中国市場は、新型iPhoneを待っている

急激な成長に対する反動がまだ終わっていない、そんな状況を分析できるが、では中国市場における成長要因は何かを考えれば、答えは非常にシンプルだ。

中国市場は、新型iPhoneを待っているのだ。

iPhone 7は、iPhone 6シリーズのデザインを踏襲したスマートフォンであり、「全く新しい」「最新の」という形容詞を獲得することは難しいデバイスだ。もちろん、プロセッサやカメラ、防水など、スマートフォンの機能面での成熟は進んでおり、スマートフォンとしても非常に競争力のある存在だ。しかし、特に中国市場では、その「新しさ」を感じさせることが重要なようだ。

マイナーチェンジにとどまったiPhone 7では中国市場を魅了できなかったようだ

2017年第2四半期決算発表後にインタビューに応えたティム・クックCEOは、中国市場の低迷について聞かれた際、「次のiPhoneの噂」を1つの要因としてあげたのは印象的だった。

「次のiPhone」とは、ディスプレイの形式が有機ELディスプレイへと変わり、ワイヤレス充電への対応や新しい3Dカメラの搭載、そして全く新しいデザインとして生まれ変わるとの情報が飛び交う、「iPhone 8 Edition」(もしくはiPhone 8 Proなど)のことだ。

このデバイスは2017年9月中旬に発表されるとみられているが、「次のiPhone」の噂は2015年末から流れ始めていた。つまり、2016年発売のスマートフォンが「次のiPhone」ではないとわかると、もう1年待とうという意識を芽生えさせることになった、と考えられる。

また、中国市場ではWeChatが著しい成長を遂げており、直近の月間ユーザー数は9億3800万人に上る。チャットアプリとしてのコミュニケーション機能だけでなく、オンラインショッピングやモバイル決済など、様々な生活連携サービスを取り込んでいる。つまり、「WeChatさえ動けば困らない」環境が構築されているのだ。

アップルは中国でもNFCを活用したモバイル決済Apple Payをいち早く導入したが、より幅広いデバイスで利用できるバーコードによる決済が主流となっていること中国市場に対応するため、秋に配信するiOS 11にはカメラにバーコード読み取り機能を備えた。

ハードウェアの機能が重要ではなりつつある中国市場においては、やはりデザインが刷新される「次のiPhone」が、成長を取り戻すには不可欠である一つの理由とも言える。