扇風機では、簡易タイプのUSBファンなどを除けば、「強・中・弱」というように風力のコントロールが可能な製品が一般的だ。風量が変われば消費電力も変わるはずだが、いったいどの程度違うのだろうか。
上の写真は、東芝の前身である芝浦製作所の扇風機だ。作られてから実に70年程度も経過している製品ではあるが、4段階の風量コントロールが可能だ。各風量での実際の消費電力を測定してみた。もっとも風が強いモードでは、起動時には一時的に65Wにまで上昇したが、すぐに45W前後になり、その後は安定した。2段階目では35W前後、3段階目では30W前後、もっとも風力が弱いモードでは25W前後となっていた。この扇風機の場合、風量をコントロールできるとはいっても、最近の扇風機のように微風にはできない。最も弱い状態でも、現代の扇風機の「中」相当だ。
これだけではあまり参考にはならないので、比較的最近の扇風機でも測定を行ってみた。シャープが以前発売していた「PJ-G3LL」というモデルだ。10年ほど前のモデルなのだが、先ほどの芝浦製作所の扇風機と比較すれば最新モデルといっても言いすぎではない。
PJ-G3LLは、普及価格帯のリビング扇風機で、3段階の風量コントロールに加え、「1/fリズム」機能を備えている。1/fリズム機能を使用した状態では間欠的な動作になるので、消費電力量はおそらく一番少なくなるものと思われる。測定してみると、風量が最大のモードで38W前後、中間のモードで35W前後、弱モードで30W前後となっていた。1/fリズム機能を使用すると、間欠動作で停止しているときには、0Wとなっていた。
筆者は風量計を持っていないので、絶対的な風の強さを知ることはできない。しかし、弱モードと強モードでは、風の強さに相当な開きがあることは間違いない。しかし、感じられる風量ほどに、消費電力は変化していない。
東芝の最新型扇風機「SIENT+」シリーズ。左から「F-DLP300」「F-DLP200」「F-DLP100」。DCモーターを採用しており、微風時の消費電力は3Wだ |
このところ、ハイグレードモデルを中心に、DCモーターを採用する扇風機が増えている。DCモーターは、ACモーターに比べて細かな風力コントロールが可能であったり、静音性が高かったりという特徴を持っているが、省電力性能の高さも大きなメリットだといわれている。
先ほどの測定では、風量を抑えても、さほど消費電力量は下がらなかったが、それは筆者の扇風機だけの問題ではなく、ACモーターを使用している扇風機に共通する傾向だ。"省エネのために風量を控えめに"という工夫は、ACモーターを使用している扇風機では、それほど大きな効果は生まないことになる。
一方、DCモーターを搭載した扇風機では、最大風量時で20~30Wだ。ACモーターを使用した扇風機とさほど違いはないが、微風動作にすると3W前後、製品によっては2Wといったものも登場している。こちらは1/10程度まで消費電力を抑えることができることになる。
皆さんは、扇風機をどのくらいの風量で使用しているだろうか。現在、扇風機はエアコンと併用されるケースが多い。真夏に扇風機を単体で使用するならば強風で使用するということもあるだろうが、やはり弱めの風で利用しているというケースが多いのではないだろうか。そういった場合、DCモーターを採用した扇風機の消費電力の特性は、大きな省エネ効果をもたらすことになるだろう。