猫も中年期(7歳以上)に入ると、少しずつ病気の発生率が高くなってきます。動物病院で健康診断を受けることも大切ですが、今回はお家で簡単にできる健康チェック法をお教えします。獣医師が身体検査で行うように五感に分けて紹介しますので、愛猫の健康と長生きのためにも、早速今日からやってみましょう。
1.「嗅覚」でチェック
口臭
もともと猫の口はある程度の獣臭がしますが、口臭が強くなっている場合、歯肉炎や腎臓病が隠れているかもしれません。猫の口を開けるのは少し難しいですが、臭いをチェックすることは比較的容易にできます。
排泄物の臭い
通常の便の臭い以外に、腐乱臭や酸っぱい酸臭がないかトイレ掃除の時にチェックしましょう。また腎臓病になると尿量は増えますが、薄い尿になるので臭いが弱くなります。
体臭
猫が綺麗なのはセルフグルーミングで日頃手入れをしているからです。病気になってグルーミングをしなくなると、毛がばさつくだけでなく少しホコリっぽい臭いや、脂っぽい臭いになります。また糖尿病ではケトン臭といって甘酸っぱい特徴的な臭いがします。あるアメリカの猫病院の獣医師は「ドアから入って来ただけでこの猫が糖尿病だとわかる」と言っていました。
2.「視覚」でチェック
毛並み
臭いでも触れましたが、猫は体調が悪いとすぐに毛並みに出ます。私たちも風邪をひくと容姿に気を遣う余裕がないのと同じで、猫もグルーミングの回数がガクっと減ります。バサバサ具合、フケが目立つかなどをチェックしましょう。
眼
猫の特徴的な大きな眼も体調の変化が出やすい部位です。猫の黒目(瞳孔)が左右不対称じゃないか、明るいところでも黒目が大きくないかをチェックしましょう。腎臓病は高血圧網膜症になりやすく、視力が低下します。そうなると明るい場所でも常に黒目が大きいままになります。猫の白内障は人や犬に比べると少ないですが、レンズが濁っていないか、ふちの部分(結膜)が腫れていないかなどもチェックしましょう。
口の中
少し難しいですが、唇をはぐようにすると歯と歯肉、そして舌を見ることができます。舌のピンク色が薄ければ貧血、歯肉が黄色ければ黄疸が出ていますので肝臓や血液の病気を疑います。もちろん歯石が沈着していないか、歯肉が赤くないかもチェックしましょう。猫は歯が痛くなると食べなくなり、そのまま衰弱してしまうこともありますので食欲が減った時は必ずチェックしましょう。
3.「触覚」でチェック
体格
猫は被毛に覆われているため、体重が減っても外見の変化が少ないです。肋骨や背骨を触り骨ばっていないか触ってみましょう。反対に肋骨がほとんど触れない場合は肥満です。肥満は便秘や糖尿病のリスクを高めますので、適正な体重を維持しましょう。
体温
猫の体温は耳を触るとわかります。風邪をひいたり、熱中症の時は熱くなりますし、衰弱している時は冷たく感じます。日頃から耳を触ることで、愛猫の平熱がどのくらいか体感で覚えておきましょう。
4.「聴覚」でチェック
動物病院では聴診器を使って心臓の音や呼吸の音を確認します。自宅ではそこまでは難しいですが、呼吸時にゼーゼーしていないかはわかります。水を飲むときに変な音がしないか、鳴き声が変わっていないかなどをチェックしましょう。甲状腺機能亢進症という病気は体が活発になるため、夜泣きが増え、声が枯れるためダミ声になることがあります。
最後に
五感をフルに使うことで自宅でも病気のチェックをすることは可能です。今でもそうですが、昔の獣医師は検査機器が発達していなかったので触診や聴診が非常に大事だったと聞きます。これらのチェック方法は日頃から行うことでいざというときに違いがわかりますので、愛猫を撫でるときにさりげなくやってみましょう。少しでも異常を感じたらかかりつけの獣医師に相談してください。
※写真はイメージ
著者プロフィール: 山本宗伸
獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み帰国。現在は猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialistsの院長を務めている。ブログ nekopeidaも毎月更新中。