ジャパンディスプレイとNHKメディアテクノロジーは13日、8K解像度の液晶をベースに開発した、裸眼のままで立体感ある映像を再生できる17型ディスプレイのデモンストレーションを行った。

17型 ライトフィールドディスプレイ

今回、研究開発の成果として公開されたのは、裸眼のままで3Dのような立体感ある映像を再生できる8Kディスプレイ「17型 ライトフィールドディスプレイ」。高精細な3D映像(静止画)を組み合わせ、ディスプレイを見る角度によって異なった映像を表示し、実物を見ているかのように表示できるシステムだ。5月21日に、米・カリフォルニアで開催された「SID DISPLAY WEEK 2017」で展示されたものとなる。

まずは先に、実際のデモンストレーションを写真と動画で紹介しよう。和紙で作られた「だるま」が3つ並んでいるコンテンツは、視点を端に移動させると、現実世界でのぞき込んだように、「だるま」の間に隙間が現れる。

真正面から「だるま」を見たところ(左)と、右端から「だるま」をのぞき込んだところ(右)。右端から見た時には、だるまの間に隙間ができている

17型 ライトフィールドディスプレイの表示デモンストレーション(システムは現在開発中のもの)。視野角が130度と広い

人間は物体が発している光を捉えることで、物体を認識している。今回発表されたライトフィールドディスプレイは、さまざまな方向に向かう現実の光を、ディスプレイ上でできるだけ再現することで、物体がそこにあるように見えるように表示させるシステムとなる。

立体視ディスプレイの分類

視差方式とライトフィールド(Light Field)の説明。ライトフィールドでは、物体の放つ光をディスプレイ上で再現し、映像を立体的に見せている。自然界では無限に光が放たれているが、ディスプレイの光(画素)は有限なので、異なる方向へ光を放つと(目に入る)解像度が下がる

今回発表した「17型 ライトフィールドディスプレイ」では、ディスプレイから発する光を画素ごとにソフトウェアで制御し、(立体的に見えるよう)任意の方向へ発している。コンテンツは高解像度のカメラで立体視に適するよう、連射した写真を組み合わせて作られており、専用の画像処理が行われている。3D立体視で発生しがちな"3D酔い"もできるだけ軽減したという。なお、コンテンツは8Kで再生されているが、画素から発せられている光が方向により異なるため、実際に目に入る光は8K水準よりも低くなる。

実際に視聴してみると、和紙製の「だるま」コンテンツでは、丸い本体の形状や質感がよく表現されており、端からのぞき込んだ時にも奥行き感がはっきりと感じられた。一方、コンテンツの中で焦点が合っていない部分のぼやけ具合は気になった。この"ぼやけ"は現状の課題という。「(ライトフィールドの)原理的な原因が半分と、ディスプレイ性能の原因が半分。ディスプレイ部分は改良の余地があり、今後さらに改善していける」とする。想定する用途は美術・工芸品のデジタルアーカイブや、サイネージ、医療教育、エンターテインメント分野など。動画コンテンツの開発にも今後積極的に取り組んでいきたいとした。