赤ちゃんによって異なるよだれの量。多すぎる、少なすぎると悩んでいるパパ・ママは多いのではないでしょうか。「よだれには殺菌効果があるから、たくさん出ている方がいい」という話も耳にしますが、それではよだれが少ない子は、きちんと殺菌できているのか、心配になってしまいますよね。
そこで、よだれの役割や、病気が考えられる危険なよだれについて、小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。
Q.赤ちゃんの唾液には、どのような役割があるのですか?
唾液には、口の中の粘膜を保護する役割があります。口の中の乾燥を防ぎ、菌を付きにくくすることで、風邪などの病気にかかるのを防いでくれるのです。また、食べ物の消化を助けたり、悪い菌を洗い流すことで、口の中を清潔に保ったりする役割も持っています。
Q.よだれに適正な量はありますか? 少なすぎる、多すぎる、どちらも問題はあるのでしょうか?
どちらも大きな問題があるとは言えません。赤ちゃんの体格や体重、それにミルクを飲む量などによって、そもそも、唾液の量には個人差があります。
また、よだれが少ない子というのは、いつも口を閉じている、口呼吸でなく鼻呼吸が上手、という子が多いため、一概に、唾液の量自体が少ないという判断はできません。口の中に出てきた唾液を上手に飲み込んでいるため、よだれの量が少ないという可能性もあります。
ただし、口の中が乾燥しきって、カラカラになっているような場合には、脱水症状を起こしている可能性があるので、気になる方はよだれ自体ではなく、口の中をチェックしてみてください。
よだれが多い子については、ぶくぶくと泡が立っているような場合は、かなり多いと判断できますが、日常的に多い場合、特に問題はないと考えられます。
Q.よだれの量を少なくする方法はありますか?
赤ちゃんに口を閉じる練習をさせて、よだれを減らすという方法はあります。ラッパや笛などの、楽器のおもちゃで遊ばせてみましょう。ふーっと息を吹くことで、口を閉じるトレーニングをすることができます。親子で楽しみながら、取り組めるのではないでしょうか。
Q.よだれはこまめに拭いたほうがいいですか? どのような素材で、どのように拭けばいいのでしょうか?
唾液には消化酵素が含まれているので、よだれとして口の外に出てきて皮膚に触れると、炎症を起こし、接触性皮膚炎になってしまうことがあります。赤ちゃんの唾液は大人に比べて殺菌効果が高く、刺激も強いと考えられるので、こまめに拭いてあげてください。
よだれを拭く場合には、綿素材の布や、保湿効果のあるティッシュペーパーを使うのがお勧めです。摩擦で肌を傷つけないよう、優しく布によだれを吸収させるような感じで、押さえながら拭いてみてください。
拭いた後は保湿をするとさらに効果的なのですが、口の中に入っても安全なものを使ってもらいたいので、薬は皮膚科で処方してもらいましょう。
Q.病気の傾向があるような、危険なよだれはありますか?
よだれの色や臭い、量などの状態がいつもと違ったら、注意してください。色については食べた物によってもずいぶんと変わるので、口にしていない食べ物の色をしていたり、血が混ざっていたりした場合には、小児科を受診した方がいいでしょう。
いつもより臭うと感じたり、酸っぱい臭いがしたりする時には、口の中にカビが生える病気や蓄膿症、扁桃炎である可能性があります。この場合にも、受診をお勧めします。
また、よだれの量がいつもより少ない場合、尿や涙の量など、総合的な判断が必要ですが、脱水症状を起こしている可能性もあります。反対によだれが増えていたら、鼻づまりが起きて口呼吸が増えていたり、中耳炎になって悪い菌を流そうとしたりしていることも考えられます。
いつもとよだれの状態が違う時に、何か原因が潜んでいる可能性はあるので、普段からよだれの状態を把握することが大切でしょう。何か心配なことがあれば、すぐに小児科を受診し、相談してほしいと思います。
※未就学児童の症状を対象にしています
※画像と本文は関係ありません
竹中美恵子先生
小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。