【コラム】

山田祥平のニュース羅針盤

55 だからみんな一太郎を忘れない

 

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例年通り、ジャストシステムが次期ワープロアプリ「一太郎2016」と、その日本語入力システムである「ATOK 2016」を発表した。毎年12月に発表してベータテストを開始、翌年2月に製品発売というスケジュールで、この製品の発表会があると、今年ももう終わりかと実感する。まさに暮れの風物詩だ。

12月3日に開催された、「一太郎 2016」と「ATOK 2016」の発表会。毎年12月に製品を発表、翌年2月に発売する、という流れが続いている

一太郎とPCの歴史

一太郎が製品名に年号をつけるようになったのは「一太郎2004」からだ。以降、毎年このパターンで新バージョンが世に出ている。

でも年号とは関係なく、パッケージとしての一太郎は、1985年に初代の「jX-WORD太郎」が発売されて以来、88年、90年、91年、92年、94年、00年以外は毎年新バージョンが発売されている。その丸30年間の歴史の中で、実に26回ものバージョンアップを果たしているわけだ。

一太郎の歴史をひもといてみると、89年春にジャストウィンドウという、国民機ことNEC PC-9800シリーズのMS-DOS上で稼働する独自のウィンドウシステムで動く一太郎Ver.4が出て、93年にWindows対応のVer.5が出るまでに4年間もかかっている。

90~92年にバージョンアップがなかったことと、DOS/Vの登場は無関係ではあるまい。DOS/Vこと「IBM DOS J4.0/V」を日本アイ・ビー・エムが世に出したのは90年で、それを機に、日本のPCシーンはは次第にPC/AT互換機時代に突入する。廉価なPCを大々的に日本で展開する黒船のごとく登場したコンパックショックが92年、翌93年にはWindows 3.1がリリースされた。一太郎Ver.5が出たのはそのタイミングだ。そして、95年秋には日本でWindows 95が出たが、一太郎7がfor Windows 95として本格対応して登場したのはほぼ1年後の96年9月だった。

こうして振り返ってみると、あれだけのPCシーンの激動期に、それほど頻繁なバージョンアップが行われていなかったことに意外な印象を持つ。

2016年は「情報の消費」に注目

一太郎2016とATOK 2016は、数々の新機能を搭載しての登場だが、その機能の多くはワープロとしての使い勝手、日本語変換の賢さといったことよりも、フォント関連や電子辞典リファレンスの充実に注力されている。

目新しさがあるとすれば、一太郎の「モバイルビューイング」と「タブレットビューア」だろうか。前者はiOSとAndroid用に提供される専用アプリで、クラウドに保存した一太郎文書を閲覧できるというもの。2019年まで無償で使えるクラウドサービスとして提供されるそうだ。また、後者はタブレットでのタッチ操作や文書を「見る」、「見せる」を追及したモードのビューアで、Windows 10のタブレットモードと連動して切り替わる。

ここにきて、ついに、一太郎が情報の消費に注目している点が興味深い。何をどう表現するかという生産性を追求してきた一太郎を全バージョン見てきた身からすると、この展開はちょっと新鮮だ。

とはいえ、Intelのプロセッサのようにチックタック的に隔年ごとに刷新するならともかく、ここ数年日本語入力システムのATOKがあまり賢くなっていないというムードもある。Windows 8以降のモダンアプリとの親和性問題の解決で、それどころではなかったという事情もあるのだろうが、ちょっとした寂しさを感じる。その間に、Windows標準のIMEも、かなりまともに使えるようになってきている。発表会で、この点について聞いてみたが、鋭意努力中とのことだった。ATOKがなければ日本語を書けないくらいに愛用してきた身にとっては、2017年あたりの革新的な進化を期待したい。

ジャストシステムの福良伴昭氏

定番、だから盛り上る

Windowsも10となって最後のメジャーアップデートとなり、以降は、数年おきのバージョンアップはなく、日々、進化していくことが表明されている。そういう時代に、毎年パッケージソフトを新製品として発売するというスタイルをいつまで続けられるのか。

