【コラム】

3Dグラフィックス・マニアックス

84 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(8)

 

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プロシージャル・テクスチャの"種"はノイズにある?

3Dグラフィックス(CG)制作やゲームグラフィックス開発などで制作負荷が高いものにテクスチャ素材の作成が挙げられる。

屋外のオープンフィールドシーンが主体のゲームであれば地面の模様、道路のアスファルトの模様、石壁の模様、樹木の皮など、挙げればきりがないほどの素材を作らなければならない。屋内主体のゲームでも、お城ならば大理石の床の模様、絨毯の柄が必要になるし、洞窟ならば岩壁や鍾乳洞の模様が要る。

フリー素材が公開されていたり、ゲームスタジオによっては独自ライブラリを構築しているところもあるが、決まり切ったものを活用していては規則性が見抜かれたり、あるいは平凡な絵面になってしまったりする。

そこで、そうした様々なテクスチャ素材をもプロシージャル生成するための研究が各方面で行われている。

このテクスチャのプロシージャル生成の基本となるのがノイズを用いる方法だ。

ノイズの代表例としてはホワイトノイズ、ピンクノイズ、ブラウン運動ノイズなどがあるが、このうち、人間が自然と感じるのがピンクノイズとブラウニアンノイズの2つだといわれている。

ホワイトノイズは全ての周波数帯でスペクトル強度が均等となるノイズで、非常にランダム性が高い。ピンクノイズは周波数fとスペクトル強度が反比例する特性を持つノイズだ。ブラウニアンノイズはブラウン運動の軌跡によく似たノイズで、スペクトル強度が周波数fの二乗に反比例する特徴を持つ。周波数的な視点でいうとピンクノイズとブラウニアンノイズは低周波成分が強くて高周波成分が弱く、大きな揺らぎの中に細かい揺らぎが乗っているようなノイズになる。この2つのノイズは自己相似性があることが知られており、こうしたノイズを特に「フラクタルノイズ」と呼ぶ。

下図は、このフラクタルノイズを元に作られるプロシージャル・テクスチャの例だ。

ノイズを元にプロシージャルテクスチャを生成する

スライドの左下の2つは、まずブラウニアンノイズを生成してこれをテクスチャ化し(左)、これを離散的な値へ変換して色を付けてやると大理石のような模様になる(右)という例となっている。こうしたテクニックをさらにチューニングして応用すると、スライド右上のような木の皮がめくれたような樹木の模様のようなテクスチャを生成することが出来る(スライド右上)。こうしたノイズを離散変換して別々の色のベースカラーにして、これをマルチレイヤーとして合成すると迷彩パターンのテクスチャも生成できる(スライド右下)。(続く)

プロシージャル生成した大理石テクスチャをティーポットに適用した例。この技法の開発者のDavid Cornette氏のサイトより

(トライゼット西川善司)

