CS-X402C2にのみ「長持ち室外機」という記載がある点だけだ。長持ち室外機というのは、外装や電装部などに錆や腐食などから守るためのコーティングが施されたものだ。しかし、これだけでは2種類のモデルをラインナップしている理由としては弱いような気がする。

ここで、趣味として語るうえでは反則気味の手段なのだが、同社の広報の方に問い合わせてみた(余計なことに手を患わせて、本当に申しわけない)。すると、意外な答えが返ってきた。CS-402CXR2は量販店専用のモデルだというのだ。

どうだろうか。製品名から、さまざまなことが見えてくるということが分かっていただけただろうか。ちなみに、2つのモデルには、長持ち室外機以外の違いはまったくないとのことだ。