それでもiPhoneは毎年新しくなるし、発売時にはそれなりの盛り上がりを見せている。例年通りのスケジュールでのパッケージの刷新というのはマーケティング的には重要な要素なのだろう。その点で一太郎は成功している。だからみんな一太郎を忘れない。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)

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インデックス

連載目次
第69回 Androidはそろそろ共同戦線を張っていい
第68回 「名刺の時代」は当分続く
第67回 「紙の印刷」とITの未来
第66回 本当は合理的な「Windows 10 無償アップグレード」
第65回 3割が経験する割れスマホ問題、もっと真剣に考えてもいい
第64回 実質0円の本当の問題は「わかりにくさ」
第63回 LINEのニュースとコミュニケーション
第62回 通信に大切なのは速さだけじゃない
第61回 進撃するもうひとつのレノボ
第60回 VAIO Phone Bizをめぐる「付加価値」
第59回 岐路に立つMVNOビジネス
第58回 8型では小さすぎる、13型では大きすぎる
第57回 【番外編】今年買わなかったもの
第56回 仕事と感情、「りんな」のAIの見せどころ
第55回 だからみんな一太郎を忘れない
第54回 コンピュータをもういちど「みんなのもの」にしてみよう
第53回 紙のインターネット始動 ~ ScanSnap Cloud誕生
第52回 会話で蓄積されたビッグデータが女子高生「りんな」を大人にする
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第37回 日本マイクロソフトが"新しい働き方"に挑戦する意味
第36回 「WiMAX 2+」がキャリアアグリゲーション対応に、移行のメリット
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第32回 Xperiaが目指すSony Now
第31回 Googleで渋谷の街を丸ごとサーチ
第30回 脱ガラパゴスで世界に挑戦する「AQUOS CRYSTAL」
第29回 そうだったのか総務省、彼らが仕事を急ぐ理由 ~ IIJmio meeting #4より
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第27回 事業部直営のリアル店舗でサービスを模索するLet's note ステーション
第26回 海の家に象徴されるレノボのコンシューマー戦略への覚悟
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第24回 デコして満足、男子より花
第23回 ぶっちゃけ発言続出だった日本マイクロソフト2015年度経営方針記者会見語録
第22回 「リアサカLIVE」でサッカーW杯を楽しんでみる
第21回 Microsoftの「IoYT」、小さなものから大きなものまで身近なものからつないでいこう
第20回 COMPUTEX TAIPEI 2014会場で見つけた2つのビックリ
第19回 Centrino リターンズ - Core MとXMM-7260に感じる11年前のデジャブ
第18回 Intel " M" リターンズ - Core MはPentium M以来の革命を起こせるか
第17回 auとUQがもくろむもうひとつの"キャリア"アグリゲーション
第16回 ドコモのVoLTE、音はいいけどただの内線?
第15回 刷りホーダイ & 刷りあえるスマートチャージ
第14回 横浜F・マリノスをバージョンアップするアディダスのウェアラブルデバイス
第13回 Windows Phoneは、第三のモバイルOSになれるのか
第12回 IIJがアピール「ドコモだからといってどこでも同じではない」
第11回 ビッグローブはほぼ大手キャリアをめざすのか
第10回 Office for iPadが担うMicrosoftのデバイス&サービスカンパニー戦略
第9回 コンビニサービスで痛感する「あると邪魔」と「ないと不便」
第8回 親のスマホを子どもが独占、本当にそれでいいの?
第7回 プラチナバンドの時代は遠く
第6回 スマホとプリンタに婚活を促す出会い系アライアンス
第5回 プロが土足で踏み込むアマチュアの聖域
第4回 定番の呪縛をサムスンはどうUnpackするのか
第3回 VAIOを捨てたソニーの覚悟
第2回 Windowsのために一歩進んで二歩戻るMicrosoft
第1回 YouTubeコンテンツとGoogleの関係に変化の兆し

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