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インデックス

連載目次
第99回 3D立体視の解体新書 - 立体視という知覚(4)~単眼立体視と両眼立体視の有効範囲の考察
第98回 3D立体視の解体新書 - 立体視という知覚(3)~両眼立体視
第97回 3D立体視の解体新書 - 立体視という知覚(2)~単眼立体視(2)
第96回 3D立体視の解体新書 - 立体視という知覚(1)~単眼立体視(1)
第95回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(19)
第94回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(18)
第93回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(17)
第92回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(16)
第91回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(15)
第90回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(14)
第89回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(13)
第88回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(12)
第87回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(11)
第86回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(10)
第85回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(9)
第84回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(8)
第83回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(7)
第82回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(6)
第81回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(5)
第80回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(4)
第79回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(3)
第78回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(2)
第77回 人工知性でコンテンツを生成するプロシージャル技術(1)
第76回 3Dモデルの変形までが可能な動的PRT(5)~SH Exp演算の大胆な近似による高速化
第75回 3Dモデルの変形までが可能な動的PRT(4)~SH Log演算とSH Log次元における遮蔽の統合
第74回 3Dモデルの変形までが可能な動的PRT(3)~帯域調和関数(Zonal Harmonics)の導入
第73回 3Dモデルの変形までが可能な動的PRT(2)~SH LogとSH Expとは?
第72回 3Dモデルの変形までが可能な動的PRT(1)~3Dモデルの変形に対応した動的PRT技術の台頭
第71回 限定条件付き動的PRT(2)~PSF技法におけるライティング
第70回 限定条件付き動的PRT(1)~動的PRT第一段階PSF技法とは?
第69回 事前計算放射輝度伝搬(PRT)~PRTの基本。静的PRT(4)
第68回 事前計算放射輝度伝搬(PRT)~PRTの基本。静的PRT(3)
第67回 事前計算放射輝度伝搬(PRT)~PRTの基本。静的PRT(2)
第66回 事前計算放射輝度伝搬(PRT)~PRTの基本。静的PRT(1)
第65回 事前計算放射輝度伝搬(PRT)~PRTとは?
第64回 表面下散乱によるスキンシェーダ(8)~表面下散乱とスキンシェーダ(6)
第63回 表面下散乱によるスキンシェーダ(7)~表面下散乱とスキンシェーダ(5)
第62回 表面下散乱によるスキンシェーダ(6)~表面下散乱とスキンシェーダ(4)
第61回 表面下散乱によるスキンシェーダ(5)~表面下散乱とスキンシェーダ(3)
第60回 表面下散乱によるスキンシェーダ(4)~表面下散乱とスキンシェーダ(2)
第59回 表面下散乱によるスキンシェーダ(3)~表面下散乱とスキンシェーダ(1)
第58回 表面下散乱によるスキンシェーダ(2)~ハーフライフ2で採用の疑似ラジオシティライティング(2)
第57回 表面下散乱によるスキンシェーダ(1)~ハーフライフ2で採用の疑似ラジオシティライティング(1)
第56回 水面の表現(5)~大きな波
第55回 水面の表現(4)~水面のライティング(2)
第54回 水面の表現(3)~水面のライティング(1)
第53回 水面の表現(2)~動的なさざ波
第52回 水面の表現(1)~水面表現の歴史
第51回 HDRレンダリング(11)~トーンマッピング
第50回 HDRレンダリング(10)~HDRブルーム/グレア処理
第49回 HDRレンダリング(9)~HDRテクスチャ
第48回 HDRレンダリング(8)~HDRレンダーターゲット
第47回 HDRレンダリング(7)~HDRレンダリングのプロセス
第46回 HDRレンダリング(6)~HDRレンダリングの歴史と動向(2)
第45回 HDRレンダリング(5)~HDRレンダリングの歴史と動向(1)
第44回 HDRレンダリング(4)~HDRレンダリングの第三の効能
第43回 HDRレンダリング(3)~HDRレンダリングの第二の効能
第42回 HDRレンダリング(2)~HDRレンダリングの第一の効能
第41回 HDRレンダリング(1)~HDRレンダリングとは?
第40回 ジオメトリシェーダ(11)~ジオメトリシェーダを活用した新表現(7)
第39回 ジオメトリシェーダ(10)~ジオメトリシェーダを活用した新表現(6)
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第33回 ジオメトリシェーダ(4)~ジオメトリシェーダのアクセラレーション的活用(4)
第32回 ジオメトリシェーダ(3)~ジオメトリシェーダのアクセラレーション的活用(3)
第31回 ジオメトリシェーダ(2)~ジオメトリシェーダのアクセラレーション的活用(2)
第30回 ジオメトリシェーダ(1)~ジオメトリシェーダのアクセラレーション的活用・ステンシルシャドウボリューム技法の影生成を加速する
第29回 影の生成(10)~改良型デプスシャドウ技法(5)
第28回 影の生成(9)~改良型デプスシャドウ技法(4)
第27回 影の生成(8)~改良型デプスシャドウ技法(3)
第26回 影の生成(7)~改良型デプスシャドウ技法(2)
第25回 影の生成(6)~改良型デプスシャドウ技法(1)
第24回 影の生成(5)~デプスシャドウ技法
第23回 影の生成(4)~ステンシルシャドウボリューム技法(2)
第22回 影の生成(3)~ステンシルシャドウボリューム技法(1)
第21回 影の生成(2)~投射テクスチャマッピング技法
第20回 影の生成(1)~3Dグラフィックスにおける2つのカゲの存在
第19回 バンプマッピングの先にあるもの(3)~セルフシャドウ付き視差遮蔽マッピング
第18回 バンプマッピングの先にあるもの(2)~視差遮蔽マッピング
第17回 バンプマッピングの先にあるもの(1)~視差マッピング
第16回 微細凹凸表現の基本形「法線マップ」(3)
第15回 微細凹凸表現の基本形「法線マップ」(2)
第14回 微細凹凸表現の基本形「法線マップ」(1)
第13回 3Dグラフィックスの概念とレンダリングパイプライン(5)
第12回 3Dグラフィックスの概念とレンダリングパイプライン(4)
第11回 3Dグラフィックスの概念とレンダリングパイプライン(3)
第10回 3Dグラフィックスの概念とレンダリングパイプライン(2)
第9回 3Dグラフィックスの概念とレンダリングパイプライン(1)
第8回 GPUとシェーダ技術の基礎知識(8)
第7回 GPUとシェーダ技術の基礎知識(7)
第6回 GPUとシェーダ技術の基礎知識(6)
第5回 GPUとシェーダ技術の基礎知識(5)
第4回 GPUとシェーダ技術の基礎知識(4)
第3回 GPUとシェーダ技術の基礎知識(3)
第2回 GPUとシェーダ技術の基礎知識(2)
第1回 GPUとシェーダ技術の基礎知識(1)

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