ペーパレススタジオジャパン(PLS)は9月14日、建設設計データをリアルタイムに共有できるBIM/CIMコラボレーション専用クラウドサービス「ArchiSymphonyVBP」のサービス提供を開始したと発表した。それに合わせて同日、同サービスのパートナー会社となるアイネット、NVIDIAと記者向けの説明会を実施した。

日本の建築業界の現状とPLSが目指す理想形

現在、建築分野で浸透・拡大を続けるBIMとCIM。しかし、その日本における浸透度合いは、アメリカやイギリスをはじめとした主要先進国にはおよばない。その理由として、施主/設計者/施工者などの、建築に関わる事業者のチーム間に問題がある、とPLSの代表取締役を務める勝目高行氏は説明する。中でも「事業者ごとのセキュリティポリシー」が課題となっているようだ。「会社のルールで、3次元でなく紙の図面で印刷しなければならない」、こんな声が現場からは聞こえてくるという。折角、共有しやすいデータ(3Dデータ)をつくっても、それを共有できないのであれば意味がない。また、それゆえにBIM/CIMの導入に対する費用対効果が高くないのが現状であるようだ。

そこで同社は、BIM/CIMをセキュアに使用できるプラットフォームをクラウド上に構築し、さらに多くの事業者に導入してもらうことで、データをリアルタイムに共有できるようになる世界を目指す。

日本の現状(左)と理想形(右)。セキュアで共有しやすいデータ環境を構築することで、建築効率の最適化を図る

リアルタイムでのセキュアなデータ共有を実現

今回発表されたサービス(ArchiSymphonyVBP)は、アイネットの国内データセンタにて運用される。これにより、各事業者がデータを同社の堅牢なクラウドデータセンターにて保管できるほか、セキュアなマスタデータの共有を実現する。

各事業者のサーバ(同図でvGPUにあたる)のデータをすべてアイネットのデータクラウド上で横つなぎにし、チームで共有する。必要に応じて、データを抽出することも可能

また、同サービスには、NVIDIAの仮想GPUソリューション「GRID」を導入しており、処理負担が大きい画像処理をサーバ上で行うことができる。そのため、従来のようにGPU搭載のハイエンドパソコンを用意することなく、ローエンドパソコン、さらにはモバイルなどといったあらゆる端末から、場所を選ばずに使用できる。

デモンストレーションの様子

iPadからのデータをモニタに表示することで、視覚に訴えた説明が可能

BIM/CIMを使用できる端末が増えることで従来よりも導入コストが下がるほか、iPadなどの端末を持ち歩くだけでデータを相手に見せることができるようになることも特長。例えば、施主に3Dで作製した設計データを見せることで、従来よりもイメージのしやすい提案が可能になる。その場でデータ処理も行えるため、要望に合わせて、リアルタイムで外壁の色を変化させるといったことも可能だ。また、クラウド上での作業やデータの管理には、アイネットの高い安全性を備えた国内データセンタを運用。セキュリティ面での課題にも対応するとしている。

NVIDIAの仮想GPUソリューション。アイネットがデータセンタを提供する

なお、勝目氏は「ハイエンドなマシンでなくてもBIM/CIMを使用できるようになるため、リモートワークも可能になる」としており、同サービスによる働き方改革への貢献も期待している。また、同氏は、販売目標について「まずは初年度に、500人分の環境を整えたい」としたが、すでに複数の施主から声がかかっており、その数値よりも上昇する可能性が高いという。