アイスクリームはお店で買うものだと思われがちだが、実は手づくりも可能なのである。プリンは牛乳と卵があれば、簡単に作れる。ところが、アイスクリームをプリンのように軽い気持ちでこしらえようとすると、途中で後悔することになる。どこが大変なのかは後ほど書くとして、結論を先に言うなら、素人が冷菓を手づくりするなら、一部工程を機械に頼らなければムリなのである。

そんなわけで、今回紹介するのはアイスクリームメーカーである。カミソリなどで知られる貝印の「ぐるぐるアイスクリームメーカー」。名前の通り、ポットがぐるぐる回って、アイスクリームができるのである。驚きなのは、所要時間がたったの20分程度という点。通常、ものが凍るまでには、冷凍庫に数時間置かなければならないのに、本当にこんな短い時間で固まるのか。何か裏があるに違いない! などと、疑りのまなざしでぐるぐるアイスクリームメーカーをとりだした。

オレンジシャーベットに挑戦した理由は

ポットが3つあるので、3種類のアイスをこしらえることができるのだが、まずは手堅く(って、何が手堅いのか)、3つともオレンジシャーベットにすることにした。アイスクリームは砂糖を溶かしたり、材料に生クリームや牛乳以外にも卵黄を使用したりと複雑なのに対して、シャーベットはジュースとシロップを混ぜるだけ。失敗がないと思ったのだ。 付属のレシピにはグレナデン・シロップを使用するように指定されていた。グレナデン・シロップの名前を耳にしたことがなくても、カクテル好きの人ならば、「テキーラサンライズの底の部分に使用される太陽みたいに赤いシロップ」、といえばお分かりになるだろう。

貝印「おやつdeにっこり ちゅーぼーず」シリーズの「ぐるぐるアイスクリームメーカー」。ポットがぐるぐる回る

真っ赤でとろりとした液体を口に含んでみたが相当甘いし、ザクロの果汁が原材料になっているだけあって酸味もある。これをオレンジジュースに加えるとレシピには書いてあるのでやってみた。できあがった液体は、そのまま飲むには苦痛なぐらい甘くて酸っぱい。これがシャーベットに変身するのだが、おいしさは大丈夫なのだろうか。不安はあるが、まずはとっかからないことには前に進めない。そんなわけで、さっそく、機械のセッティングから始めた。

ポットを取り除いた状態。ここにフタとポットをセッティングする

アイスクリームメーカーには冷凍庫のように凍らせる機能はついてない。私のイメージでは、アイスクリームメーカーというものは、冷凍庫がどどーんとついていて、そこに材料を入れることで、アイスクリームができあがるはずだった。なのに、ただのポットがぐるぐる回るだけで、アイスクリームができてしまうのである。とても不思議だ。

まずはポットをセッティングする。ポットは200ccのアイスクリームが作れるサイズ

こんな芸当がなぜ可能かというと、ポットのなかに保冷剤が密閉されていて、これが材料を冷やしてくれるのである。そのため、ポットを事前に18時間冷凍庫に入れて、液体を凍らせておく必要がある。

ところで、話は冒頭に戻るが、機械に頼らない手づくりアイスをこしらえるのに、何が大変か。とにかく、つくり方が面倒なのである。まず、材料をまぜあわせたら、一度冷凍庫に入れる。その後、固まりかけたら取り出してかき混ぜ、また固まりかけたら取り出してかき混ぜ、以下省略……。を繰り返さなければならないのである。レシピによると、この繰り返しが多いほど、なめらかな物ができあがるのだという。レシピを読んだだけで、めんどうで引けてくる。一日がかりの作業である。そんな時間をかけていたら、締め切りが過ぎてしまうのである。ということで、アイスクリームメーカーの必要性を感じた次第である。

完成まで20分間

かき混ぜてなめらかにするといった単純作業は機械が得意とするところ。ということで、このアイスクリームメーカーはぐるぐるポットがまわることで、材料が冷やされながらかき混ぜられる仕組みになっている。

フタを閉めてポットが回りだしたら、材料を穴から注ぐ

保冷剤も冷凍庫で固まったことだし、いよいよシャーベットづくり開始である。まずは、パドル(羽)を透明な本体用フタにセット。ポットを所定の位置に乗せて、フタを閉める。スイッチを入れると、遊園地のコーヒーカップのように、ぐるぐる回り出すのである。フタにあいた穴からこぼさないように材料を注ぐ。材料がぐるぐるとかきまぜられている。3つのポットが同時に回る姿には楽しさがあふれている。遊園地のように3拍子でオルガンの音が鳴り響きそうである。

材料を注ぎ終わった状態

20分で完成する予定である。ところが、20分経過してもジュースのままだった。固まっていないのである。取扱説明書には、状況によって時間にはばらつきが出るという。ならば、もう少し待ってみようと、止めずにいた。しかし、固まる気配がないので、とりあえず液体を容器に移して凍らせてみた。

無理やり冷凍庫で固めたオレンジシャーベット

かきまぜないので、やはりなめらかさはない。でも、味はまずまずである。自分で作ったものは何でもおいしく感じるものだ。娘に差し出してみると、「酸っぱさがイヤ」と一口で食べるのをやめてしまった。がっかりである。

なぜ今回は20分でうまくいかなかったのか。原因を考えてみた。いったいどこが悪かったのか。思い当たるフシはある。ならば、次こそは成功に違いない。ぐうたら主婦はアイスクリームにありつけるのか。つつぎは次週に。

イラスト:YO-CO