住宅用太陽光発電システム、ソーラーパネルの市場が元気だ。もともと、ヨーロッパでは盛んなのに、日本では、まったくもって元気がなかった住宅用太陽光発電だったが、ここに来てようやく勢いづいてきた。この盛況にはいくつかの理由があるのだが、買う側として何が悩ましいかといえば、製品のどこに着目してどの製品を選べばいいのかわからない点。カタログを見ると、「出力」がまずは選ぶポイントだということがわかる。でも、これだけで選んでいいのか迷う。ここに最大の「困った」があるのである。

そうはいっても、「出力」が選ぶポイントだということには間違いなさそうだ。この出力というのは太陽光発電モジュール一枚当たりの電気の出力値だ。当然、200Wと190Wならば、200Wのほうがたくさん出力するわけで、同じ屋根に並べるのなら、出力の大きいほうが多くの発電量が確保できるということだ。現在、国内の住宅用太陽光発電システムの大手は、シャープ、京セラ、三洋電機、三菱電機が主なところだ。最近では、パナソニックが住宅用太陽光発電の市場に参入し、「グループで国内トップシェアを目指す」と報じられたばかりだ。くわえて、東芝も今年になってから市場参入し、ますます激化するなか、中国などのメーカーも乗り込んできて、市場はまさに大乱闘状態である。

そのなか、「出力」はもっともわかりやすい訴求ポイントである。顧客にしてみれば、数字とともに「大出力です!」、といわれればなんだかたくさん電気が使えそうな気がしてくるものだ。このような指標が決まると、俄然目標に向かって走り出すのが日本の家電メーカーである。各社とも、カタログには高出力、大出力の文字が踊っている。

今回紹介するのは、10月に発売となる三菱電機の国内住宅用「単結晶無鉛はんだ太陽電池モジュール」という製品だが、こちらも大出力が魅力の一つだ。なんと、200Wである。昨年、発売されたものが190Wだから、5%もアップさせたのである。その前が185W。少しずつ進歩している。昨年に続き、続々と新製品が発売されている。なにしろ、太陽光発電システムは、一度設置したらおおむね10年は買い換えしない商品だ。メーカーにとってみると、今の時期にいかに売れるかで勝負が決まる。椅子取りゲームの椅子を狙うかのように、各社とも次々と性能の高いものを開発し、ユーザーに訴えていく。しばらくは熾烈な開発合戦の繰り返しが続くのである。

バスバーを増やすという選択

性能アップの要因の一つは単結晶のシリコン太陽電池セルを使用していることにある。多結晶のものと比べて、単結晶のものは発電効率が高い。ただし、いいことばかりではなく欠点もある。発電効率は高くなるのだが、同時に電流値も高くなり、電気抵抗も大きくなってしまう。その結果、エネルギーロスも大きくなってしまうのだ。あちらを立てれば、こちらが立たず。そんなよくある現象が太陽電池セルの中で起こっていたのであった。

三菱電機の国内住宅用「単結晶無鉛はんだ太陽電池モジュール」

日本の電機メーカーに感心させられるのは、このような困難が現れたとき、あきらめずに必ず乗り越える点である。三菱電機の新商品では、従来2本だったバスバーを4本に増やして、エネルギーロスの問題を解決した。

太陽電池セルにはバスバー電極というものがあって、電子が電極間を移動するようになっている。そこで、2本から4本に増やせば、バスバー電極間の距離が短くなって、結果、抵抗値も減るというわけだ。ただ、単純に4本にするとセルの受光面積が小さくなってしまう。そうならないよう、バスバー電極の線を細くするといった工夫もなされている。一つひとつ、問題を解決して、新商品「単結晶無鉛はんだ太陽電池モジュール」は生まれたのであった。

出力だけで選んでいいのか

「出力の値が200Wでも、全部を使えるというわけではありません」

三菱電機 営業部 住宅用太陽光発電システム営業課長 高山博夫氏。「エコポイントの次は、オール電化だ! と家電量販店でも住宅用太陽光発電システムの扱いが増えました」

このように語るのは、三菱電機 営業部の高山博夫氏だ。太陽光発電システムは、太陽電池モジュールにうたわれている出力がそのまま家庭用の電気として使えるわけではないのだ。なぜか。それは、太陽光発電モジュールで発生する電気は直流であり、家庭で使うには、交流に変換しなければならないのである。この変換のときに、ロスが発生するのである。

そこで着目したいのが、直流電気を交流に変換する「パワーコンディショナー」の性能だ。三菱電機では変換効率が97.5%! この原稿を書いている時点で、業界ナンバー1である。同じ200Wでも、変換効率が97.5%ならばロスはわずか5W。業界で主だったものは94.5%あたりで、これだと11Wもロスが発生する。

一般の家庭では、3kw(発電量)を導入する家庭が多いので、変換効率が97.5%ならば変換後の電力は2925W、94.5%ならば2835W、ここで90Wもの差が生じてしまうのであった。使える電気の量がこうも違ってくる。ついつい、カタログの「出力」の値に目がいってしまうが、どれだけ電気を使えるかは出力だけでなく、選ぶときはパワーコンディショナーの変換効率にも着目したい。

このほかにも、太陽光発電システムにはカタログの値以外にも考慮しながら選ばなければならない点がいくつかある。次回は、もう少し詳しく、選び方の落とし穴について紹介していきたい。

イラスト:YO-CO