こんにちは! 広告写真家の熊谷直夫です。今回は、写真の基礎のひとつ「カメラアングル」についてお話しします。最近のデジタルカメラは、バリアングルやチルトといった可動式モニターを搭載した機種が増え、ハイアングル撮影やローアングル撮影が手軽になりました。ただし、漠然とアングルを変えているだけでは写真の腕は上がりません。アングル変更によって何がどう変わるのか、その効果と使いどころを考えてみましょう。

カメラアングルとカメラポジションの違い

そもそもカメラアングルとは何か。簡単にいえば、被写体に対するカメラの撮影角度のことです。水平に構えた角度が「水平アングル」で、カメラを下に向けた角度が「ハイアングル」、上に向けた角度が「ローアングル」です。

3つのカメラアングル

同じ被写体を撮る場合でも、カメラアングルを変えるだけで写真の印象はガラリと変化します。奇をてらわずに素直な写真を狙うなら、人間の視線に近い水平アングルが適しています。それに対して、ちょっと違った雰囲気で撮りたいときは、ハイアングルやローアングルが効果的です。ハイアングルは鳥の視線、ローアングルは小動物の視線といえます。

もっとも、ローアングルといっても、低い位置からの撮影だけに限りません。高い建物を見上げるように撮る場合は、立っていてもローアングルになります。ローアングルとは「被写体に対して下から」という意味です。

またカメラアングルと紛らわしい言葉に「カメラポジション」という用語があります。カメラポジションとは、カメラの位置のこと。アイレベル、ハイポジション、ローポジションの3つに大別できます。

3つのカメラポジション

ハイアングルとローアングルの使いどころ

ここからは作例写真を見ながら、各アングルの効果を確認していきましょう。まずはハイアングルの例として、次の写真を見て下さい。可動式モニターを生かし、腕を伸ばして撮ったマンジャの塔(イタリア)からの眺めです。

ハイアングルで撮影。絞り:F6.3 シャッター速度:1/160秒 感度:ISO320 WB:太陽光 焦点距離:27mm

私は、初めて訪れた場所ではまず見晴らしのいい高所に登り、こうしたハイアングルの写真を撮るようにしています。大げさにいえば、神さまが地上を見下ろしたような視点から、風景や被写体を客観的に眺めることができるからです。

ハイアングル写真のコツとしては、背景にこだわって撮影場所を探すことが大切です。タワーや高層ビル、歩道橋など街中にあるハイアングル撮影に適したスポットを探してみるといいでしょう。同様に、小物などをテーブルに置いてハイアングルから撮る際も、下に敷くクロスが写真の印象を左右します。

ハイアングルで撮影。絞り:F5.6 シャッター速度:1/50秒 感度:ISO200 WB:太陽光 焦点距離:28mm

ハイアングルで撮影。絞り:F11 シャッター速度:1/125秒 感度:ISO100 WB:太陽光 焦点距離:100mm

ハイアングルで撮影。絞り:F14 シャッター速度:1/125秒 感度:ISO100 WB:マニュアル 焦点距離:50mm

ローアングル撮影は被写体に迫力を与え、力強いイメージを生み出すことができます。たとえば乗り物や建造物をローアングルから撮影するとスケール感を強調でき、人物をローアングルで撮ると威厳や威圧感、躍動感などを表現できます。

ローアングルで撮影。絞り:F8 シャッター速度:1/30秒 感度:ISO200 WB:太陽光 焦点距離:28mm

ローアングルで撮影。絞り:F11 シャッター速度:1/125秒 感度:ISO100 WB:太陽光 焦点距離:105mm

さらに究極のローアングルといえるのが、撮影角度90度、つまりレンズを真上に向けたアングルです。教会や寺社仏閣の内観などは、レンズを真上に向けつつ水平と垂直をきっちり合わせて撮ると、その造形美がいっそう際立たちます。

ローアングルで撮影。絞り:F2.8 シャッター速度:1/320秒 感度:ISO1250 WB:オート 焦点距離:17mm

水平アングルは、ハイアングルやローアングルのようなインパクトはなく、平凡な印象を受けることもあります。しかし、最も自然なアングルであるからこそ、シンプルでストレートな美しさを表現するのに最適です。被写体の形を正確に記録したい商品撮影や、ありのままの姿で写したい人物撮影にも水平アングルが有効です。

水平アングルで撮影。 絞り:F5.6 シャッター速度:1/160秒 感度:ISO100 WB:オート 焦点距離:39mm