家電製品のリモコンには、一般的にアルカリ電池が推奨されています。電池が別売になっている場合もありますが、付属している場合、たいていはアルカリ電池です。前回、リモコンなどの、消費電力が少ない器具に使うのに、Mi-MH充電池が微妙な値段になって来たという話をしました。今回はその(一応)続きですが、有り体にいって、恐ろしくどうでもよい話ではあります。

次の図を見てください。左側は、Ni-MH充電池に、2.5Ω分の抵抗をつないで、電圧の変化を記録したグラフです。右側は、同じ条件で、マンガン電池の電圧を測定したものです。アルカリ電池も測定したような気がするのですが、グラフが見つかりませんでした。いずれにせよ、マンガン電池の場合(アルカリ電池もですが)、電圧は、徐々に降下していきます。それに対して、Ni-MH充電池の場合は、ある程度までは、規定の水準に近い電圧をキープし、それ以降、すとんと電圧が低下するという傾向があります。

Ni-MH充電池では、ある程度まで使うと電圧が急激に低下する

2マンガン電池では、電圧が徐々に低下する

リモコンにアルカリ電池を使用している場合、だんだん、赤外線が弱くなってきて(つまり、反応が悪くなって)、その後、電池の寿命を迎えるため、そろそろ電池を交換する時期が近づいてきたと、なんとなく判断が付きます。しかし、急激に電圧が低下する傾向があるNi-MH充電池だと、通常の反応から、いきなり動かなくなったりするのではないでしょうか。なんの兆候もなく、突然、リモコン操作に対する反応がなくなったら、故障では? と勘違いするケースも出てくるかもしれません。もし、突然反応しなくなるというのが、Ni-MH電池をリモコンに使用している場合の一般的な動きならば、そういうものだと理解しておいた方がよいでしょうし、もしそうでなく、Ni-MH電池を電源として使用している場合でも、徐々に反応が悪くなって空になるというのならば、いままでと同じように考えておけばよいということになります。

アルカリ電池の定格電圧は1.5Vです。それに対して、Ni-MHの定格電圧は1.2Vです。1.2Vで、リモコンが正常に動作するのかということですが、試してみた範囲では、とくに問題はないようでした(もちろん、これで、1年間といった長期間にわたって使えるかどうかは分かりませんが、電池を入れた直後は普通に使えていました)。では、リモコンは、どのくらい電圧が低下しても動作するのでしょうか。その限界点付近での挙動を知りたいのですが、これは、調べるのがなかなか難しい問題です。測定のためにリモコンだけで電池を使いきるのは、さすがに、無理があります。以前、Ni-MH充電池の容量を測定したときのように、4~5時間ですむという話ではありません。手元にあるリモコンの動作時の電流を調べてみたところ、70mAぐらいでした。2000mAhのNi-MH充電池の場合、28時間以上も連続してリモコンを操作しなければ、電池は空になりません。もちろん、ある程度まで使用すれば、電圧が低下してそれ以上は動作しなくなるでしょうが、それでも、先ほどのグラフを見ると、かなりぎりぎりまで電圧をキープしそうです。

というわけで、今回は、適当に容量が少なくなったNi-MH充電池を使用することにします。調査に使用したリモコンは、ブルーレイレコーダーに付属していたものです。単3形電池2本で動作するタイプで、操作時にLEDが点灯することから、普通のリモコンよりも、消費電力が多いという期待が持てます。このリモコンに、デジタルカメラで使用して、もうまったく動かなくなったeneloopを入れてみたところ、普通に動作しました。デジタルカメラで使いきったN-MHの電圧を測定してみたところ、約1.2V(!)。ここから、リモコンを操作していって、動かなくなるまで調べていってもよいのですが、現段階での電池の残量は、一体どのくらいなのでしょうか。果たして、100回の操作で動かなくなるのか、それとも 10万回の操作が必要なのか分かりませんが、1.2Vという電圧が、非常に気になります。

デジタルカメラで使いきったNi-MH充電池をリモコンにセット

2普通に動作する

弱気になった筆者は、さらに、残りの容量が少ない状態を作ろうということで、今度は、完全に空になったNi-MH充電池を30秒ほど充電して、リモコンに入れてみました。たかが30秒ほどしか充電していないというのに、これがなかなか、普通に使えます。まぁ、30秒しか充電していないので、いくらなんでも、そのうち動かなくなるだろうと、リモコンの操作を続けてみたのですが、一向に、動かなくなる気配がありません。そういえば、3分間充電するだけで、何時間か使える音楽プレーヤーがあったなぁ、とか、いやなことを思い出します。

30秒だけ充電したNi-MH充電池をセット

しかし、400回ほど操作を続けると、ボタンを押したときに点灯していたLEDが、押した瞬間しか点灯しないようになりました。その後、50回ほど操作すると、ボタンを押しても反応しないというケースが、無事に出てきました。100%反応しないというのではなく、反応したり、しなかったりします。この辺りが、限界なのでしょう。

さて、次の写真は、デジタルカメラで使い終えたNi-MH(左)と、リモコンで使って限界を迎えたNi-MH(右)の電圧です。両方とも1.2V付近を指していて、見た目では、その差は分かりません。そして、左から右の状態になるのに、どのくらいかかるのかも分かりません。

デジタルカメラで使いきったNi-MH充電池が、約1.2V

2リモコンの動作限界に達したNi-MH充電池の電圧も、約1.2V

ただ、今回の調査ではっきりしたことがあります。リモコンに使用した場合、Ni-MH充電池でも、アルカリ電池やマンガン電池と同じように、その反応から、容量がなくなってきたことが分かるということです。そして、Ni-MH充電池は、30秒ほど充電すれば、リモコンならばおそらく2~3日程度の操作は可能なぐらい充電されるということも判明しました。リモコンだけに使うのなら、Ni-MH充電池の予備はなくても大丈夫かもしれません。