TBSが気合十分に放つスペシャルドラマの続編、きょう26日放送の『LEADERSII』(21:00~23:24)が熱い! 前作『LEADERS』は国産自動車の開発に人生を懸けた男たちの真実を描く感動作で、2014年の放送当時、多くの人々の胸を揺さぶった。その反響を受けて制作されたパート2では、佐藤浩市ら前作からの続投キャストと、内野聖陽ら新たなキャストが絶妙なアンサンブルを繰り広げ、まるで交響曲のように味わい深いドラマに仕上がった。
男たちの骨太なドラマを多く手がけている伊與田英徳プロデューサーにインタビューし、本作に懸けた思いや気になるキャスティングの秘話をうかがった。
新キャストの役どころと配役の狙い
主人公であるアイチ自動車の愛知佐一郎役を前作に続き佐藤浩市が、そして、佐一郎に惚れ込み、アイチ自動車の販売店第一号・日の出モータースの支配人となる山崎亘役を内野聖陽が演じた。「ある種、2トップの話なので、浩市さんに負けないパワーとスキルをもっていらっしゃる方にお願いしたかった。それでダメモトで内野さんにオファーしたら、ご本人が『前作を観て面白かったから』と快諾してくださったそうで、とてもうれしかったです」
山崎の部下・日下部誠役の東出昌大、ライバル会社を出て日の出モータースの営業マンとなる菊間武二郎役の大泉洋、酒田ガレージの社長・酒田健太郎役の郷ひろみ、若草自動車の常務・浅田役の尾上菊之助、割烹料亭の女将・飯田キヨ役の菅野美穂、アイチ自動車の部品を手がける職人・大島磯吉役の山崎努と、実力派俳優陣が集結した。
「大泉さんはどちらかと言うと良い意味で三枚目の役のイメージが強かったのですが、今回はそうじゃないシリアスな役どころ。大泉さんと内野さんが言い合うシーンは本当にすごくて、現場で見ていてもぐっと来ました。演出の福澤(克雄)が朝から何回もあのシーンを撮っていました」
山崎努演じる大島磯吉のいぶし銀的存在感も秀逸だ。「努さんに出ていただいただけでも光栄でした。磯吉の鉄の杖は福澤と努さんが話したなかで出てきた小道具です。鉄屋さんだから鉄の杖がいいということでしたが、キンキン音がしました。普通の杖じゃなくて、鉄の棒の端くれを曲げただけのもので、そういうこだわりにもリアリティを追求しています」
郷ひろみ自ら望んでいた悪役
特筆すべきなのは、郷ひろみのヒールぶりだ。郷はデビュー45年にして初の悪役に挑戦した。「郷さんが数年前からヒールをやりたがっていると聞いていましたが、声が高く、美声ですから果たしてヒールができるんだろうかと思っていました。それで一度郷さんとお会いしたら『1人の役者として見てほしい』とおっしゃられていて。今回敢えてお願いさせていただいたけど、仕上がったドラマを観て、郷さんにお願いして本当に良かったなと思いました」
さらに郷の演技について言及。「実際、郷さんは高い声も低い声も出るし、たまに高くなったりはするけど、それは郷さんしかできない芸当ですし、実際1つずつキャラクターを積み上げてやっていただけたと思います。もちろん郷さんには既に確立されたパブリックイメージがあるから、悪役なんてどうだろう?と思いましたが、今回やっていただけたのはありがたかったし、演出側もそれを逆手にとってうまく演出をしてくれました。まさにみなさんの総力かなという気がします」
続投キャストと新キャストによる絶妙なアンサンブル
前作に続き、佐藤は扇の要のようにしっかりと座長を務めていて、まさに愛知佐一郎そのものだ。「浩市さんは全体を見据えた上で芝居をされる。前回に引き続き、さすがだなと思いました。そういう器なんですね」。佐藤の出演シーンは前作よりも少ないが、部下や関係者が佐一郎の人となりを語ることで、キャラクターの深みがより一層際立っていく。まさに名優たちによるアンサンブルの醍醐味であり、そういう多層的な描き方がこのドラマの魅力でもある。
若手では、東出が記者会見で先輩の俳優陣をリスペクトし、「付け焼き刃のフレッシュさではなく、信念を持って挑ませていただいた」と語っていた真摯な表情が印象的だった。東出は役柄同様に、内野や佐藤の背中を見て、自身を駆り立てていったのだろう。
「一流の方々が集まっていただいた。いろんな文献を読み、下調べをした上でキャラクターを作り上げていくという作業は大変だったと思います。役者さんも苦労したと思いますし、それを上手くまとめ上げてくれた福澤もすごい」
ドラマ作りは「人との出会い」と同じ
折しも東京オリンピックに向けて日本が同じ方向を見つめて頑張ろうとしている今、佐一郎たちの奮闘記は胸に迫るものがある。やはりドラマ作りは時代を読み取ることが大事なのか?と斬り込むと、伊與プロデューサーは「すべてにおいて戦略があるのかというとそうではないです」と穏やかな表情で答えてくれた。
「人との出会いと同じですね。その人と会うためにわざわざこの時代に生まれたということではなく、たまたまその時代にそういう人と出会ったという感覚です。タイミングによっては、やりたいドラマをできない場合もありますし。今回は確かに時代と合っていると思ったことは事実ですが、それはやりながら思ったことです。僕たち作り手はいつも自分が作った作品が一番いいと思って作っていますが、不安もあるし、うまくいかないこともある。『LEADERSII』は実際にプレビュー(試写)で観てぐっときたし、そういう時は本当にやってよかったと思います。やはり出来上がった作品が面白かったと思えることが一番大事だし、そういう昨品に出会えていること自体、幸せなのかもしれません」
■プロフィール
伊與田英徳(いよだ ひでのり) 1998年、制作会社からTBSに中途入社。『ヤンキー母校に帰る』(03)や『新参者』(10)、近年では、『半沢直樹』(13)、『ルーズヴェルト・ゲーム』(14)、『流星ワゴン』(15)、『下町ロケット』(15)など、話題作を続々と手掛けている。
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