産業界がドローンにかける期待が大きくなってきている。そんななか、産業用ドローン専用の「ドローンハイウェイ構想」が持ち上がった。取り組むのは、東京電力ホールディングスとゼンリン。両者はこの構想について記者会見で説明した。

東京電力HD 新成長タスクフォース事務局長 山口浩一氏(左)とゼンリン 上席執行役員 藤沢秀幸氏

正直、巨大エネルギー企業の東京電力と地図で名をはせたゼンリンが、なぜ共同によるドローンハイウェイ構想で記者会見を行うのか、イメージがわかなかった。しかし、会見で説明を聞いているうちに合点がいった。

まず、ゼンリンの事業を確認してみよう。ゼンリンは全国99.6%の地図を保有している。こうした平面的な地図だけではなく、建築物の高さを示す3Dマップの制作にも着手。そして、全国的に完成させている。この3Dマップを、ドローンの飛行に活用できないかという要望が高まっていた。

しかし、大きな問題がゼンリン側に立ちはだかっていた。それは、送電鉄塔や電柱の位置について把握していなかったこと。ドローンを産業用に活用するのには、高い建築物の位置を把握することは当然だ。ところが、これまでカーナビなどに提供していた3Dマップでは、送電鉄塔や電柱の位置情報は、正直不要だった。しかし、ゼンリンの3Dマップを産業用ドローンで活用するのには、こうした電力インフラの情報は欠かせない。

福島復興のための財源確保の意味合いも

一方、東京電力は、切実に果たさなければいけないことがある。それは福島原発事故における復興への財源確保だ。とはいえ、管内の電力需要に対する供給能力は飽和状態になっている。新たに電力インフラ供給に対する投資を大幅に行っても、収益増に結びつくとは考えにくい。むしろ中長期的にみれば、人口減による電力需要減衰に対し、なんらかの手を打たなければならない。

そこで、このドローンハイウェイ構想への参加が重要になってくる。この構想における東京電力の役割は、送電鉄塔や電柱をドローン飛行のための“道しるべ”とすること。また、変電所や各種電力施設に「ドローンポート」を設け、そこを充電所としたり、点検・修理を行ったりする基地にすることだ。駐機場としても活用するという。

クルマの高速道路を想像するとイメージしやすい。つまり、送電線は道路そのもの。そしてドローンポートはサービスエリアということになる。

これならば、発電所を新設したり、送電鉄塔を何キロにもわたって敷設したりするような大がかりな投資を行わなくても、新規事業に結びつけられる。