2010年は、LED電球の普及率が大きく伸びた年でした。2009年7月15日に、シャープが店頭価格4,000円前後というLED電球を発売して以来、LED電球の低価格化が進行し、現在では2,000円以下で購入できる製品も少なくはありません。この低価格化と、さらにエコポイント制度がその普及を大きく後押ししたといえるでしょう。しかし、LED電球はあくまでも電球を置き換えるための機器です。現在、普通の家庭でメインの照明として使われているのは、蛍光灯というケースがほとんどでしょう。蛍光灯をLEDに置き換えるのは、なかなか大変です。蛍光灯を置き換える製品は、直管の蛍光灯をLEDに置き換える製品がいくつか発売されているという程度で、まだまだ少ないというのが実情です。また、LED蛍光管は、使用する場合、照明器具の電源部分を交換しなければならないなど、手軽に、というわけには行かないようで、さほど普及が進んでいるというわけではありません。

また、LED照明のメリットは、消費電力の少なさと長寿命ということになるのですが、蛍光灯からLEDに交換した場合、蛍光灯も白熱電球と同じ明るさを約1/3の電力で実現している器具であり、白熱電球からLEDに換えた場合のような劇的な省エネ効果はありません。長寿命という点に関しては確かにメリットがあるのですが、それでも家庭では多少ランプ交換の手間が増えてもそのぐらいは我慢する、という結論になることが多いのではないでしょうか。実際、LED照明器具は、家庭用よりもオフィス向けや公共施設向けといったラインナップの方が先に充実していきました。使用する量が違うために省電力化や長寿命化のメリットも大きくなる、そして、コストに対する意識の違いもあるのでしょう。導入コストだけでなく、運用コストも含めた総コストを考えれば、LED照明は決して割高な機器ではありません。

家庭用のLED照明としてメジャーなものに、ダウンライトという分野があります。天井などに埋め込まれている照明です。2007年に東芝ライテックが発売したE-CORE 40が、一般への普及の先駆けとなりました。ダウンライトの場合、白熱電球を使用したものであろうとLEDを使用したものであろうと、いずれにせよ工事が必要になるため、LEDだから導入がめんどうという、ハードルの高さはなかったようです。導入に際しての手間は、大変な順から「ダウンライトなどのように工事が必要なもの」→「ユーザーが器具を改造する必要があるもの」→「器具自体を交換する必要があるもの」→「ランプだけを交換すればよいもの」という感じになるでしょう。残念ながら家庭用では、LED電球を除けば「ランプだけを交換すればよいもの」という選択肢は存在しません(直管40形で、ラビットスタートの器具に取り付け可能なLED蛍光灯は存在するが、そんな器具を使用している一般家庭はあまり多くないでしょう)。「器具自体を交換する必要があるもの」では、シャープがが昨年9月に発売した「LEDシーリングライト」が、ひとつの分岐点になるのではと、筆者は思っています。LEDシーリングライトは、従来のLED照明と異なり、家庭にある引っかけシーリングや埋め込みローゼットなどに、そのまま取り付けることが可能な器具です。器具光束が5,100 lmのモデルが12畳まで、3,400 lmのモデルが8畳までの広さに対応となっています。6畳~8畳程度の部屋向けのシーリングライトでは、40形+32形のサークラインを使用したものが一般的ですが、この場合、器具光束は5,600lm程度。ただし、蛍光灯が全方向に光を出すのに対して(東芝ライテックのメロウZ PEIDEのように、蛍光管内に反射膜を設けているモデルを除く)、LEDの場合、一方向にしか光を出さないため、この器具光束でも十分な明るさになるとのことです(なお、40形と32形のサークライトを組み合わせた照明器具の場合、消費電力は70W弱。一方、LEDシーリングライトの8畳向けモデルの消費電力は59W)。

自分で取り付けられるLED照明「LEDシーリングライト」

さて、昨年10月に日本電球工業会が直管型LEDランプの規格(JEL801:2010)を発表しています。従来よりあった直管型LEDランプが、重さや口金など、製品により規格がまちまちで互換性がなかったため、制定されたものです。10月には東芝ライテックが、この規格に準拠した直管型LEDランプを発表しています(発売時期は未定)。また、昨年12月にパナソニック電工が、この規格に準拠した「EVERLEDS直管形LEDランプ搭載ベースライト」(80製品)を発売しています。パナソニック電工が発売しているモデルは40形のLED蛍光管を使用したオフィス向けの照明器具です。ここまでは、一般家庭にはあまり縁のない話ですが、東芝ライテックの発表した直管型LEDランプには、家庭でもよく使われている20形が含まれています。また、先日行われたエコプロダクツ2010のパナソニックブースで伺ったところ、同社でも20形などにラインナップを拡充していく予定とのことです。気になる発売時期ですが、春くらいには、とのことで、さらに、それに対応した照明器具もリリースされるようです。となると、シャープのLEDシーリングライトに続く、自分で取り付け可能な家庭用LED照明が、という期待が高まります。エコプロダクツのシャープブースで伺ったところ、LEDシーリングライトはセールス的にも好調とのことです。ユーザーが自分で取り付けることが可能なLED照明は、2011年に大きく伸びる分野ではないでしょうか。

新規格に対応した家庭向けモデルの登場が待たれる