フジテレビのドキュメンタリー枠『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で4月30日、美容整形した女性を追った『シンデレラになりたくて…』(前編)が放送された。登場するのは、過去のつらい経験をきっかけに心を閉ざしてしまった若い女性たち。そこから脱出するための"美容整形"という決断を、多くの視聴者が固唾を呑んで見守り、番組視聴率は横並びトップで、同枠今年最高の7.4%をマークした(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。

彼女たちが目指すのは、日本最大級のファッション&音楽イベント「GirlsAward 2017 SPRING/SUMMER」でランウェイを歩く、グランプリ賞金300万円の「整形シンデレラオーディション」。この結果を含めて描かれる5月7日の「後編」放送を前に、密着取材した佐藤孝樹氏(エムパ代表取締役)に話を聞いた――。

『シンデレラになりたくて…』後編より (C)フジテレビ (C)マイナビGirlsAward2017 SPRING/SUMMER

佐藤氏は、フジテレビ夕方のニュース番組『スーパーニュース』(1998年~2015年)の特集コーナーで、美容整形を報道番組として初めて取り上げて以来、約13年にわたってこのテーマを取り上げたドキュメンタリーを制作。「一歩踏み出せない子たちが、顔が変わることによって内面も変わることに気づいてから興味を持ち、ライフワークのようになっています」という。

「前編」に登場したのは、顔へのコンプレックスから、メイクに異常なこだわりをもつ市川睦さん(19歳)。「なんでこんな顔に生んだん…? お母さんのせいや!」と、思わず母親に当たり散らす衝撃的な場面も見られた。そしてもう1人は、同級生に「キツネ目」と言われたことをきっかけに、10年間にわたって引きこもり生活を送ってきた後藤華さん(19歳)。顔に加え、全身の脂肪吸引も決意した彼女は、手術の麻酔で朦朧(もうろう)とする中、「私はブスだから、体で勝負しないといけない!」と泣きじゃくった姿が印象的だ。

手術前の市川睦さん(左)と手術中に泣きじゃくる後藤華さん (C)フジテレビ

いずれも、他人から見ると、整形など必要ないと思える容姿だが、佐藤氏は「幼少期の何気ない一言がコンプレックスになり、それが小さな種のようになって、長年の間にどんどん育ってきちゃうんです」と、これまでの取材経験から分析。そんな佐藤氏でも、今回密着した女性たちは「13年間やってきた中でも、まぁ重いです」と驚いたそうだ。

それを象徴するのが、この手のドキュメンタリー番組制作には欠かせない、昔の自分の写真。小中学校の卒業アルバムを捨てている人が多く、容姿が気に入らないためにそもそも写真を撮っていないので、「VTRをつなぐのに苦労しました」と漏らす。

こうした環境だけあって、親や自宅での取材交渉は、かなり難航したそう。取材対象者は、ボカシなしで本名を出すというのを最低条件に決めているそうで、難色を示す親には「お母さんがちゃんと顔を出して、娘さんたちに応えることによって、彼女たちは自信を持つと思います」と説得するそうだ。

そして、手術を終え、生まれ変わった自分に自信を持った彼女たちは、皆笑顔。以前は親子の会話がなかったが、心躍ってたくさん話しかけてくるようになり、それによって親にも変化が生じるのだという。市川さんの母親は、それまで"親子"という関係が苦しいものだったのが、「しゃべれたら、親子楽しいなって…」と本音を吐露。別の家族では、取材が入ることであらためて親子が向き合い、話せるようになったと感謝され、佐藤氏は「本当にうれしかったです。取材したかいがあります」と思い出していた。

「整形シンデレラオーディション」最終審査の様子 (C)フジテレビ

今回、ナレーションを担当するのは、俳優の千葉雄大。"王子様キャラ"でおなじみで、タイトルにもなっているシンデレラストーリーにはぴったりのキャスティングだ。その起用理由を尋ねると、「10代から20代前半の女の子が出てくる中で、同じような悩みを持っている子が、大なり小なりいると思うんです。そういう子たちに、自分の殻を破って次のステップへ進む姿を伝えたいと考え、同世代の女の子が興味を持って聞いてもらえる優しいナレーションを入れたいと思いました」と狙いを明かす。テーマがテーマだけに、「(千葉さんも)悩まれたと思うんですが、本当に受けていただいてよかった。すごく感謝してます」とホッとした様子だ。