イタリアワインの見本市「Vinitaly」への参加回数は、もう10回以上となる私。毎年このイベントを楽しみにしているのだが、読者の皆さん、"見本市"と聞いて「地味な展示会」を想像してはいけない。さすがデザイン王国、イタリア。見本市も非常に美しい。まずはブースの数々をご覧あれ。

「Vinitaly」のブース。車屋さんではありません……

宝石屋さんでもありません

写真が逆さではありません

2階建てもたくさんあります

やはり自然派が……

近年、日本でも話題になっている自然派ワインは、やはりイタリアでも注目の的のようで、ここ数年で自然派への転換を図っている造り手が急増しているそうだ。このVinitalyに出展している自然派ワインを扱うワイナリーだけでも相当な数になっていた。私は車がないので行けなかったが、Vinitalyと時を同じくして、別会場では自然派限定のイベントも行われていた様子。ついには、昔から当然の如く自然派の手法でワインを造っていて、特にそれを謳うことなくやってきた造り手の中にも、昨今の自然派ブームで急に「うちは自然派です」と表示するところが出てきた。しかし、消費者はといえば意外に自然派についてはなんとなくの知識しか持っていない人が多い様子。ということで、ここでしっかり紹介しようと思う。

自然派はビオロジックとビオディナミに分けられる。簡単にいうと、前者は除草剤を使わず補糖・補酸もしない。醸造過程での二酸化硫黄添加も極力行わない。そして後者は、ビオロジックの条件の他に、月の満ち欠けによって畑作業を決めるといったちょっと幻想的な要素を抱き合わせたものである。

ビオロジックはイタリア国内だけでも「ICEA」など8~9あるといわれている自然派の団体に加え、EUの団体まであるので、どこの団体に申請するかはワイナリーによって異なる。しかし、すぐに申請できるのかといえばそういうわけではなく、畑の改良など自然派としての準備を万全に整えてから申請、それから許可が下りるまで最低3年かかるといい、大変な手間とコストがかかるのである。ビオディナミは更に条件が厳しくなるため、現在イタリアで自然派と謳っているワイナリーのほとんどはビオロジックである。

ワインの味はというと、当然ワイナリーごとに違い、「自然派のワインはこうよ」という定義もないので、無責任のようだがこればっかりは自分の舌で確かめて欲しい。自然派ではないワインと飲み比べてみると、なんとなく違いがわかるのではないだろうか。

シチリアのビオロジック「Nanfro」。この期間は学生の息子たちまで借り出される

ビオロジックのマーク。左がEU、右がイタリアのもの

コルクに代わる新兵器?

これが噂の(!?)ガラス栓

話は変わって、ここのところじわじわと浸透しつつあるスクリューキャップ。発信基はオーストラリアやニュージーランドといったオセアニア地域のワインで、最近ではイギリス、アメリカをはじめ、日本でも信望者が増えてきたところだ。しかし、ここは伝統と格式のヨーロッパ。「ワインを開けるという行為そのものがイベント性に富んでおり、何より(スクリューは)安っぽい」といったイメージが拭えないらしい。

そこで登場したのがガラスの栓。私も数年前にドイツワインで実験的に使っているのを見たことがあったが、実際に商品化されているのを見たのは初めて。この造り手は、アルト・アディジェ州を拠点に、トスカーナにもワイナリーを持っている。中でもイタリアでは、まだ数少ないビオディナミで造ったワインのみにガラス栓を使用している。

ガラス栓のメリットはスクリューキャップと同じ。ソムリエナイフは不要、ワインが余ってもガラス栓で蓋をしての保存が可能。コルク臭の心配もない。そして、ガラス栓特有の高級感があるのだそうだ。ただコストが……。コルクの原価は約40円、ガラス栓は約65円と高価なことから、今のところは高価格帯の商品のみに使用とのことだ。今後注目されるであろうアイテムである。