7月7日に総務省が公表した「平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、スマートフォン利用率は全年代で71.3%に達し、20代は96.8%、30代も92.1%、40代でも79.9%と生産年齢の中心層にはほぼスマートフォンが行き届いたと言っていい環境だ。

イノベーター理論における、いわゆるレイトマジョリティの後半に差し掛かり、これ以上劇的なスマートフォン販売の伸長は望めない。また、携帯販売代理店の頭を悩ませるのはNTTドコモやKDDI、ソフトバンクなど主要3キャリアの端末販売台数の減少だろう。MM総研の調べでは、3社向け出荷台数は2676万台で前年比3%の減少、一方で"格安スマホ"と呼ばれるMVNOなどで利用しやすいSIMフリースマートフォンは266.1万台で前年比88.5%増と好調だ。

空白地帯を狙う出店戦略

販売台数の減少は、代理店にとっても販売手数料の減少につながるため、携帯ショップを運営する"旨み"がなくなる。そうなれば、いざという時にユーザーが駆け込むサポート受付となるショップを閉鎖せざるを得ず、長年に渡り作り上げてきたネットワークを失ってしまうことになる。

しかし実際にキャリアショップが撤退した"空白地帯"へ、敢えて新規ショップを出店した代理店がある。それがテレニシホールディングスだ。同社はソフトバンク系専業の代理店としてショップ事業を行っており、昨年より「モーテ」と呼ぶ新業態店をスタートした。

モーテとは「Mobile Hyblid Terrace(MOHTE)」の略称で、ソフトバンクショップとワイモバイルショップ、そしてここがキモとなるがカフェを併設した複合施設を展開している。昨年11月に1号店を高知県の桂浜に開設後、宮崎県の日南、沖縄県の南風原、そして今回取材した福井県坂井市の丸岡にオープンした。なお、2017年度中にほか数店舗をオーブンする予定だという。

モーテ丸岡

カフェ併設の意図とは?

テレニシホールディングス傘下のナビックスで移動体事業部 本部長を務める島田 和彦氏は、「この地域(丸岡)は2013年にソフトバンクショップが閉店して空白地帯だった。そういう意味では商機があったし、ランドマークとして集客できる勝算があった」と話す。

モーテの出店戦略は、こうした空白商圏の穴埋めを狙いつつ、単なるショップでは立ち寄ってもらえないデメリットを、カフェで補うものだ。

「キャリアショップは機種変更とサポートを必要とする時にしか来ないため、集客は苦しみがちです。そこでカフェを併設することで、常にショップが近くにある環境を作り出すことが大切です。また、こうした空白商圏は基本的に車社会。東京は言わずもがな、大阪・梅田で同じ規模のショップを持とうとすれば坪単価は5倍を下らない。広い施設を持って土地と駐車場を構えて、となると集客装置を含めた施設設計が必要です」(島田氏)

また、ソフトバンクの専業代理店としてやってきた強みが活きるのがワイモバイルショップの併設だと島田氏は話す。

2階にカフェを据え、必ずSB、YMショップを通る造りにしている