噛む力に個人差がある離乳食期。月齢ごとに目安とされている大きさの食材を食べられないと、焦ってしまうママ・パパも少なくないと思います。
近年では「子どもの噛む力が弱くなっている」という声を聞くことも。どんな食材を選び、どのくらいの大きさで与えればいいのか、判断が難しいですよね。
今回は、子どもの噛む力の鍛え方について、管理栄養士の宇野薫さんに聞きました。
Q.近頃子どもの噛む力が弱まっていると聞きますが、それは本当ですか?
子どもの成長には個人差があるためサンプルが取りにくいと考えられ、私が探した範囲では、噛む力が弱まっているという証明をした論文は見つけられませんでした。
ただ、あごが狭くなって親知らずが生えない子どもが増えていることは分かっていて、子どもの口内環境が変わりつつあると言えるでしょう。
Q.噛む力が弱まるとどのような影響がありますか?
噛む力が弱まると、肉や根菜、きのこなど硬いものをとるのが難しくなり、栄養摂取不良につながる可能性があると言われています。噛む力は使えば使うほど鍛えられるので、使わなければどんどん弱まってしまうと考えられます。
Q.子どもがしっかりと食材を噛めるようになるのはいつからですか?
1歳半頃には乳歯が生えそろうので、少しずつ食材を噛む力がついてきます。永久歯への生え変わりが完了するのは小学校6年生くらいですが、そのころには咀嚼力も、乳歯が生えそろった頃のおよそ3倍になると言われています。
Q.離乳食期にも食材の硬さを意識したほうがいいですか?
離乳食期に与えるものとしては、歯がなくても歯茎でつぶせるくらいの硬さや形状を目指してください。歯の生え方には個人差があるので、硬すぎるものを与えるのはあまり好ましくないでしょう。
Q.月齢ごとに目安とされている食材の大きさを食べられないと、焦ってしまいます
筋肉や歯の発育・発達状況によって、噛む力や飲み込む力には個人差があります。あくまで目安として取り組み、一人ひとりの成長に合わせた食事を作ってください。 それができるのは毎日の食事作りをする親だけです。子どもの歯の生え方や食事の様子を観察して、硬すぎず軟らかすぎないように工夫してみましょう。
Q.噛む力を鍛えるお勧めの食べ物はありますか?
根菜類やきのこ類、海藻類は噛みごたえのある食材としてお勧めです。間食も軟らかいものばかりでなく、硬く噛み応えのあるせんべいやりんご、なしなどの果物を取り入れて、食感の違いを感じさせてあげましょう。
Q.調理法で工夫できることはありますか?
離乳食初期は、食材をつぶしたり裏ごししたりして繊維を断ち切りますが、食べることに慣れてきたら、だんだん形を大きくしたり、みじん切りから千切り、いちょう切りから短冊切り、そして乱切りというように切り方を工夫してみると良いでしょう。
食材は繊維を断ち切るように、3cm以下で大きく切ると噛みごたえアップにつながります。
また、軟らかくしようとつい長時間煮込みがちですが、そうすると栄養量も少なくなってしまいます。歯が生えそろってからは、少し噛みごたえも残るくらいの硬さに加熱して、噛むトレーニングを意識してみましょう。
Q.食事の仕方で、何か注意することはありますか?
乳歯が生えそろっても、永久歯に生え変わるまでは大人に比べて咀嚼力が弱いということを理解しておきましょう。食事をするのに時間がかかることもあると思います。「早くして」と言いたくなる気持ちをぐっとこらえて、ゆっくりでもきちんと咀嚼できるように、見守ってあげてください。
Q.子どもの噛む力の鍛え方についてアドバイスがあれば教えてください
私自身の2人の子どもも、咀嚼力に差があります。上の子は軟らかいものが好きで咀嚼力も弱め、下の子は硬いものが好きで咀嚼力も強いです。自分自身でもその違いを感じながら食事作りをしてきましたが、噛む力を鍛えるのはとても難しいと感じています。あまり気負わず、噛む力の大切さに気づくことがまず一歩だと思うので、毎日の食事作りで少しでも意識してもらえたらと思います。
管理栄養士 宇野薫
看護師の母、糖尿病の祖父の影響で食事の重要性を痛感。予防医療に貢献したいと管理栄養士を志す。女子栄養大学卒業後、病院、高齢者施設での経験をもとに、疾病予防、アンチエイジングなど、なりたい自分になるための栄養指導に従事している。現在、「子どもの食と栄養」についての講義や、妊婦・女性を対象にした栄養教育に関する研究をする傍ら、聖マリアンナ医科大学東横病院で栄養カウンセリングを担当しているほか、一般社団法人Luvtelliのメンバーとしても活躍。予防医療の中でも、特に"母子健康"に貢献することで、元気な赤ちゃんを1人でも増やせるよう取り組んでいる。2児の母。